三菱造船は6月28日、アンモニア分解装置と水素燃料電池を組み合わせたカーボンフリーな船舶用発電設備と、アンモニア分解水素をアンモニア燃料主機関のパイロット燃料として供給する設備の、2つのアンモニアソリューションコンセプトに関して、米アモジーと共同でフィージビリティ・スタディ(実現可能性調査)を完了したことを発表した。
アモジーは、アンモニア発電ソリューションを提供する米国のスタートアップ企業で、触媒などでアンモニアを分解し水素を取り出すアンモニア分解技術を有しており、今回の実現可能性調査では、アモジーのアンモニア分解技術を活用した船上水素製造利用設備と、三菱造船の舶用アンモニアハンドリングシステム「Mitsubishi Ammonia Supply and Safety System(MAmmoSS)」を組み合わせ、アンモニア分解技術で取り出した水素(アンモニア分解水素)を水素燃料電池へ適用する可能性について検証したほか、アンモニア燃料に必要となるパイロット油を従来の重油・軽油からアンモニア分解水素に代替することで、アンモニア燃料船を完全カーボンフリー化する可能性についての検証も行ったという。
国際連合(国連)の専門機関の1つである国際海事機関(IMO)では、2050年ごろまでに海運のGHG(温室効果ガス)排出量をネット排出ゼロとする目を掲げており、アンモニア燃料は、その達成に寄与するものとして、将来の安定的なクリーンエネルギーや水素キャリアとしての活用が見込まれていることもあり、三菱造船とアモジーでもアンモニア燃料供給装置の協業可能性に関する検討を開始するMOU(覚書)を締結し、今回の実現可能性調査を行ったという。
なお三菱造船では、今回のアンモニア分解設備およびアンモニア焚きエンジン向けをはじめとする、さまざまなアンモニア消費機器向けのアンモニア供給装置、アンモニア除害装置などの舶用アンモニアハンドリングシステムの開発を引き続き進めていくほか、アンモニア燃料船および主機関、発電機関、ボイラー、アンモニア分解設備といった複数のアンモニア燃料燃焼装置で構成される船内プラントの設計エンジニアリングも併せて提案していくことで、カーボンニュートラル社会を実現するとともに、世界規模での環境負荷低減に貢献していきたいとしている。