「(登壇者と会場の)熱気がすごい。想像以上に盛り上がるイベントだな……」

ソフトウェア開発ベンダーのサイボウズが主催するユーザーイベント「kintone hive(キントーンハイブ)」に参加した筆者の独り言だ。

  • サイボウズは、ユーザーイベント「kintone hive(キントーンハイブ)」を全国各地で開催した(写真は名古屋会場)

    サイボウズは、ユーザーイベント「kintone hive(キントーンハイブ)」を全国各地で開催した(写真は名古屋会場)

「kintone hive(キントーンハイブ)」とは?

同社が提供する「kintone」は、ノーコードで業務アプリが開発できるクラウドサービス。俳優の豊川悦司さん演じる「文系出身の部長」が“シュシュっと”業務アプリを楽しそうに作っているCMのアレだ。

2023年12月末時点で導入社数は3万2800社を超え、毎月650社が新規で導入しているという。また、東証プライム企業の3社に1社が導入しており、2023年のkintoneの売上高は130億円(前年比25%増)を突破した。

急成長の秘訣の1つは、ITの専門知識がなくても、現場主導で業務改善に取り組める「ノーコードツール」である点だ。難解なプログラミング言語を覚えなくても直感的にアプリを作ることができる。kintone導入担当者は、非IT部門が93%を占めているという。

デジタル化が遅れているイメージが根強い自治体でも導入が進んでいる。例えば福岡県北九州市では、全職員8000人がkintoneを活用し、導入1年半でシステム費用約22億円を削減している。職員の作業時間は年間で約3.6万時間削減された。

  • 現場主導で業務アプリが作れる「kintone」

    現場主導で業務アプリが作れる「kintone」

そんなkintoneの活用アイデアをユーザー同士で共有するライブイベント。それがkintone hiveだ。

2015年から開催しているイベントで、今回の「kintone hive 2024」で10回目の開催を迎えた。これまでに100社以上の企業が登壇し、累計参加者数は1万人を突破している。

2024年は広島、札幌、福岡、大阪、名古屋、東京の6カ所で開催され、日頃の業務でkintoneを使いこなしているユーザーが一堂に会し、業務改善につながる活用ノウハウをそれぞれの視点で披露した。

筆者は、6月25日開催の名古屋(Zepp名古屋)、7月9日開催の東京(Zepp DiverCity)に参加してきたので、熱気に包まれていた会場の様子をお届けしたい。

  • kintone hive nagoyaはZepp名古屋で開催された

    kintone hive nagoyaはZepp名古屋で開催された

100社100通りのkintone活用

kintone hiveのメインとなるプログラムは、kintoneのユーザー企業よる事例発表だ。名古屋会場では450人以上が、東京会場では800人以上のユーザーが来場した。

そして、それぞれの会場で、以下の企業や団体が活用ノウハウをプレゼン形式で発表した。登壇者のエントリー数は非公開だが、担当者によると「東京会場は例年以上の激戦の中で審査となった」という。

【kintone hive nagoya】
・フジ自動車工業
・桜和設備
・山豊工建
・山辺事務機
・清田産業
・興和工業所
(計6社)

【kintone hive tokyo】
・アクタス
・インデックス
・ケアパートナー
・小善本店
・成田デンタル
・司法書士法人NCP
・東京電力エナジーパートナー
(計7社)

  • プレゼン形式で自社のkintone活用事例を発表(山豊工建)

    プレゼン形式で自社のkintone活用事例を発表(山豊工建)

建設業界や商社業界、介護業界、エネルギー業界など、エントリーした企業の業界はさまざまで、従業員規模数も数十人~数千人と幅が広かった。

また、発表の内容に関しても「社内からの反発を押し切ってkintoneの導入を進めた事例」(桜和設備)や、「サイボウズOfficeからkintoneへの移行で奮闘した事例」(清田産業)、「新入社員がkintone活用で気付いたこと」(山辺事務機)と、千差万別で興味深かった。

サクセスストーリーだけではないそれぞれの発表を聞いて、100社100通りの使い方や事例があることを再認識した。印象的だったプレゼンテーションの内容は、別の記事で紹介したいと思う。

  • プレゼンの時間は1社17分(アクタス)

    プレゼンの時間は1社17分(アクタス)

kintone hiveで最も盛り上がりを見せたプログラムは、地区代表を決める「投票プログラム」だった。すべての事例講演が終了した後、来場者は最も印象的だった発表者に1票を投じた。

投票の結果、名古屋では桜和設備、東京では成田デンタルが地区代表に選ばれた。ファイナリストとなった2社は、2024年11月頃に開催されるサイボウズの年次イベント「Cybozu Days(サイボウズデイズ) 2024」にてもう一度プレゼンを行い、グランプリを目指す。

kintone hiveの担当者によると、「登壇に対しての賞金などはないのですが、自社の活用ノウハウをユーザーに共有したいという思いで舞台に立ってくれている」という。多くの発表者が、プレゼンの最後に「なにかしら参考になったら、うれしいです」と語っていた。

  • kintone hive nagoyaでは、投票によって桜和設備の清水敦氏が地区代表に選ばれた

    kintone hive nagoyaでは、投票によって桜和設備の清水敦氏が地区代表に選ばれた

遊び心満載の楽しいイベント

実際に参加してみて、kintone hiveはかなり遊び心があるイベントだと思った。

センスのいいDJが常に会場を盛り上げてくれるし、入場チケットはおいしく食べられるものだった。

  • DJがセンスのいい選曲で会場を盛り上げていた

    DJがセンスのいい選曲で会場を盛り上げていた

  • ライブチケット風焼きかまぼこ

    ライブチケット風焼きかまぼこ

東京会場には、プリクラブースが設置されていて、多くの来場者が記念にプリクラを撮影をしていた。

  • 東京会場に設置されていたプリクラブース

    東京会場に設置されていたプリクラブース

  • 多くの人が記念に撮影していた

    多くの人が記念に撮影していた

また、サイボウズ社員と交流ができる「ざつだんブース」や、同社のオリジナルグッズが買える「サイボウズ商店」などがあり、休憩時間に多くの参加者が足を運んでいた。

  • サイボウズ社員と交流ができる「ざつだんブース」

    サイボウズ社員と交流ができる「ざつだんブース」

  • オリジナルグッズが買える「サイボウズ商店」

    オリジナルグッズが買える「サイボウズ商店」

会場の反応もよかった。「がんばれー!」や「いいねえ」と、多くの人が登壇者にエールを送っていた。ビジネス系のイベント特有の固さがまったくなく、温かみのあるイベントだと感じた。

ある参加者に話を聞くと、「新たな発見が多くとても勉強になった。今日学んだことを早く実践したいと思う。もっと早く参加すればよかった」と、満足そうな表情で答えてくれた。

kintoneの活用事例をたくさん聞いて、筆者も業務アプリを作ってみたくなった。ITの専門知識はないに等しいが、記者・編集職の業務を効率化できるアプリをkintoneで作って、同僚や上司を驚かせたい。

そんなきっかけをくれる素敵なイベントだった。