楽天、グループ横断の「AIコンシェルジュ機能」発表 三木谷社長「AIの民主化に挑戦する」

楽天グループ(楽天)は8月1日、グループ最大級のイベント「楽天OPTIMISM(オプティミズム)」において、三木谷浩史社長の講演を行った。その中でAIコンシェルジュ機能を提供すると発表した。三木谷社長は、「楽天グループの全てを包含したコンシェルジュサービス」だと話す。AIに対話型で商品・サービスの検索や相談、購入などを聞くことができるという。

「ユニバーサルなコンシェルジュ機能」としてコマース、トラベル、フィンテックといった楽天エコシステムを横断したコンシェルジュ機能を提供する。

「単純に『この物を探して』ということだけではなく、『これおいしそうだけど何買ったらいいの』『何となくこんなところに行きたいんだよね』という質問に対して、AIが対話型で推薦してくれるようなサービスだ」(三木谷社長)と説明する。

<デモビデオで利用イメージ紹介>

デモビデオでは、利用者がレモンタルトの画像をアップロードし、「これ作りたいので材料を教えてください」と音声入力すると、AIアシスタントが「おいしそうなレモンタルトですね!」と答えつつ、材料のリストをすぐに回答した。

さらに、利用者が「タルトに合う小麦粉を教えてください」と音声入力すると、タルトに使用できる小麦粉の種類を並べて、「どの小麦粉を選ぶかはお好みですが、薄力粉が一番お薦めです。ご希望に応じて検索し見ましょうか?」と返答。利用者が「この条件で調べる」をクリックするとAIアシスタントが「楽天市場」の商品からお薦めの薄力粉をリストアップした。

さらに利用者が「500円以内がいいな」と音声入力すると、500円以内の薄力粉をリストアップ。そのまま「楽天市場」で購入できるように促した。

「これは単純なショッピングのエクスペリエンスだが、例えば『これに合うコーヒーは何ですか』『これが食べられる喫茶店はどこかにありますか』ということを知ることができる。ぐるなびなどグループ企業のサービスと連携して展開していく」(同)と話した。

 

<3ステップで「AIの民主化」を推進>

三木谷社長は講演の冒頭で、AIがもたらすインパクトについて紹介した。

「AIは今までにないインテリジェンスだ。人間の脳は約1700億個の細胞でできており、その中の半分はニューロンという電送する細胞だ。人間の脳もある意味でデジタルだといえる。ネットにつながっている携帯電話やサーバー、パソコン、IoTのデバイスなどのデバイスの数は750億個あると言われている。CPUの数でいうと1000億個ある。人間の脳細胞1つよりもCPUの方が処理能力は高い。全ての情報の処理能力が爆発的に上がっている。AIがあらゆるものを変えていくだろう」(同)と話す。

AIは特定の人が使えるものではなく、世界中の人が使えるものになりつつある。楽天は「AIの民主化」を推進するという。

「STEP1でデータでAI技術基盤を拡大し、STEP2では社内でAIを使いモデルケースを作る。そしてSTEP3で社外にオープン化していく」(同)と説明した。

<楽天はAI分野で世界的に注目されている>

楽天はAI分野で世界的に注目されているという。国内のほとんどの人が楽天IDを持っており、楽天グループの何らかのサービスを使っている。5000万人弱の人が楽天グループのウェブサイトかアプリに来訪している。

「GoogleやMeta、Amazonなどの世界的なハイバースケーラーといわれる企業でも、これだけ幅広くて深いデータは持っていない」(同)と力説した。

楽天グループではモバイルが加わったことで、楽天エコシステム外のデータも収集できるようになった。

「現在、楽天モバイルは750万人弱のユーザーがいる。そのユーザーがどういう行動をしているかを個人情報保護法に抵触しない形で収集している」と説明した。

<パートナー協業と日本語LLMを展開>

楽天は豊富なデータを生かし、AI技術基盤を拡大する2つの戦略を紹介した。

1つ目はOpenAIを中心とした外部の生成AIとのパートナーシップ。2つ目は楽天自身が開発する日本語のラージランゲージモデル(LLM、大規模言語モデル)だ。

「トリプル20というプログラムを作っている。マーケティング、オペレーション、クライアントの効率を20%上げるという挑戦的な目標を掲げている」(同)と話した。

<「楽天モバイル」でAI・自動化の最大活用を実現>

楽天モバイルへの取り組みは「AIの民主化」にも貢献するという。

「楽天モバイルでやっていることは、『通話を安くしましょう』『YouTubeを見るのを安くしましょう』ということだけではない。新しく出現していく仮想社会の電送部分を圧倒的に効率化することによって世の中が変わっていく。その震源地が楽天モバイルであり、日本である」(同)と語った。

楽天モバイルはネットワーク設備の完全仮想化を世界で初めて実現している。完全仮想化により、「AI・自動化」の最大活用が可能になるという。

「楽天モバイル」でも「AIアシスタント2.0」の提供を予定している。

「楽天モバイル」について知りたいユーザーに対して、利用履歴に基づいて提案したり、ユーザーの質問意図を理解して精度高く回答したり、パーソナル化された有益な情報を予測して紹介したりできるという。

<法人携帯で企業のDX化を支援>

法人携帯市場の民主化・DX化も推進するという。

コストパフォーマンスの高い「楽天モバイル」を法人利用してもらうことで、社員やスタッフがデジタルでつながる環境を実現する。

「単純に『法人携帯を買ってください』と言うことだけではなく、マーケティングやオペレーション効率を上げることを支援する。木下グループさまでは、全てのグループ企業で一気に楽天モバイルを8000台導入していただいた。DX化を進めることを一緒にやらせていただいている」(同)と話す。

OpenAIの最新モデルを搭載した法人向けチャットサービス「Rakuten AI for Business」も提供する予定だ。

職種別のテンプレートを備えており、初めて生成AIを利用する人でも簡単に高精度の回答を得られる。入力した情報が無断で活用されることもなく、ビジネスでも安心して利用できるという。

三木谷社長は講演の終盤に「仮想ネットワークは実社会よりも重要になりつつある。ネットやモバイルって表層的なことのように思っていたかもしれない。しかし、仮想経済の上に実経済がある状態になってきた。仮想経済を支えるのは情報ネットワークだ。その中核がモバイルねとワークであり、その革命を楽天グループが行っている」と説明した。