エレクトリックワークス社のエンジニアリング事業を担うパナソニックEWネットワークスは7月10日、事業説明会を実施した。
説明会には、代表取締役社長の元家淳志氏、商品開発部 商品開発一課の今西宏行氏、東日本営業一部 営業第一課の蘭隆太氏が登壇し、同社の事業内容と、同社が「ネットワークインテグレーション企業」として目指すソリューション事業の将来構想を説明した。
設備統合ネットワーク事業強化を軸に生涯顧客化を目指す
今回、説明会を実施したパナソニックEWネットワークスは、EW社ソリューションエンジニアリング本部で「ネットワーク機器・ソリューション」を主に担当している企業だ。
1989年にネットワーク事業を中心とした事業内容で創業されて以来、順調に事業ポートフォリオを拡大しており、現在は物販を中心としたスイッチングハブ事業と施工・保守運用を含めたソリューション事業(ネットワーク事業/映像事業/入退事業/ワイヤリング事業/保守・運用事業)で構成されている。
なお、売り上げとしてはスイッチングハブ事業が56億8000万円、ネットワーク事業が6億4000万円、映像事業が15億3000円、入退事業が3億1000万円、ワイヤリング事業が14億2000万円、保守・運用事業が5億4000万円となっている。
このような事業展開を行う同社だが、「社会変革・技術進化により2030年に向けたビジネス機会が拡大している」と考えており、「パーパス経営を軸に事業戦略と組織戦略を両輪で強化する」ことを事業運営の取り組みとして掲げている。
事業戦略に関しては「商品力の強化」「設備統合ネットワーク事業の強化」「海外事業展開」の3点を目指し、組織戦略においては「組織づくり」「人づくり」「デジタル化」の達成を目指す。
特にこの中でも事業戦略の中で掲げられている「設備統合ネットワーク事業の強化」を軸に、スイッチからサービスまで一気通貫のシステムで生涯顧客化につなげていくことを事業成長の方向性としていくという。
「従来のネットワークは、それぞれが物理的に独立した制御システムで構築されており、ネットワークの複雑化によって運用効率が低下してしまうという課題がありました。設備統合ネットワークを活用することで、全てのビルシステムが統合され、データを利活用できる環境が整備できるようになります」(元家氏)
同社はこの設備統合ネットワークを活用して、高度な専門知識を必要とするビルのサイバーセキュリティ対策の運用支援やビルの防犯対策、警備員削減、人手不足解消につながるソリューションを提供していきたい考えだ。
また組織戦略においては、パーパスの実現を目指して社員と共に組織・制度をつくり中期計画へ落とし込むため、社員から推薦のあった30人の社員と共に、将来の組織のあり方をデザインする「PJ27」という取り組みを2024年の6月~9月の期間で実施している。
加えて、2023年10月から参加者を公募で募り、経営トップが講師となり、階層別に組織能力向上と個人の成長機会を提供する「次世代経営塾」という取り組みも進められており、論理思考・意思決定/マーケティング・経営戦略/アカウンティング/組織行動学/リーダーシップの経営基礎知識を講義とグループワーク中心に学び合いの場づくりをすでに60回以上実施しているという。
現在はスイッチングハブ事業が56%、ソリューション事業が44%の販売構成比となっているが、今後はこれらのような取り組みを行いながら事業拡大を図り、ソリューション事業の比率とスイッチングハブ事業の比率を2027年までに同率にすることを目標として掲げている。
両側のポートに雷サージ保護回路を搭載した「PoEスイッチングハブ」
また、同説明会では2001年に事業が開始されてから同社の注力事業の1つとなっている「PoE(Power over Ethernet)スイッチングハブ」についても詳しく説明された。
PoEスイッチングハブは、社内無線LANのほか、防犯カメラや入退室設備、ビル管理設備などの設備ネットワークを構築する際に使用されるネットワーク機器のことを指す。
PoE対応のスイッチングハブを使用することで、ネットワークにつながるさまざまなデバイスにLANケーブル1本で最大90wもの電力が供給されるため、いくつもの電源工事をすることなく、安全でスマートな配線を可能としている。
同社は、PoEスイッチングハブを含む設備ネットワークに求められる最大の要素は「ネットワークを止めないこと」だと語り、止まらないネットワークの実現には「システム」と「ハード」の両方が必要となっていることを説明した。
特にハード面に関しては、雷や静電気、高温、埃・粉塵といった自然現象の影響を受けることがネットワークが止まってしまうことの要因になっているそうで、その中でも落雷の影響は甚大だという。
日本の気候環境下では、雨期に落雷の発生が多く、雷による産業への損害は年間で1000億円を超えると言われている。防犯カメラや無線APなどは屋外に設置されることも多く、屋外カメラの受けた誘導雷がネットワーク機器に伝わり、故障の原因につながっている。
このような誘導雷から設備ネットワークを守るためには、AC電源(交流電源)側のみでなく、LANポート(有線でインターネットを使いたい時にLANケーブルをパソコンにつなぐ差し込み口)側も、無線Wi-Fi APやネットワークカメラからの誘導雷に対する耐性を有することが必要となっている。これが「雷サージ(過電圧)耐性」だ。
パナソニックEWネットワークスのPoEスイッチングハブは、電源ポート部とLANポート部の両方に雷サージ保護回路を搭載しているのが特徴で、IEC(国際電気標準会議)基準に準拠しているレベルの雷サージ耐性を持つ一般的な雷サージ耐性スイッチングハブが、2~4kvであるのに対して、同社の雷サージ耐性スイッチングハブは10kvとなっている。
両側に保護回路を搭載することで、内部回路に雷を到達させずサージを逃がすことができ、サージ保護回路の実装後、雷サージによる故障は激減したという。
蘭氏は、今後のPoEスイッチングハブの展開について「昨今の日本の天候環境において突発的な豪雨や落雷が増加する中、日本各地のインフラにおけるネットワークの安定性・堅牢性をより確かなものにできるように展開を続けたい」と抱負を述べていた。