国立成育医療研究センター(NCCHD)は6月13日、食物アレルギーの発症予防のために、アトピー性皮膚炎の赤ちゃんに対してナッツ類を含むアレルゲン食品を0歳から離乳食として早期摂取できるかを評価するため、卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、クルミ、カシューナッツを生後6か月頃の離乳食初期から少量ずつ摂取することと、ピーナッツやナッツ類は、窒息や誤嚥をさけるために、そのものではなく市販のパウダーやペーストを利用して離乳食に混ぜるように指導した結果、実験に参加した34名の赤ちゃんが全員、2歳までには卵、牛乳、小麦の摂取が可能であり、ピーナッツやクルミも窒息や誤嚥を起こすことなく約8割の乳幼児が摂取可能であることが確認されたと発表した。

同成果は、NCCHD アレルギーセンター 行動機能評価支援室の山本貴和子室長(総合アレルギー科併任)、NCCHD アレルギーセンター 総合アレルギー科の原間大輔専門修練医らの共同研究チームによるもの。詳細は、「Nutrients」に掲載された。

  • 各アレルゲン食品の早期摂取成功率

    各アレルゲン食品の早期摂取成功率(出所:NCCHDプレスリリースPDF)

食物アレルギーは、一歩間違えると死につながることがある。近年では、ナッツ類のアレルギーが増加傾向にあり、アナフィラキシーなどの重篤な症状を来すリスクも高いという。同じ食物アレルギーでも、卵や牛乳は、離乳食の初期から少量ずつ摂取させることで、アレルギーの発症の予防につながることが、これまでの研究から報告されている。

海外では離乳食においてナッツ類やピーナッツをペーストにして与えることが一般的に行われていることから、離乳食のガイドでも早期摂取が推奨されているという。それに対して日本では、ピーナッツやナッツ類をそのままの状態で乳幼児期に摂取することは誤嚥や窒息のリスクにつながることから、5歳ごろまでは摂取を控えることが一般的とされている。そこで研究チームは今回、日本における早期からのピーナッツ、ナッツ類の摂取方法の適正化を推進するための研究を行うことにしたという。

2020年8月から2021年2月までにNCCHD アレルギーセンターに来院したアトピー性皮膚炎の乳児34名を対象に、卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、クルミ、カシューナッツを生後6か月ごろの離乳食初期から毎日の離乳食にパウダーまたは滑らかなペーストの形態で少量ずつ混ぜて摂取することが指導された。なお、粒が粗くなることで窒息や誤嚥を起こさないよう、市販の滑らかな製菓材料を使用するよう指導が行われた。摂取については、各家庭や子どもの状況に応じて任意で進める形式で、各摂取量は受診の度に確認がなされた。

  • 有害事象の発生数

    有害事象の発生数(出所:NCCHDプレスリリースPDF)

その結果2歳までに、卵は全員が摂取可能だったという。以前、同センターで明らかにした鶏卵早期摂取の有効性が浸透している結果と考えられるとした。そして今回の対象であるピーナッツは78.8%、クルミは81.3%が摂取可能だったが、カシューナッツは食習慣の影響や優先度の低さから41.4%とやや劣る結果だったとする。また、期間を通じて、ピーナッツやナッツ類で、誤嚥や窒息は発生せず、救急受診したケースもあったが、軽度だったことからアドレナリンの投与を必要としなかったという。

日本ではナッツ類の消費量が年々増加しており、食生活も大きく変化しているが、上述したように、誤嚥や窒息のリスクから離乳食のレシピにナッツ類が含まれていることはほとんどない。今回の結果から、ピーナッツやナッツ類も、形態を工夫することで卵や牛乳同様に、安全に早期摂取を行える可能性があるとした。研究チームは今後、管理栄養士や患者会と一緒にナッツ類を離乳食でも安全かつ簡単に摂取できるようにレシピ開発を進めていくとしている。

なお、今回の研究結果は、アレルギーの発症を防ぐ効果が示されたものではないと研究チームでは注意をうながしている。そのため湿疹やアトピー性皮膚炎の既往がある子どものいる保護者は、アレルギーの原因になりやすい食品の摂取について自己判断で開始せず、必ずアレルギー専門の医師の指導の下で行ってほしいとしている。