【リニューアル成果続々】GMOメイクショップ 高橋和夫氏「新決済画面でCVR向上、今秋に新CRMツールも」

GMOメイクショップは、2022年に発表したECサイト構築SaaS「makeshop(メイクショップ)」の長期に渡るリニューアルプロジェクトを着実に進めている。最短1クリックで注文が完了する新決済画面はまだ提供して間もないが成果が出始めている。越境ECやBtoBなどの機能も導入が加速しているようだ。今秋には新たなCRMツールを提供する予定だ。中・大規模向けの「GMOクラウドEC」は、「makeshop」を超える成長率を誇っている。リニューアルの進捗や周辺サービスの拡充などについてエバンジェリストの高橋和夫氏に聞いた。

――「makeshop」のリニューアルプロジェクトの進捗は?

AWSへのインフラの切り替えは完了しており、2023年3月には新しい管理画面の提供も開始している。すでに半分くらいのショップが新しい管理画面に移行している。古い管理画面は今年の夏には閉じる予定だ。

2つの管理画面を運用し続けているとリソースが分散し、新しい機能を提供するスピードが遅くなり、結果として導入企業さまへ提供するサービスの品質が低下してしまう。これまでも移行に関して大きなトラブルはないが、今後も丁寧にご説明して、理解をいただきたいと考えている。

APIの刷新についても、順調に新しいAPIを毎月出している。ホームページの一番下にリリースを予定している機能やAPIのお知らせを掲載している。

<新決済で売上拡大へ>

――今年2月、新決済画面「Smart Checkout(スマートチェックアウト)」を発表した。すでに第2フェーズまで提供していると思うが、利用企業からの反響は?

 

4月に提供した第1フェーズでは、最短1クリックで注文を完了できる新管理画面を提供したが、クレジットカードやAmazon Pay、代引き、銀行振込などの決済方法にしか対応していなかった。5月に提供した第2フェーズでは、PayPayや楽天ペイ、ペイディ、LINE Payに対応している。

まだ全体の2割程度しか「Smart Checkout」に切り替えていないが、切り替えた店舗ではすべてのジャンルで売り上げが昨年対比で伸びている。コンバージョンの部分で手ごたえは感じている。

とはいえ、まだ対応していない購入方法や決済手段もあるため、切り替えに踏み切れないショップも多い。

今後、第3フェーズで定期購入や予約販売、複数配送などに対応する。これまでなかったアドレス帳管理にも対応し、消費者が自分で配送先を登録できるようにする。

第4・第5フェーズでは、後払い決済やキャリア決済などに対応し、第6フェーズでPaidやPayPalなどに対応する計画だ。第6フェーズまでの対応を年内に完了する予定としている。

さらにその先には、店頭などで利用できるQR決済にも対応したいと考えている。

――「Smart Checkout」以外のリニューアルへの反応は?

意外と見落とされがちだが、明かにサーバーが落ちにくくなっている。セールやメディア露出でアクセスが急増してもつながりにくくなるケースがほとんどなくなった。

<アニメ系が越境で伸長>

――商品カテゴリーで伸びている分野は?

アニメやゲームキャラクターの商品を取り扱う「おもちゃ・ホビー・ゲーム」ジャンルは好調だ。昨今のアニメブームに加えて、越境ECの力が大きいと考えている。

「makeshop」では、ジグザグと提携した越境ECサービスを提供しているが、その利用企業数は右肩上がりで伸びている。

――BtoB分野の成長はどうか?

BtoB‐ECの構築実績も伸びている。「makeshop」では、BtoBオプションというアドオン機能を提供しており、数千店舗が利用している。BtoC‐ECで「makeshop」を導入している企業が、1つのサイトでBtoB‐ECも提供するために導入するケースが多い。

中・大規模向けのECプラットフォームである「GMOクラウドEC」でも「受発注Lite」というソリューションを提供している。業務システムのように受発注の仕組みを作れるソリューションとして引き合いが増えている。

<「GMOクラウドEC」の売上558%成長>

――「GMOクラウドEC」も強化していると思うが、導入実績は?

「GMOクラウドEC」の成長が目覚ましい。2023年12月期の「GMOクラウドEC」の売り上げは558%という高成長を実現した。このままの成長スピードだと、来期(2025年12月期)には、「makeshop」の売り上げを追い抜きそうな勢いとなっている。

ハウス食品さまとゴディバジャパンさまのような大手企業へも導入させていただいている。まだオープンにできないが、国内有数のメーカーへの導入も決まっている。

――地方自治体との連携協定や支援も増えているようだ。

以前から地方の自治体や団体に採用いただくケースは多かったが、代表の向畑の出身地でもある香川県坂出市との取り組みが他の自治体への波及効果につながっている。坂出市とは2023年9月にDX化推進に向けた協定を締結し、同11月には「生成AIによる対話型コマース」の実証実験を実施した。今年5月には向畑が坂出市のDX戦略アドバイザーに就任し、より踏み込んだ取り組みを開始している。

自治体とこれだけ深く取り組みを行っている実績が、他の自治体への信頼度向上にもつながっているようだ。

<新ツールでCRM支援>

――カートシステム以外の周辺サービスの状況は?

ECサイトの運営代行や物流代行などのサービスを提供している。とくに物流代行は好調で、引き合いが増えている。倉庫に自立走行型ピッキング補助ロボットを導入するなどして、物流の機能を拡充している。

今年の秋には、「makeshop CRM」をリリースする計画がある。これまで「MakeRepeater(メイクリピーター)」というツールで、メール配信によるCRM機能は提供してきた。新しいツールでは、配信方法の幅を広げて、CRMをより効果的に実施できるようにする。

マーケティング領域はまだまだ強化しきれていてないので、自社だけではなく外部企業と手を組みながらソリューションを提供できるようにしたい。

――今後、さらに強化する機能やサービスの計画は?

計測関連の機能が不十分な面があり、グーグルの拡張コンバージョンやMetaのコンバージョンAPIに対応していく予定だ。

管理画面のダッシュボード機能をリリースしているが、ここをさらに手厚くしていく。シーズンごとの売れ筋商品を確認できるような機能も追加する。

「GMOクラウドEC」では、業務フローをつなげて自動化する機能も提供する計画だ。

 

リニューアルを機に、プロダクトの作り方に対する考え方が変化している。これまではショップが望む機能を作ることを優先していたが、現在は消費者のことを優先して機能設計するようになった。実際の消費者の声を拾い、UI/UXの改善を細かく実施している。システムがリニューアルしたことで、すぐに改善できる環境が整ったことも大きい。今後もこの方針で改善を続けていく。