【影響尾を引く紅麹問題】新規獲得効率は悪化したまま 主力を化粧品に切り替えて脱するケースも

小林製薬の紅麹問題発生から2カ月以上が経過したが、機能性表示食品の通販・EC市場では、広告経由の新規顧客の獲得効率の悪化傾向が、依然として継続しているようだ。ある大手健康食品通販会社では、5月末時点の機能性表示食品の新規顧客の獲得効率が、3月の小林製薬の紅麹問題の発表以前と比較して、15%程度悪化しており、まだ戻っていない状況だという。一方、九州のある大手健康食品通販企業では、紅麹問題以降、広告出稿の対象を機能性表示食品から化粧品に切り替えたという。その結果、影響はほとんどなくなったとしている。

<新商品のPRも抑え>

大手健康食品通販企業A社では、紅麹問題以降、「新規の獲得効率悪化」と、「既存の定期購入契約の解約の増加」という二つの影響が生じたという。5月末時点では、機能性表示食品であることを理由に、定期購入契約を解約する顧客はほとんどいなくなったというが、新規顧客の獲得効率については3月以前の水準に戻らない状態が続いているという。

 

「これからミドル世代向けの大型の機能性表示食品を発売する予定だが、風評被害を考えて、プロモーションは控えめに行っている」(広報)としている。

 

別の中堅健康食品EC企業B社でも、ウェブ広告経由の新規顧客の獲得効率が、3月以前の状態に戻らない状況が続いているという。B社の社内には「新規が取れないのは紅麹が問題とは断言できない」(B社取締役)という声もあるが、B社の社長は「おそらく紅麹が問題だ」と見ている。

<「機能性」が悪化要因か>

紅麹問題による、新規顧客の獲得効率の悪化を回避できた事例もある。

 

九州の大手化粧品・健康食品通販企業C社では、4月以降、機能性表示食品に投じる予定だった広告予算を、化粧品に切り替えた。その結果、会社全体の新規顧客の獲得効率は、3月以前の水準に戻ったという。

 

大手化粧品通販会社D社でも、同様の現象が起きているようだ。D社では、4月初旬の段階で、機能性表示食品の新規の獲得効率が悪化。定期の解約率にも増加が見られたという。D社では、機能性表示食品ではない別の商品に広告予算を振り分けたところ、影響はほとんどなくなったと話す。大手健康食品通販会社E社も、機能性表示食品の通販において、ほぼ同様のことを経験したとしている。

 

一方で、機能性表示食品を全く扱っていない、大手健康食品通販会社F社では、3月以前も4月以降も、新規顧客の獲得効率や定期顧客の獲得効率は、ほとんど変わっていないと話す。

 

こうしたことから、消費者が購入を慎重に考えているのは、「機能性表示食品」を訴求する商品ではないかと考えられる。

 

前述のB社の社長は、「これまでも健康食品の業界では数年おきにさまざまな事件が起きてきたが、今回はその中でも最悪だ。従来であれば、マスメディアの報道が沈静化してから3カ月程度で顧客も戻ってくることが多い。年内には回復することを期待したい」と話している。