【新社長インタビュー】クラダシ 河村晃平社長「社内カンパニー制導入、意思決定と業務執行を迅速化」

ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営するクラダシは7月1日付で、社長交代の人事を実施した。河村晃平取締役執行役員CEOが代表取締役社長CEOに就任した。関藤竜也社長は代表取締役会長に就任した。河村社長は社内カンパニー制を導入し、今まで以上に意思決定と業務執行の迅速化を図る。河村社長に就任の経緯や社内カンパニー制、これからの展望などについて聞いた。

――7月1日付で代表取締役社長CEOに就任した経緯は?

私は2019年6月にクラダシに入社したのだが、もともと入社したときから、創業者で社長を務めていた関藤から「いつかどこかで河村に社長を務めてもらいたい」と言っていただいていた。

2022年7月には、執行役員制度を導入した。それ以降、経営の意思決定のスピード向上、ガバナンスの強化に取り組んできた。今回、さらにクラダシを成長させるべく、創業社長による経営から、次世代に経営を継承していく必要があると考え、経営体制の変更を決定した。

ーー関藤竜也社長は代表取締役会長に就任した。今後の関藤会長の立ち位置は?

変わらずクラダシに関わっていただく。関藤は創業者のため、関藤の事業への思いやDNAは大変熱いものがあり、それを従業員に発信していく。

これまでも関藤が社長のときから、定例会などでクラダシのビジョンなどを伝えていたが、今後は頻度は少なくなるかもしれないが、引き続きそのような場で情報の発信場行っていただく予定だ。関藤からは「私は河村の最大の支援者になる」と言っていただき、きちんとクラダシを大きくしていかなければいけないと強く感じている。

<社内カンパニー制を導入>

――今回、河村氏が社長CEOになって、社内カンパニー制を取り入れたと思う。詳細について伺いたい。

商社ではよく取り入れられている制度だと思う。社内カンパニー制とは、企業内において事業部門を一つの会社のように位置付けて独立採算制で運営する制度のこと。

今回、「ECカンパニー」「ブランドソリューションカンパニー」「サプライチェーンソリューションカンパニー」「ロジスティクスソリューションカンパニー」の四つを設け、私は代表取締役社長CEOでありながら、EC事業である「ECカンパニー」のCEOも務める。各CEOには、大きく権限を付与したため、その範囲内であれば各カンパニーのCEOが判断し、物事を進めていい。今まで以上に事業成長の加速化が期待できる。

――河村社長CEOがECカンパニーのCEOも務めるわけだが、ECとしての「Kuradashi」はどのように成長させていくのか。

2024年6月期は非常に苦しかった年だった。急いで成長基調に戻す必要がある。ECにおいては、従来と異なり、MD部、マーケティング部、マーケットプレイス部の3部制にし、とにかく事業スピードを早める。

コロナ禍も収束し、人流は変動している。ECで商品を購入する人も減少傾向にあると捉えている。今後は”マス”に向けて、どのようなメッセージを発信していくべきかを検討している。

ECサイト「Kuradashi」への集客は現状、SNS広告、LINE広告、リスティング広告などを展開しているが、今後もコスト最適化を考えつつ、デジタルマーケティングを実施していく。 

顧客にアンケートを実施すると、「Kuradashi」を利用する人は「安いから購入している」「ソーシャルグッド(社会に良い)だから」という人が多い。どうすれば口コミが生まれ、購入者が友人に「『Kuradashi』良いよ。利用してみたら」と薦めるようになるかを考えていく。

<「Dr.つるかめキッチン」子会社化の狙い>

――2024年6月には、制限食の冷凍宅配食サービス「Dr.つるかめキッチン」を展開するクロスエッジの全株式を取得すると発表した。その狙いは?

今後の成長戦略として、積極的なM&Aを行い、非連続な成長を目指している。クラダシは「ソーシャルグッドカンパニーであり続ける」というミッションを掲げ、「社会性」「経済性」「環境性」を考慮して、M&Aを検討している。

冷凍宅配業界は市場としても大きい。さらに昨今、消費者の食の動向も変化しており、仕事から帰ってきて、ご飯を電子レンジで温めて食べるという人が増えている。料理をすると、食べ切れない場合は廃棄したりするが、この点は環境に優しいとは言えない。宅配食なら一食で決まった量を食べるため、廃棄にもなりにくい。保管も冷凍なため、腐る心配も少ない。

「Dr.つるかめキッチン」は制限食の冷凍宅配食サービス。日本では食において、制限しなければいけない人も多い。同サービスは専門医・管理栄養士が監修しており、さらに味もおいしい。食のおいしさを追求しつつ、健康的な食を提供できる。

――「Dr.つるかめキッチン」の成長戦略は?

具体的な戦略は秘密だ。

――M&Aは今後どのような企業を考えているのか?

こちらも具体的なプランはお伝えできない。だが、先ほど申し上げた通り、「ソーシャルグッドカンパニーであり続ける」をミッションに、「社会性」「経済性」「環境性」を鑑みていく。フードロス、食のEC、食のバリューチェーンを展開していくことは変わらない。

 ーークラダシの会社全体の成長戦略は?

今回、社内カンパニー制を設け、それぞれのカンパニーでの成長を図り、会社を大きくしていく。「サプライチェーンソリューションカンパニー」では、小売りに商品を卸したりして、オフラインでの売り上げ拡大を目指す。「ブランドソリューションカンパニー」では、企業のサステナブルのブランディングを行っていく。現在も行っているが、今後はより強化していきたい。

「ロジスティクスソリューションカンパニー」では、物流アウトソーシングと物流コンサルティングを実行していく。ECだけではなく、企業のブランディング、物流、卸売りを展開して、さらなる成長につなげていく考えだ。個人的な野望にはなるが、5年後、10年後には時価総額500億円、1000億円と、日本・世界を代表するソーシャルカンパニーになることを目指していく。