アマゾン ウェブ サービス(AWS)ジャパンは7月18日、7月20日の中小企業の日にちなみ、中堅・中小企業向け事業戦略記者説明会を開催した。
執行役員 広域事業統括本部 統括本部長 原田洋次氏は、「われわれは中堅・中小企業は日本の成長の源であり、日本の未来、経済を背負っていると認識している。だからこそ、支援したいと考えている」と述べ、今年度の中堅・中小企業向け事業戦略について説明した。
中堅・中小企業の生成AIによる経営課題解決を支援
原田氏は昨年も同時期に中堅・中小企業向け事業戦略として、中小企業が抱える「人材不足」「知識や経験の不足」「資金不足」「経営者の意識」といった課題の解決を目指すと説明した。こうした中小企業の課題が今も変わってないことから、今年も戦略の方向性は変わらないという。
そうした中、今年は新たな施策として、「生成AIによる経営課題解決」「AWSパートナーと顧客との連携」を掲げる。
原田氏は、「生成AIは仕事を変革するゲームチェンジャーといえ、 すでに生成AIをビジネスに活用している企業が増えている」と述べた。
パートナーとの連携に関しては、「強みは47都道府県をカバーしているパートナーと組んでいるとともに、AWSも47都道府県カバーする体制を構築している点」と、原田氏は説明した。
中堅・中小企業が抱える課題の一つに人材不足があるが、原田氏は「採用が困難なので、人材育成に取り組む企業が多いので、当社もそれを支援している」として、人材育成のためのプログラムを紹介した。
例えば、同社はAI・クラウドの学習プログラムとして「AWS Skill Builder」を紹介している。同プログラムでは、50以上のAI関連トレーニング、40以上の日本で独自収録したトレーニング(主に非IT人材向けの入門編)を提供している。
Amazon Bedrockで介護の報告業務を自動化:やさしい手
続いて、中堅・中小企業の生成AI活用の事例紹介として、在宅介護サービスを提供するやさしい手 代表取締役社長 香取幹氏が説明を行った。
同社は情報開示システム「ひつじ」を構築し、介護記録や利用者の情報などさまざまなデータを蓄積してきた。香取氏は、「利用者様にパーソナライズされたサービスを提供するために、情報の精緻化と可視化が必要と考え、AIとBIの活用を検討した」と説明した。
情報を精緻化するため、介護業務にまつわる膨大な文書処理の自動化において生成AIを活用している。介護業務においては、実に多くの文書処理項目があり、これらの処理の自動化を進めている。香取氏は、「生成AIにより、自動化とともに、質の高いアカウンタビリティを実現している」と述べた。
具体的には、AWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」を用いて、1カ月、利用者あたり6万文字のプロレコ(介護記録データ)を対象に報告業務の自動化を行っている。9万文字に及ぶ訪問看護の報告書をまとめる作業の自動化も行っている。
加えて、プロレコから介護員向けの手順書を生成して標準化されたサービスを提供しているほか、ケアマネジャーが利用者との会話音声から、アセスメント項目をAIで生成しているという。
香取氏は、今後の展開について、「『ひつじ』において、利用者様の家族と担当者はLINEでつながっており、担当者はデータを探索してご家族の質問に回答している。今後は、RAGを用いてリアルタイムで回答を自動化していきたい」と語っていた。
英会話レッスンのサマリーを生成AIで作成:ネイティブキャンプ
続いて、オンライン英会話サービスを提供しているネイティブキャンプで執行役員 CTOを務める大西さくら氏が「Amazon Bedrock」の活用について説明した。
大西氏によると、オンライン英会話において、生徒は「英語を話しながらメモをとることが難しい」、また、講師は「前回に話したテーマを忘れてしまう」という課題があるという。
そこで、同社はAIを活用して、レッスン中の会話祖音声データからテキストに変換し、そのテキストをLLMで処理して、会話の要約をレッスン開始時に表示することにした。これにより、生徒はレッスンのポイントを把握しやすくなるとともに、講師はレッスンをスムーズに行えるようになったそうだ。
このAIレッスンサマリーを生成する仕組みに、機械学習プラットフォーム「Amazon SageMaker」と「Amazon Bedrock」を活用しているが、大西氏は、AWSのサービスを活用したことで、「機械学習の環境構築にかかる時間を短縮できた」と語っていた。
同社はAIを活用したサービスとして、、生徒の属性に応じてトークテーマを講師に提案する「AIトピックサジェスト」も提供している。このサービスは、フリートークのレッスンにおいて、講師からテーマを探すのが大変という声を受けて、開発されたもの。同サービスでは、生徒のデータをもとにおススメのトークテーマを生成して提案するが、講師からは「テーマを考えることが減った」と好評だという。
今後は、コーディングやプログラミング、 Q&A、テスト、英会話教材に生成AIを活用することを計画しているほか、講師がより効果的なレッスンができるようサポートする機能にAIを活用していきたいという。