Synspectiveは8月3日、同社の小型SAR(合成開口レーダー)衛星「StriX」シリーズの通算5機目となる機体が、米・Rocket Labのエレクトロンロケットによってニュージーランドのマヒア半島に位置するRocket Labの民間軌道発射場「Launch Complex 1」から同日1時39分(日本時間)に打ち上げられ、予定された軌道の投入に成功したこと、また試験のための通信も正常に機能し、制御可能であることを確認したと発表した。
StriXシリーズは、それまでの大型SAR衛星のおよそ1/10の質量となる100kg級で、製造コストはおよそ1/20と、小型・低コストを特徴とする。今回打ち上げられたのは、StriXシリーズ第3世代の最初の機体で、コンセプトはすでに軌道上で運用中の第2世代の衛星と同じものであるものの、SARセンサがアップグレードされている。これにより、StriXシリーズの強みである広域撮像を維持したまま、さらなる高分解能化を実現し、その両立した画像を提供できるとする。
SARとは、天候や日照時間などに左右されずに地表を観測できることが特徴だ。Synspectiveは、このSARを備えたStriXシリーズを2020年代後半までに30機軌道に投入し、衛星コンステレーション(複数の人工衛星を連携させて一体的に運用するシステムのこと)を構築することを計画している。その実現により、世界のどこにおいても災害の発生から数十分から1時間ほどでデータの取得と分析を行えるようになり、災害対応のための意思決定に資する情報提供を可能にするとしている。
また今回の衛星は、StriXシリーズとは初となる「傾斜軌道」に投入されたことも大きな特徴だ。すでに運用中のStriXシリーズは、北極・南極を通り、地球の地表面すべてを網羅して撮像可能な「太陽同期軌道」に投入されてきた。それに対して今回の傾斜軌道は、赤道を中心として中緯度までの範囲で衛星が周回するため、低~中緯度地域を集中して撮像できることが特徴となっている。傾斜軌道を選択することで、低~中緯度地域の人口密集域に撮像リソースを集中させることができるため、需要の高い地域のより高頻度な撮像に対応することが可能になるとのことだ。
さらに、単一方向だと衛星の撮像方向の制約により不可視領域(衛星の撮像方向・角度、と陸域の傾斜勾配の関係により発生)が存在してしまうのに対し、すでに運用中の衛星の太陽同期軌道と、今回の傾斜軌道を組み合わせることにより、東西南北の4方向からの撮像が可能となり、不可視領域を避ける撮像の組み合わせが選択できるようになるという。
それに加えて今回は、前回の打ち上げからわずか5か月という短期間での実施できたことも大きなポイントだとしており、これは2024年より稼働を開始した新工場による多機生産能力によるものとした。
Synspectiveは今後さらに打ち上げペースを上げる予定で、同社とRocket Labは、2025年~2027年にかけて10機の衛星を打ち上げることですでに合意済みだ(2024年6月に発表)。同社は、今回の短期間での打ち上げ能力を実証したことで、コンステレーションの整備が本格化していることを示せたとしている。