少しずつ、確実に日常に浸透しつつあるAR(拡張現実)の世界。各社が新製品を発表し、その市場規模も拡大傾向にある。米Appleが6月10日(現地時間)、WWDC 2024の基調講演において、ゴーグル型ARデバイス「Apple Vision Pro」の販売地域拡大を発表したことは記憶に新しい。同製品は日本でも、6月28日に発売されることが明らかになっている。

これと前後するかたちで、ARグラスブランド「XREAL」を展開するXreal社は6月19日、ARグラス専用デバイス「XREAL Beam Pro」を8月6日から日本で発売すると発表した。

今回本誌では同社の創設者でCEOのChi Xu 氏にインタビューする機会を得た。AR分野が盛り上がりを見せる今、同氏は日本市場をどう捉え、どのような展開を考えているのだろうか。

  • Xreal社 創設者でCEOのChi Xu 氏

“自分専用の映画館”で、これまでにない体験を実感

インタビューの前に、筆者は発売前のXREAL Beam Pro(以下、Beam Pro)を体験させていただいた。ARグラスに接続したデバイスはスマホとほぼ同じくらいのサイズ、重量だ。Xreal社では視界に映る空間を操作するデバイスとして2023年6月、「XREAL Beam」を発売しており、ユーザーが向いている方向に画面が浮かぶ「スマートディスプレイ」、画面を希望の空間に固定する「空間ディスプレイ」の機能はXREAL Beam からBeam Proにも引き継がれている。

XREAL Beamとの違いとしては、空間内で開いたアプリのページを2つ並べて表示できるようになったことが挙げられる。これにより、例えば「動画を見ながらSNSをチェックする」といったことが可能になった。また、思い出の写真を立体的に配置できる機能なども搭載された。

Beam Pro最大の特徴は、デバイスに設置された2つのレンズだ。各5000万画素あるレンズ間は数センチの間隔が開いているが、これは人の左右の目の距離と同じ程度だという。この2つのレンズにより、人が見るのと同じような奥行きのある立体的な動画を撮ることができる。

実際、Beam Proで撮影した動画を見せていただいたが、3D映像のあまりの美しさに感激した。画面ブレを軽減する機能も搭載されており、自分で撮影した動画を見返し、思い出を振り返る、共有するという行為そのものが“新たな段階に入った”と感じるような体験であった。いわば、“自分専用の映画館”を手に入れたという感覚に近い。「この体験がわずか約40,000円なのか」と思わず声が出てしまうほど、驚いた。

※6GB32,980円(税込)、8GB39,980円(税込)

ガジェットへの興味関心が高い日本市場

満を持してBeam Proをラインナップに加えるXREALだが、現時点において、日本市場にはどの程度なじんでいるのだろうか。

Xu氏は「日本での浸透度は高い」と話す。Xreal社の公式ホームページへのアクセス数は米国と日本がほぼ同数であり、人口比を考えると、日本での関心の高さは抜きんでているという。その要因を同氏は「日本チームが積極的に取り組んでくれた結果」だとした上で、日本市場に比較的早い段階で参入したことや、大手キャリアとの強固なつながりによりサプライチェーンが安定していることなどがあるとした。

また、「日本市場はガジェットに関する興味が強く、日本のユーザーはガジェットの良さをすごく理解してくれている」と感じているそうだ。そのため、同社では一般ユーザーに向けたプロモーション活動だけでなく、開発者向けのプロモーションにも力を入れている。特にAR技術に興味を持つ人たちに向け、技術面の情報交換も含め、積極的なコミュニケーションを図っているという。

Apple Vision Proをどう見るか?

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