SnowflakeがAI時代に向けて戦略を進化させている。新CEOのSridhar Ramaswamy氏は今後、どのようにSnowflakeの舵取りを行うのか。同社が6月3日から6日にかけて開催した年次イベント「Snowflake Summit 2024」で、Ramaswamy氏は製品担当プレジデント Benoit Dageville氏と共に記者の質問に答えたる形で、同社のAI戦略、CEOとしての課題などを明らかにした。

  • 左から、Snowflake CEO Sridhar Ramaswamy氏、製品担当プレジデント Benoit Dageville氏

SnowflakeのAIの戦略はどのようなものか?

Ramaswamy氏: Snowflakeは、AIベースのチャットボットを簡単に構築することで自社のデータを活用すること、既存のデータパイプラインを効率的なものにすることなどにフォーカスしている。

Dageville氏: (一般的にAIというと)モデルが注目されているが、モデルはビルディングブロックの一つに過ぎない。AIアプリがSnowflakeや顧客の環境の中で安全に動くというわれわれのビジョンにおいて、その重要性は低くなる。

SnowflakeはマネージドAI「Cortex」とサーバーレス機能を使って、モデルを持つビルディングを構築する。これらにより、アプリの構築が簡単になることをはじめ、さまざまなことが可能になるだろう。サービスはLLMだけではない。

大切なのはデータだ。中核のデータ基盤は一つとして同じものはない。LLMは自社のデータでトレーニングされたものではないため、データに接続しなければならない。これをわれわれは提供する。

企業がAIを進めるにあたってガバナンスが懸念されているが、どう考えているか?

Dageville氏: データをLLMに持っていくのではなく、ガバナンスが効いた形でLLMが環境の中で動くべきだと考えている。

SnowflakeはiPhoneに例えることができる。アプリをインストールして実行することでiPhoneが魅力的なデバイスになるように、Snowflakeというデータクラウドの上でアプリが構築され、実行されることで真価を発揮する。

ここでのポイントは、企業のデータにロジックが近づくこと。ロジックにデータが近づくのではない。これにより、組織は自分のデータを完全に管理しガバナンスを効かせられる。それでも、アクセス権のない従業員がモデルを勝手に構築しないようにするなどのガバナンスの課題は残る。

iPhoneのように1クリックでダウンロードして使えるようにするには、セキュリティとガバナンスは不可避であり、われわれはその実現に向けて取り組んでいる。例えば、「Cortex Search」では属性を追加することで、ユーザーがデータのサブセットのみを検索できるといったことが可能になる。

クラウドはオンプレよりコスト高という見方に対して、どう考えているか?

Ramaswamy氏: あらゆる技術において、誤用の可能性がある。オンプレの時代にも巨額の投資はあった。間違ったハコ(ハードウェア)を買ってしまったという話は幾度も耳にした。

Snowflakeのアプローチについて話すと、われわれにはバリューエンジニアリングチームがあり、顧客にどのような価値を提供しているかに対し細心の注意を払っている。Snowflakeを使うことでコンピュート環境全体をどのように最適化できているのかもみている。もし、投資の額が価値を上回るのであれば、Snowflakeの立場は危うくなる。

製品側では性能の改善を常に図っている。SnowflakeはSnowflake Performance Indexという性能の指標を持っており、この2年で27%向上している。性能の改善は、コスト削減につながる。

なお、Snowflakeに大型の投資をしている優良顧客は、内部のガバナンスプロセスを持っている。予算、どのようなビジネス上の問題を解決するのか、コストなどを管理している。

Dageville氏: クラウドはオンプレとはコストの考え方が全く異なるため、Snowflakeに移行する顧客は財務ガバナンスを持つ必要がある。ある程度の学習が必要だが、(クラウドに移行しなければ)新しい時代に生き残ることは難しくなるだろう。

クラウドではオンプレではできないような柔軟性が得られるため、様々なユースケースを試すことができる。それにより、ビジネスが加速するだろう。

「Snowflake Horizon」はどのような役割を果たすのか?

Dageville氏: Horizonのビジョンは、カタログを活用し、組織内のクロスアカウント、クロスクラウドに対応しながら、カタログにあるデータ製品の発見性を向上させることだ。

Snowflakeでは、すべての資産に対して単一のカタログしか存在しないという思想を持っている。これは重要なポイントだ。

Snowpark Container Servicesも同様で、コンテナ化したサービスを構築したら、そのカタログにエントリされる。そのサービスへのアクセス権を、テーブルへのアクセス権のように付与することができる。

Horizonは単一のカタログの上に細かくレベル分けしたアクセス権を載せ、サービスを発見しやすくする。組織のほとんどが複数のクラウドを利用していることを理解しており、それを横断するような機能を作ることにフォーカスしている。

就任から4カ月、Snowflakeの現在をどのように見ているか?

Ramaswamy氏: 多数の顧客に会うのに多くの時間を割いた。そして感じたことは2つある。

それは、顧客はSnowflakeの製品と会社そのものが好きだということ、われわれにもっと取り組みを進めてほしいと思っていることだ。顧客が関心を持っている分野は、コア(データ基盤)の技術革新、そしてAIの大きく2つだ。

Snowflakeは共同創業者の思想により、使いやすさ、統一された単一の製品という特徴を持つ。これを、データ専用に設計されたクラウドプラットフォームへと進化させており、今回のSummitで発表した「Iceberg Tables」のGA、Icebergのカタログ「Polaris Catalog」などはその一環となる。

AIではRAGアプリケーションのようなものを構築する「Cortex Analyst」など、AIを容易にする取り組みを進めており、コラボレーション、ガバナンスなども拡充している。

このように中核のデータに加え、コラボレーション、AI、アプリなどで顧客に最新の技術を届ける。

CEOとして短期の優先課題は?

Ramaswamy氏: 1つ目の課題として、先に述べたよう世界中の顧客に会うことを優先している。

2つ目の課題は製品計画を実行に移していくこと。データとAIはまだ早期段階にあり、ここでわれわれは迅速に動く。AIチームをはじめ各チームと、高品質で統合された製品を迅速に市場に提供していくためにどうするかについて話をしている。今回のSummitでは多数の機能を発表しており、成果を感じていただけるだろう。

3つ目がオペレーションだ。Snowflakeは少し前に事業部の報酬制度を変更し、新規顧客の獲得と既存顧客へ提供価値加速を分けた。組織のオペレーションが変わることになり、新しいプロセスとそれを測定する方法が変わる。これについて教育と浸透にも取り組む。