メタップスホールディングスとビヨンドは6月17日、クラウドインフラ市場に関するメディア勉強会を開いた。勉強会は二部構成で、前半は3大クラウドについて、後半は監視ツールについて解説が行われた。本稿では、前半の3大クラウド(AWS・Microsoft Azure・Google Cloud)の比較についてレポートする。

3大クラウドの特長と強みを比較

前半はビヨンドのシステムソリューション部でインフラエンジニアを務める寺岡佑樹氏が登場。3大クラウドを中心に著名なクラウドプラットフォームを比較して解説した。

  • ビヨンド インフラエンジニア 寺岡佑樹氏

    ビヨンド インフラエンジニア 寺岡佑樹氏

AWSの特長

2006年にサービス開始したAWS(Amazon Web Services)は、市場シェアの高さと広範なサービスが特徴的。仮想サーバのAmazon EC2、オブジェクトストレージのAmazon S3、マネージドデータベースのAmazon RDSなどを展開する。エンタープライズ向けだけでなくスタートアップでの利用にも適応し、特定の用途というよりも幅広い用途で利用可能。

寺岡氏はエンジニアの目線から見たAWSについて、「便利かつ有名であり、インターネットの活用情報が多いマネージドサービスが複数存在する。一般的なWebアプリケーションであればAWSの有名どころのサービスを使えばおよそ事足りる。サポートの対応も優秀」と紹介していた。

Google Cloudの特長

2008年にサービスを開始したGoogle Cloudは、2022年6月にGCP(Google Cloud Platform)から名称が変更された。データ分析と機械学習における性能や高速なネットワークインフラが強み。データ分析を支援するGoogle BigQueryやKubernetesエンジンのGKE(Google Kubernetes Engine)などを提供する。

寺岡氏は「Google BigQueryをデータ分析基盤として利用している例が多い。メインのサービス基盤としてAWSを使いつつ、データの分析基盤としてGoogle Cloudを併用する場面が非常に多い」とコメントしていた。

Microsoft Azureの特長

Microsoft Azure(以下、Azure)は2010年にサービスを提供開始しており、3大クラウドの中では最後発。Microsoft製品との統合やエンタープライズ向けのソリューションが強みで、OpenAIが開発したAIモデルをAzure上で利用可能なAzure OpenAI Serviceが特徴的だ。

寺岡氏は「Windows ServerやActive DirectoryなどのMicrosoft製品の移行や利用時には、Azureを優先的に検討する。GitHub CopolotやMicrosoft 365 Copilotなど、ソリューションに組み込まれている生成AIを使っている人は私を含めて多いと思う」と紹介した。

3大クラウドと市場動向

近年、3大クラウドを中心とする大規模クラウド事業者により、市場の寡占化が進んでいるという。2023年第3四半期時点で3大クラウドがクラウド支出全体の約65%を占めており、この傾向はAI関連のワークロードへの要求に伴ってさらに顕著になっている。

特に、AWSの市場シェア率は31%で、これをOpenAIと連携するMicrosoftのAzureが追う展開となっている。なお、成長率を見るとMicrosoftのAzureが3大クラウドの中でトップとのことだ。

  • クラウドの市場動向

    クラウドの市場動向

3大クラウド以外のクラウドベンダー動向:OCIとアリババクラウド

Oracleが提供するOCI(Oracle Cloud Infrastructure)は、エンタープライズ向けの高性能なデータベースサービスが強み。既存のOracle環境からのクラウド移行やデータセンターの拡張などに利用される。6月11日(米国時間)には、OpenAIとの連携についても発表していた。

アリババクラウドは中国を拠点とするアリババグループが手掛けているため、アジア市場での優位性の高さが強みとなる。また、高いコストパフォーマンスも特徴の一つだという。

寺岡氏はアリババクラウドについて、「中国市場へのビジネス展開やコスト重視でのプロジェクトなどがユースケースとなる。AWSからアリババクラウドに移行することでコストを削減した例は、当社の既存案件にもある」と紹介した。

まとめ

寺岡氏は前半の勉強会の内容を振り返り、以下のように各クラウドの特長をまとめてみせた。

「AWSは幅広いサービスと信頼性の高さが特徴。Google Cloudはデータ分析と機械学習に強みがあるが、これをAzureが追い上げているのが面白い動向。AzureはMicrosoft製品との連携やOpenAIなどの生成AI活用において強みを持つ。OCIやアリババクラウドは特定の市場や特定のニーズで強みを発揮する」