Google Cloudは4月9日~11日、米ラスベガスで開催した年次イベント「Google Cloud Next '24」で、「Google Vids」を発表した。AIを使って簡単に動画を作成できるアプリで、Docs、Sheetsなどに加わる新しいコンポーネントだ。
AI機能の強化を継続する「Google Workspace」
「Google Workspaceのユーザー数は30億人、有料顧客は1000万人に達している--」。Google Workspace担当ゼネラルマネージャーのAparna Pappu氏はいう。
Google Workspaceはクラウド生まれの生産性スイートとして、「Microsoft Office」の牙城を崩すべく改良を続けている。Pappu氏によると、Google Workspaceを選ぶ理由は「AIとセキュリティ」。特に最近の大きなフォーカスであるAIは、2023年だけで100万人、数千社が何らかのAI機能を使ったという。
事例として、米カリフォルニアの小売業Sports Basementが、Gmailを利用して顧客からの質問の回答を自動化・効率化し、メッセージの下書き作成に費やす時間を30~35%削減できたこと、NBA所属のバスケットボールチームGolden State Worriorsが3年以上前にWorkspaceを導入し、その後はAIアシスタントの「Gemini for Workspace」の活用にも乗り出し、効率性、生産性、創造性を高めていることなどを紹介した。
Pappu氏によると、Gemini for Workspaceの「Help me Write」をDocsやGmailで利用する企業の70%がGeminiの提案を使用しているとのことだ。また、Slidesでは「Help me visualize」を使って画像を生成したユーザーの75%以上が、スライドにその画像を挿入して使っているという。
Google Nextでの最大の発表は「Google Vids」だ。AIを利用した動画作成ツールで、プロンプトを使うことで動画編集の知識がないビジネスユーザーでも動画の編集ができる。
自分の声やGeminiが提供する音声を使ったナレーションや音楽を入れたり、ストックコンテンツライブラリや自社の資産を使って映像を作成したりできる。また、Workspaceのアプリであるため、チームのコラボレーションも可能だ。
「メールをやりとりすることなく、同時にコンテンツにアクセスして共同作業ができる」とPappu氏。
「世界は動画ベースのコミュニケーションに移行している」
プレス向けにGoogle Vidsについて説明したGoogle Workspace Collaboration プロダクト担当バイスプレジデントのKristina Behr氏は、Google Vidsを使った動画の生成として大きく2つが考えられるという。
1つ目はこれまでのようにテンプレート、ストックライブラリなどを使って作成、2つ目はテキストから画像、テキストから音声などのAIの“ビルディングブロック”を使っての作成だ。
用途もさまざまある。アルファテスターは、営業が提案動画の作成、現状の報告など、やりとりが少ないミーティングの代用などに使っていたという。エンジニアリング部門がチームに対して進捗や目標をアップデートする動画を作成したり、マネージャーが製品のビジョンや方向性について説明する動画を作った例もあるという。
営業が提案書の代わりにVidsで動画を作成した例でBehr氏は「メールやスライドを送る場合と比較すると、エンゲージが高まり、パーソナライズされていると感じてもらえるようだ」と述べている。
また、同氏は「世界は動画ベースのコミュニケーションに移行している」と話しており、コンシューマ分野でのトレンドが、ビジネスに影響している例と言える。特に、Z世代を中心に、デジタルネイティブは複雑な情報を表現する方法としての動画に慣れ親しんでおり、職場でも同じような体験を求めていると続ける。
Vidsはマーケティング領域でもニーズはある
日本の記者向けに発表内容を説明したGoogle Asia PacificでGoogle Workspaceカスタマーエンジニアリング アジア太平洋地域統括本部長の佐藤芳樹氏は、マーケティング領域でのニーズもあると見る。
同氏は「Google Vidsを使って、マーケティング担当は自分の感覚で動画を作成できる」と佐藤氏、マニュアル、製造業がプロトタイプのイメージビデオを作るようなことも考えられると述べた。
Google Vidsは6月より順次提供する予定だ。このほか、新しいアドオンとして、AIを活用してデータの自動分類や保護ができる「AI Security add-on」、議事録作成や字幕翻訳などの機能を持つ「AI Meeting&Messaging add-on」も発表した。モバイル版Gmailで、Help me writeのプロンプトに音声を使って入力できるようになることなども発表している。