クラフトビールのヤッホーブルーイング、飲みにくい「ゆっくりビアグラス」開発 適正飲酒を促進

クラフトビールを製造・販売するヤッホーブルーイングはこのほど、適正飲酒への関心の高まりを受け、ビールが少しずつしか流れてこない”飲みにくい”グラス「ゆっくりビアグラス」を開発した。ビールの飲酒量が増える夏本番を目前に、「ゆっくりビアグラス」を通じて、”お酒をゆっくり飲む”という飲み方を提案する。

ヤッホーブルーイングは、品質にこだわった個性的で味わい豊かなクラフトビールを製造。フラッグシップである「よなよなエール」は、日本を代表するクラフトビールとして支持を得ている。

このほど、適正飲酒への関心の高まりを受け、ビールが少しずつしか流れてこない”飲みにくい”グラス「ゆっくりビアグラス」を開発した。開発は、日本初のガラス専門の芸術・工芸・造形技術の教育機関でもある、東京ガラス工芸研究所と共同で行い、職人2名による手作業で製作している。

砂が流れ落ちることで時を刻む「砂時計」がモチーフの「ゆっくりビアグラス」は、くびれ部分によって流れ出るビールの量が制限され、ゆっくりと飲むことができる。

試作段階では、くびれ部分をミリ単位で調整した6種類の試作グラスで飲み比べを行い、香り・味わいはもちろんのこと「理想の飲みにくさ」を追求した。上部はワイングラスのように湾曲した構造のため、ビールの香りを楽しめ、350ml缶1本分を注ぐことができる。

「ゆっくりビアグラス」を体験した16名の内、93.8%にあたる15名が「飲みにくい」と回答したほか、「いつもは飲み込む感じがしたけど、口の中での滞留時間が長かった。味がいつもよりする気がした(女性)」「自分はお酒に強くない。ゆっくり飲んだから、アルコールが回るのが遅かった。この飲む速度が適正なのかもしれない(男性)」「ずっとちょびちょび飲めるから飲み過ぎなくていい。少量で満足感を得られる(女性)」「今日、お酒セーブしたいときにちょうどいい。入ってくる量はちょうど良かった(男性)」などの感想を得た。

「ゆっくりビアグラス」は、7月16日から公式通販サイト「よなよなの里」で限定10個を抽選販売するほか、公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS 新虎通り店」(7月16日より)では、「ゆっくりビアグラス & よなよなエール(350ml缶)セット」を880円(税込)で特別提供する。さらに東京都中野区のビアバー「麦酒大学」でも7月28から8月3日の期間限定で、「ゆっくりビアグラス」での提供を行う。

7月1日~2日に、20歳~69歳の日本人1099人を対象にヤッホーブルーイングが実施した調査によると、2024年2月に厚生労働省が公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(発表内容:生活習慣病のリスク高める1日あたりの飲酒量(純アルコール量:男性 40g、女性 20g)など)」を知っていると答えた人は21.0%に留った。

体質的にお酒を飲めない人やお酒を飲まない人を除く、お酒飲用者に絞っても認知度は23.4%に留まっていることから、「飲酒ガイドライン」に関連する情報の発信・啓発活動を今後も継続的に実施していく必要性があることが示唆されたとしている。

これまでの飲酒で想定よりも飲み過ぎてしまった経験をたずねた問いでは、外食では59.9%、自宅で38.5%の人が、飲み過ぎてしまったことがあると回答した。外食の方が飲み過ぎてしまう傾向があることが明らかになった。

飲み過ぎてしまった理由については、1位に「人と一緒に飲むと、ついつい飲むペースが上がってしまう」、3位に「すぐに飲み干してしまう」がランクインし、飲み過ぎてしまう主な原因は「飲むペース」にあると考えられるとしている。一方で、アルコール飲用者の35.2%が「厳酒したい」と回答していることもわかった。

適正飲酒のために心がけていることをたずねた問いでは、「食事(つまみ)と一緒に飲む」「休肝日を設ける」「意識してゆっくりと飲む」「あらかじめ量を決めて飲酒をする」が上位となった。「量を制限する」だけでなく、「ゆっくり飲む」ことが適正飲酒に効果的であると認識されていることが伺える結果となった。

ヤッホーブルーイングは、は企業ミッションに「ビールに味を!人生に幸せを!」、価値観の1つに「顧客は友人」を掲げており、ビールを購入するファンの健康とささやかな幸せを願い日々活動している。事業ドメインを「ビールを中心としたエンターテイメント事業」と定義し、ビールの味だけでなく、ビールを通じた楽しさも含めてファンに喜んでもらうことを目指している。

2024年2月に厚生労働省から「飲酒ガイドライン」が公表されるなど、適正飲酒の必要性が高まる中、企業として真っ当に適正飲酒に関して取り組むことは大前提として、楽しくカジュアルに適正飲酒を実現することができないか模索。「お酒をゆっくり飲む」ことに着目した。

あえて”飲みにくい”グラスを開発することで、”ゆっくり飲む”ことをユーモラスに啓発することができるのではないかと考えたとし、色や香り、味わいをゆっくりと楽しむことができるエールビールをつくるメーカーだからこそ、「ゆっくりビアグラス」を通じて”お酒をゆっくり飲む”という飲み方を提案していく考えを示した。

「ゆっくりビアグラス」と「ゆっくり飲むことの効用」について、肝臓専門医として知られる尾形哲医師は、「エールビールをゆっくり飲むことで、味覚が最大限に引き立てられます」とコメント。

試飲した「ゆっくりビアグラス」について、「ワイングラスが砂時計のようにふたつつながった形状のため、下の部分に入ったビールがゆっくりとしか、上の部分に移りません。『よなよなエール』を注いでみたところ、香りが広がり、飲む時間は通常の3倍以上かかりました。この特別なグラスを使うことで、エールビールの味わいをより深く楽しむことができるでしょう」とコメントした。

肝臓の健康に目を向けると、「アルコールは肝臓で代謝されますが、急激に大量のアルコールを摂取することは肝臓に大きな負担をかけます。肝臓は1時間あたり約10gのアルコールを代謝する能力を持つとされており、これはビール1缶(約350ml)のアルコール量に相当します。ゆっくりと飲むことで、肝臓がアルコールを効果的に処理する時間を確保でき、結果として肝臓へのダメージを軽減することができます。2018年のメタアナリシスによれば、アルコール摂取量がゼロであることが疾患発症リスクを最小にすることが報告されていますが、適度な摂取を心掛けることは重要です」と述べた。