パナソニック 空質空調社は、暑熱対策用空調ノズルの「ジェットノズル」に関する説明を行った。2024年度から海外への展開を開始し、販売台数を前年比4.5倍にまで一気に引き上げる計画だ。

  • 暑熱対策用空調ノズル「ジェットノズル」

    暑熱対策用空調ノズル「ジェットノズル」

ジェットノズルは、既設の硬質フレキホースや、据え置きスポットクーラーの先端に取り付けるだけで、冷却効果を高めるアタッチメント型スポット空調関連製品。施工工事が不要であり、簡単に暑熱対策を可能にできるという特徴を持つ。アタッチメント型の製品は業界初となり、現時点では競合製品はないという。2023年5月の発売以来、これまでに920台の出荷実績を持っている。

パナソニック 空質空調社 設備ソリューションズ事業部 環境エンジニアリング推進部設計開発課の川端真彰係長は、「地球温暖化による気温上昇により、熱中症患者数が増加するなど、工場作業者の労働環境の改善に対するニーズが高まっている。労働力の確保や働き方改革の観点からも、労働環境の改善は急務となっている。だが、現場では、追加費用をかけたくないといった声や、大規模な工事のために生産ラインを止めたくないというニーズがある。これからの課題に対して、安価で、手軽な暑熱対策が可能になるスポット空調が適している」とする。

  • ターゲットは、スポット空調を活用している工場の現場などを想定

    ターゲットは、スポット空調を活用している工場の現場などを想定

スポット空調は、工場のような大空間において活用されている仕組みとは異なり、導入規模が小さく、導入および運用コストを抑えることができる。

だが、空間全体は暑くなるという傾向があるのに加えて、現在のスポット空調では、使用者に風が当たる時点では風がぬるくなってしまったり、風速が遅くなり、風のあたり方が弱くなってしまったりという気流特性上の課題がある。

「噴出される風と、周りの空気の風速差が原因となり、風がぬるい、風が弱いという現象が起こってしまう。これは、噴き出した冷たい風が、周りの暑い空気を誘引してしまいぬるい風になってしまうこと、発生する空気抵抗によって、風速が遅くなることによって発生する。当社のジェットノズルは、特殊な多重構造により、中心から出る空気を、周りから出る空気で包み込むように保護することで、周辺の暖気の誘引を抑制し、吹き出した冷たい空気を、冷たいまま使用者に運ぶことができる。また、空気抵抗を減らすことができるため、速い風速を維持でき、利用環境が暑ければ暑いほど、効果を発揮する」という。

  • スポット空調の課題とジェットノズルの原理

    スポット空調の課題とジェットノズルの原理

ノズル本体の角度や長さ、断面積などに工夫を凝らした特殊な多重構造機構を採用しており、吹き出し風速の分布を適正化でき、冷気と周辺空気との風速差を小さくし、周辺の暖気誘引の抑制、空気抵抗による風速低下低減を実現しているという。

  • ジェットノズルの3つの特長

    ジェットノズルの3つの特長

同社によると、ジェットノズルを取り付けるだけで、スポット空調の体感温度を最大2.9℃低減することができるという。

また、体感温度を同等とした場合には、最大21.2%の省エネに貢献できることも訴求する。

「体感温度が下がるため、空調機の設定温度を上げることができ、それによって、省エネ化が推進できる。CO2の削減にも貢献でき、ジェットノズル1台あたりで年間最大約200kgの削減が可能になる」とした。

さらに、ほとんどのスポット空調の先端部分に取り付けることができ、すぐに利用できるため、工事不要で、手軽に暑熱対策ができる点も特徴だ。

「暑熱対策では、能力の大きい空調機器の導入や増設、建屋の断熱性を高めるなど、様々な方法があるが、それらの多くが工事が必要で、大規模な改修が必要になる場合もある。また、空間全体を空調すると、大規模な空調設備と、膨大なエネルギーが必要になるという課題もある。ジェットノズルでは、部分空調による暑熱対策を加速でき、施工工事の必要がなく、簡単に取り付けることができるため、工事に伴う費用面や、導入時における工場設備の稼働停止などの心配はない」という。

  • 実際に利用している様子

    実際に利用している様子

本体価格はオープンプライスだが、eコマースサイトでは2万円強で販売されている。

今後は、開閉機構への対応を図り、吹き出しのON/OFFの切り替えができるように改良し、2025年度からの販売を開始するほか、現在のφ125mm、φ150mmの口径に加えて、φ200mmの口径を持った製品を追加でラインアップする予定だ。

  • ジェットノズルの取り付けの様子

    ジェットノズルの取り付けの様子

「φ125mm、φ150mmで、国内で利用されているスポット空調機にほとんどに取り付けることができるが、φ200mmの口径にも対応してほしいという現場からのニーズに対応していく」という。

発売以来、約1年間で当初計画の1.8倍となる約920台を販売してきたが、その多くが工場現場での導入だったという。今後は、自動車整備場や飲食店の厨房、体育館などの暑熱対策が必要な場所への提案を加速するという。

また、新たに海外販売を開始し、東南アジアなど、年間を通じて暑い地域での販売活動を強化する。「日本では季節商品としての提案になるが、東南アジアなどの暑い地域では、年間を通じて販売ができる」としている。

同社では、海外展開を開始することで、前年比450%となる4000台の販売を目指す考えだ。

  • 国内のみならず海外展開も進めることで2024年度に4000個の販売を目指す

    国内のみならず海外展開も進めることで2024年度に4000個の販売を目指す