介護事業のIT化進める学研 85歳以上も全員デジタル活用

「85歳のケアスタッフも鉛筆を一切使っておらず、現場では全部ICT化している」

 こう語るのは、学研グループの子会社で介護事業を手掛けるメディカルケアサービス社長の山本教雄氏。

 介護業界は以前から人手不足が慢性的に叫ばれる業界で、超高齢化社会に向け人員確保が大きな課題の一つ。DX(デジタルトランスフォーメーション)化は必須事項で、高齢スタッフでも現場社員はデジタル活用スキルが必須とされている。

 また、同社現場ではAI(人工知能)やロボットを試験的に活用し試行錯誤を重ねている。介護の記録の電子化を進め、一日当たりの記録時間(最大6時間)を大幅に短縮し効率化を図っている。記録したデータはデジタルプラットフォームに集約し、さらにそこからデータベース構築をして現場での応用に役立てる。

 この他、現場ではセンサーなどを活用し、介護利用者の夜間転倒を防ぐといった危機管理にも活用し、夜間働く職員の精神的な緊張負担を減らすという取り組みも行っている。

 人手不足を引き起こしている要因の一つでもある介護スタッフの低賃金問題に関し、ベア実施で若者の離職率は昨年24%から今年は19%に低下、労働力の定着が強化された。離職率を下げられれば、人材採用コストが少なくとも5500万円削減できるとし、離職率低下に向けた取り組みも強化する考え。

 現在、同社の高齢者福祉施設は、拠点数ベースでニチイグループ、SOMPOホールディングス傘下のSOMPOケアなどを上回り全国1位。少子高齢化の中、教育事業は市場縮小傾向であるため介護事業は教育事業を超える事業になりつつある。

 学研ホールディングス社長の宮原博昭氏は説明会で「事業バランスは教育が3割、医療福祉が4割、グローバル事業が3割を目指す」と語った。介護福祉事業は国内での地域密着型のM&A(合併、買収)を実施し、ノウハウ共有による現場業務効率化を進めていくとしている。