LINE WORKS社は5月28日、年次ビジネスカンファレンス「LINE WORKS DAY 24」を開催した。「&UPLIFT(向上)」をテーマに掲げた今回は、同社の事業戦略や法人向けビジネスチャットツール「LINE WORKS」の新機能が発表されたKEYNOTEのほか、LINE WORKSの導入企業による事例講演などが実施された。

その中から本稿では「&UPLIFT 人とデジタルの『つながり』でビジネスをさらなる高みへ」と題されたKEYNOTEの内容を取り上げる。

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ユーザー増に伴い、使い方に変化も

KEYNOTEに登壇したLINE WORKS社 代表取締役社長の増田隆一氏は冒頭、「LINE WORKSは『使いやすさ』『現場に最適化』『モバイル中心』にこだわった法人向けグループウエアである」と説明した。現在同ツールの導入社数は約46万社、利用者数は500万人以上に及び、「ユーザー数が増えたことで、社内やチーム内のコミュニケーションツールという位置付けから使われ方が少し変わってきている」という。

  • LINE WORKS社 代表取締役社長の増田隆一氏

主にBtoBの分野では、LINE WORKSを社外とのコミュニケーションツールとして利用する企業が増えている。現在、LINE WORKSの外部接続数は約130万人で、「電話、メール、ファックスでのやり取りがLINE WORKS上のやり取りに置き換わってきており、ビジネススピードが上がることを体感してもらえている」と同氏は話す。

一方、BtoCの分野では顧客が利用しているLINEとLINE WORKSを接続する企業が不動産業や小売業などで増加しているという。LINEとLINE WORKSの接続数は約2700万人で、これはLINEのアクティブユーザーの約30%に相当する。

同社が今注力しているのが、LINE WORKSと連携するソリューションの強化だ。現在は安否確認、勤怠管理、AIチャットBotなど約170のソリューションと連携。同氏は「(LINE WORKSは)人同士をつなげるだけでなく、システムともつながるようになった」と語った。

マルチプロダクトの会社に進化

続いて増田氏は、2023年4月にLINE社のAI事業を組織統合したことと、2024年1月にワークスモバイルジャパンからLINE WORKS社へ社名変更したことを挙げ、「LINE WORKS社はチャットツールだけの会社ではなく、マルチプロダクトの会社になった」と明言した。LINE WORKS以外の具体的なプロダクトとしては現在、文字を認識する「LINE WORKS OCR」、音声を認識した上でAIが返答する「LINE WORKS AiCall」、映像を認識する「LINE WORKS Vision」の3つがある。

また、2024年5月にはLINE WORKSのアイコンが変更された。「W」をモチーフにしたアイコンでは従来、濃淡の異なる緑色を使用していたが、新たなアイコンでは緑、紫、青の3色が使われている。

「緑の部分はCONNECT、既存のコミュニケーションとコラボレーションサービスを示しています。これに加え、紫の部分はBOOST、新製品やAI製品をイメージしました。それをつなぐのが、青い部分のTRUST、安心・安全です」(増田氏)

3つの軸で事業展開を加速

CONNECT、BOOST、TRUSTには、それぞれを推進するための戦略が用意されている。講演では、各戦略の取り組みが順に説明された。

CONNECT – より高度な機能を提供するために

増田氏曰く、CONNECTについては、これまで1つのアプリケーションで全てを賄うことを重視していた方針を転換したという。具体的には、生成AIなどを活用したより高度な機能を提供するため、コンポーネント化を進めているそうだ。同氏は「今後、(LINE WORKSは)複数のアプリケーションになるかもしれない」と可能性を語った上で、「LINE WORKSが分かれてもシームレスに使える環境を用意するため、統合ログイン管理を提供する予定だ」と話した。

BOOST – AIの本格活用に向けた取り組み

増田氏が「ここが今日のメイン」だというBOOSTの戦略については同氏に代わり、LINE WORKS社 事業企画本部 本部長の大竹哲史氏が説明を行った。

  • LINE WORKS社 事業企画本部 本部長の大竹哲史氏

LINE WORKS社では現在、「WORKS AI Project」を進めている。多くの企業で本格的な生成AI活用が始まっているが、社内文書を活用するためにはデータの前処理が必要だったり、セキュリティ面に不安があったりと、課題も多い。そこで「あなたの会社のことを理解してくれる存在になるものをLINE WORKSの中に入れていきたい」という意図から、ノーコードで自社の情報を活用した生成AIが利用できるよう、開発を進めているそうだ。

さらに、LINE WORKS AiCallで培った音声認識・合成の技術を活かし、顧客の要件に合ったオーダーメイド型のサービスを提供できるよう、取り組みを進めている。ここで大竹氏は聴講者に「これだけデジタル化が進んでいるのに、なぜ皆、電話をしてくるのか」と問いかけた。

「電話しか手段がない、Webでは解決できなかったなどの理由はもちろんですが、そもそも簡単、最短を求めるときには、電話を選ぶのではありませんか」(大竹氏)

同氏は電話には音声ならではの優位性があると話す。それが即時性、情報伝達量の多さ、双方向性、同時進行性の4つだ。そこでLINE WORKS社はこの優位性を活かした新製品として、スマホ版トランシーバーの開発を進めているという。これは話者が発した音声がAIにより自動的に書き起こされる一方、文字入力をした場合は、入力した文章が音声として再生されるものだ。

このトランシーバーが解決し得る例として大竹氏が挙げたのは、小売業のLINE WORKSユーザーが抱えている課題である。小売業の場合、本社と各店舗の店長はLINE WORKSによる文字ベースでのコミュニケーションが主流だ。一方、店舗スタッフと顧客は声、つまり音声でコミュニケーションをとることが多い。本社と店舗スタッフの間をつなぐ店長は、文字と音声という2つのコミュニケーションを同時並行で使い分けることになる。そこにスマホ版トランシーバーがあれば、文字でも音声でもコミュニケーションができ、かつ記録にも残せるというわけだ。

「スマホ版トランシーバーによって、それぞれに適したかたちでのコミュニケーションを提供したいと考えています。リリースは2025年初頭の予定です」(大竹氏)

TRUST – CONNECTとBOOSTを推進する上で不可欠

最後に、再び登壇した増田氏からTRUSTの戦略が話された。「500万人を超える顧客のデータを預かる存在であるという責任を感じている」と語る同氏は、LINE WORKS社が取り組むセキュリティ対策を紹介した上で、公式ホームページに「LINE WORKS Privacy Center」を公開していること、その中のコンテンツに「LINE WORKS セキュリティホワイトペーパー」が追加されたことを説明。「こういった取り組みを通じて、透明性を上げていきたい」と続けた。

「CONNECTとBOOSTのどちらにも必要なのがTRUSTです。これからも(LINE WORKS社の製品を)安心してお使いいただけるよう、取り組みを進めていくことを改めて、宣言します」(増田氏)

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