住友商事がマレーシアでクリニック 総合商社の病院参入相次ぐ

三井物産や双日、豊田通商もアジアの病院運営に参画

 住友商事(上野真吾社長)が、マレーシア最大のクリニック事業者「CCHS」へ追加出資。成長著しい東南アジアの民間医療・クリニック事業に本格参入することを決めた。

 CCHSはマレーシアで104施設のクリニックを運営する民間医療グループ。年間延べ約200万人の患者数を有しており、地域に根差したプライマリケアサービス(地域の保健医療機能)を提供している。

 近年、マレーシアでは、高齢化の進行や生活習慣病が増加しており、高まる医療需要に対して、医療サービスの質の向上や供給が追いついていない。

 こうした状況下、マレーシア政府は地域のクリニックが重要な機能を発揮することを推奨しており、国や医療機関が一体となって、未病・予防への取り組みを加速することが期待されている。

 住商は2020年からCCHSに出資しており、当時18施設だったクリニック数は24年3月時点で104施設まで拡大。マレーシアで最大級の民間医療クリニックとなった。今後は26年までに300施設まで拡大することを目指しており、「他国へのクリニック展開やヘルスケア事業の拡大を目指す」(同社)。

 近年は、株式会社による病院経営が厳しく規制されている日本と違って、アジアの病院運営ビジネスに日本の大手商社が相次ぎ参画している。

 代表的なのは、2011年にアジア最大手の民間病院グループ「IHHヘルスケア」に約900億円を出資した三井物産。19年には約2300億円を追加出資している。

 また、双日もトルコ最大規模の病院運営に参画。豊田通商もセコムと共同で、インドで病院の経営に参画している。

 商社各社が病院経営に相次ぎ参画するのは、景気に左右されにくいことや各国で増大する医療需要を取り込むのが狙い。

 各社とも資源価格の高騰で業績は好調だが、資源ビジネスは業績のボラティリティが激しい。今後も非資源ビジネスの強化によって安定した経営を図りながら、商社の病院経営への参画は続きそうだ。

【住友商事】新社長に副社長の上野真吾氏が昇格へ