Celonisが存在感を増している。プロセスマイニングを進化させた“プロセスインテリジェンス”による提案を加速する一方、Symbioの買収により「現状の姿」と「あるべき姿」を比較した分析が可能になり、Celonisが提供する「価値創出」の幅が広がっている。

また、NECとの戦略的パートナーシップを通じて、新たにNECの生成AI「cotomi」と、プロセスインテリジェンスを連携する実証実験を開始したことを発表。日本の企業との連携を強化している。

このほど来日したCelonisの創業者の1人であり、Co-CEO(共同最高執行責任者)であるバスティアン・ノミナヘル氏に、Celonisの過去、現在、未来について話を聞いた。なお、取材にはCelonisの村瀬将思社長も同席した。

  • 左からノミナヘル氏、村瀬氏

    左からノミナヘル氏、村瀬氏

注目度が高まるプロセスマイニング

--ここ数年、プロセスマイニングへの関心が高まっていることを感じます。2011年にCelonisを設立して以降、いくつかの変遷を経ていますが、プロセスマイニングへの注目度はどう変化しているのでしょうか?

ノミナヘル氏(以下、敬称略):Celonisの最大の特徴は、アカデミックでの画期的な研究をもとに製品化し、社会課題の解決に結びつけている点です。この姿勢は、CelonisのDNAそのものです。Celonisは、私を含めた3人で創業しましたが、全員が独ミュンヘン工科大学で、プロセスマイニングの生みの親であるウィル・ファン・デル・アールスト教授に学びました。

  • Celonis 共同創業者兼共同CEOのバスティアン・ノミナヘル氏

    Celonis 共同創業者兼共同CEOのバスティアン・ノミナヘル氏

創業当初は、プロセスマイニングという新たなカテゴリーを創出するわけですから、製品を開発するだけでなく、それは何かということを、エバンジェリストとして訴求する活動が必要でした。創業当時に乗っていたクルマは、多くの距離を走りすぎたため、壊れてしまいましたよ(笑)。

まずは、アーリーアダプターと呼ばれる企業がプロセスマイニングのメリットを理解し、その成果に対する認知が広がることで、より多くの企業で加速度的に採用するようになりました。すでに、シーメンスやBMW、富士通といった企業が、プロセスマイニングを導入することで大きな成果をあげていますし、現在では1300社のお客さまに対して、拡張性があるソリューションを提供しており、お客様の価値創出に貢献しています。

2023年には、Gartner Magic Quadrantにおいて、プロセスマイニングプラットフォーム分野が創設されました。これは、プロセスマイニングが、1つのカテゴリーとして認知された出来事だといえます。このカテゴリーにおいて、Celonisは2年連続でリーダーのポジションに選ばれています。

Celonisの歴史を振り返ってみますと、プロセスマイニングをクラウドサービスとして提供したことで、より多くの企業が利用できる環境が整ったこと、「Celonis Execution Management System(Celonis EMS)」により可視化だけでなく、課題解決に向けた実行が可能になったこと、そして「Process Intelligence Graph(PIG)でプロセスインテリジェンスへと進化させたことで、Celonisに対する関心がますます高まっています。

Celonisはお客さまと密接に話し合いをしながら、ニーズを把握し、それを製品に反映しています。アカデミックでの研究成果と、お客さまの声を聞き、ビジネス上の課題を解決し、製品として提供するのがCelonisの手法であり、この姿勢はこれからも変わりません。

複数のプロセスに対応したオブジェクトセントリックプロセスマイニング(OCPM)も、アカデミアで研究した成果を、お客様の声をもとに製品化したものです。今回の来日では、約1週間をかけて、日本企業の経営トップなどと対話の機会を得ました。

日本企業がCelonisに高い関心を寄せ、しかもプロセスマイニングを経営戦略の1つにとらえる経営者が増え、意識が大きく変化していることがわかりました。プロセスマイニングは、労働力不足など、日本が抱える課題解決の一助にもなり、私たちは日本企業の可能性を拓くための支援をしていきたいと考えています。

Celonisにおけるプロセスマイニングの進化

--2023年11月に、ドイツで開催した年次イベント「Celosphere 2023」では、OCPMを実現するPIGを発表しました。これによって、プロセスマイニングは、どのように進化するのですか?

ノミナヘル:IDCの調査によると、プロセスマイニングの市場規模は、2022年には570億ドルでしたが、これがプロセスインテリジェンスへと進化することで、2025年の市場規模は940億ドルとなり、1.8倍に拡大することになります。Celonisが提供する価値が広がるともいえ、売り上げ、収益、顧客満足度、CO2排出量の削減といった点でもメリットを提供できます。

PIGは、データがどのような形で保存されているのか、どのような形で分析を行うのかという観点から見ても、新たなアプローチになります。言い方を変えれば、プロセスマイニングのバックボーンそのものが変わることになります。

従来のプロセスマイニングも、やり方としては悪いものではありませんでしたが、現実のプロセスは、より複雑であり、さまざまなものが絡み合っています。こうした課題を解決するのがOCPMであり、企業全体の複雑なプロセスをつなぎあわせて考えることができるようになります。

  • オブジェクトセントリックプロセスマイニングは、企業全体の複雑なプロセスをつなぎあわせて考えることができるという

    オブジェクトセントリックプロセスマイニングは、企業全体の複雑なプロセスをつなぎあわせて考えることができるという

OCPMでは、企業のプロセスを幅広く・強力にとらえることができます。SAPやOracle、ServiceNowからプロセスに関するデータを取得するとともに、Celonisが携わってきた数千のプロジェクトから得た知見と併せて、強力なデータアセットを構築します。そして、ここにAIを活用することで、複雑なプロセスにおいて発生する課題を発見して対策を推奨し、価値の創出が可能になります。

村瀬氏(以下、敬称略):たとえば、請求業務が遅れた理由は、請求業務のプロセスを把握するだけではすべてを理解できません。そもそも受注が遅れたところに原因があるとすれば、それを理解するには異なるプロセスを見ることが大切なのです。OCPMによって、プロセスを可視化し、課題を発見する精度を高めることができます。

  • Celonis日本法人 代表取締役社長の村瀬将思氏

    Celonis日本法人 代表取締役社長の村瀬将思氏

ノミナヘル:PIGの導入によって、企業へのインパクトは広範囲なものになります。これは、企業のITスタックにおける重要なギャップを埋めることにつながります。多くの企業は、SoR(System of Record)とデータプラットフォームを結び、そのうえで分析や自動化を行い、AIやクラウドアプリケーションを活用しています。

しかし、そこにはギャップがあり、すべてのプロセスを把握できないという課題が生まれています。CelonisがPIGによって提供しているのは、いわば“プロセスにおける共通言語”です。

PIGが適用可能な範囲が拡大することで、さまざまな機会が得られ、価値を実現することができ、最適化に貢献できます。また、企業がAIや機械学習を活用する際や、オーケストレーションや自動化、クラウドソリューションを効果的に展開する際にも、メリットを提供できます。

  • PIGの導入によって、企業へのインパクトは広範囲なものになる

    PIGの導入によって、企業へのインパクトは広範囲なものになる