10兆円規模のファンド(基金)の運用益により支援を受ける「国際卓越研究大学」について、文部科学省は、条件付きで候補としていた東北大学が水準を満たし得るとして、初めて認定手続きに入ることを明らかにした。同大が10月にも所定の運営方針会議を設置する一方、同省が手続きを進めて正式に認定し、今年度中に助成を開始する。
盛山正仁文科相は14日の閣議後会見で「東北大は、分野ごとの研究力強化策や人事戦略、全学の教員人事マネジメントの具体的な工程を示すなど、認可の水準を満たし得るとの結論に至った」と述べた。
同日会見した東北大の冨永悌二(ていじ)総長は「卓越大の主眼は、個別の研究を振興することではなく、大学が世界に伍(ご)して成長軌道を描くためのシステム改革にある。研究や教育、ガバナンス(統治)、財務のシステムの変革こそ東北大学、日本の大学に必要だ。日本にとってラストチャンスといえるこの大学改革を先導し、変革の結節点となりたい」とした。
日本の研究力低下が指摘される中、政府は世界最高水準の研究力を目指す大学を卓越大として支援するため、ファンドを創設。初回の公募を昨年3月末まで行った。国立8校、私立2校が申請し、体制強化計画を提出。識者や企業人計10人からなるアドバイザリーボード(有識者会議)が審査した結果、同8月末、東北大について、一定の条件を満たせば認定するとして選定した。
有識者会議は認定条件として(1)人文・社会科学系も含めた全学の研究力向上の道筋、(2)全方位の国際化、(3)活力ある新たな研究体制の確立、(4)大学院変革・研究大学にふさわしい学部変革、(5)財務戦略の高度化、産学共創による収益の拡大方策、(6)体制強化計画の実施が継続されるガバナンス体制の構築――の6項目を明確化することを求めていた。
これを受け、東北大は各項目について(1)体制の確立や研究者育成・支援による研究力向上、災害科学ほか特定分野の強化、人文・社会科学を含む総合知の価値創造、臨床系教員の研究力強化、(2)卓越した研究者や優秀な留学生の確保、国際動向を分析した重点分野の産学共創、包括的国際化担当役員の選定、日英公用語化100%の実現、(3)卓越研究者の人事の整備、人材管理部門の創設、(4)大学院を一元管理する組織、国際的に活躍できる能力を養う学部教育を行う組織の設置、(5)企業の集積を加速する産学共創、仙台市街全体でのスタートアップ企業創出、大学の機能拡張や資金獲得を通じた財務基盤強化、事業財務担当役員の設置、(6)運営方針会議が過半数の学外委員を含み、委員が多様な専門性を持つこと――などを盛り込み、体制強化計画を改訂した。
有識者会議は今年2月と5月に東北大から聴取。審議の結果、「条件のいずれの事項も精査や具体化が図られ、卓越大の認定、体制強化計画の認可の水準を満たし得る」との結論をまとめ、今月14日に公表した。初年度である今年度の助成金は100億円程度。計画は3期25年間で、第1期(10年間)、2期(8年間)の期末に、支援を続けるかどうかの評価を行う。
ファンドは科学技術振興機構(JST)が2022年3月に運用を開始している。文科省は東北大を正式認定後、2回目の公募を今年度中に始める計画だ。
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