日本損害保険協会会長・城田宏明「信頼回復に向けて、旧来の業界慣行を根本から見直していく」

「お客様、社会から失った信頼を回復させる取り組みを最優先課題として進めていく」

 損害保険業界では、大手中古車販売のビッグモーター(現WECARS)による保険金不正請求問題、企業向け保険の価格調整問題と不祥事が相次ぎ、大手4社が金融庁から行政処分を受ける事態となった。

「信頼を取り戻すには、お客様本位の業務運営、法令等の順守を徹底し、世の中の常識との乖離の要因となっている、旧来の業界慣行を根本から見直していく必要がある」

 業界全体で「業務抜本改革推進プロジェクトチーム」を組成し、取り組みを推進していく。

 金融庁が設置した有識者会議の報告書では大規模代理店に対する指導の実効性を高めるための「自主規制機関」の設置検討も盛り込まれた。

「代理店の指導に向けて業界として評価基準を策定していくが、そこに第三者の視点も必要だという問題意識がある。どのような仕組みで運営していくかは様々な選択肢があるが、メリット・デメリットを考えながら検討していく」

 城田氏が社長を務める東京海上日動火災保険では代理店評価を「成果」から「品質」に重きを置く形に変える方針を示すが、各社も同じ方向に向かう。

 価格調整問題の発生の要因として「過度な本業支援」や「政策保有株式」などが指摘されたが、健全な競争環境を実現するには業界全体で取り組む必要がある。「個社の立場で言えば、代理店と保険会社の慣行で保険の選択が決まること自体が健全ではない。各社が保険本来の価値をお届けしていく中でお客様に信頼される会社が選ばれる」

 近年、日本では災害の激甚化で、損害保険の重要性が高まる。折しも2024年は地震保険創設の契機となった「新潟地震」の発生から60年という年。「災害のリスクが正しく認識され、必要な備えと地域の防災体制が整備された社会を実現するために、国や自治体と連携して防災・減災事業などを行っていく」

 信頼回復に向け、城田氏のリーダーシップが問われる。