SUSEは4月4日、グローバルおよび国内のビジネス事業戦略説明会を開催した。グローバルの戦略はSUSE 最高経営責任者 Dirk-Peter van Leeuwen氏が、また、国内の戦略はSUSEソフトウエアソリューションズジャパン カントリーマネージャー 村上督氏が説明した。

オープンソースのEnterprise Linuxディストリビューションで選択肢を提供

Leeuwen氏は同社に入社する前は、Red Hatに18年間所属しており、2010年から2021年まではRed Hatのアジア太平洋地域および日本のゼネラルマネージャーを務めていた。

  • グローバルの戦略はSUSE 最高経営責任者 Dirk-Peter van Leeuwen氏

初めに、Leeuwen氏は同社の歴史を紹介した。同社は1992年に創立して以来、SUSE Linux、Open SUSE、Xen、KVMなどをリリースしてきた。現在はコンテナ管理製品、ゼロトラスト・コンテナ・セキュリティ・プラットフォーム、エッジ製品も提供している。

Leeuwen氏は、「これまで、オーナーがたくさん変わり、これが原因で経営の安定という点で課題があったとはいえなくもない。しかし、2023年に株式非公開企業となったので 安定した事業を展開できる」と述べた。

同社の歴史の中で大事なことの一つとして、2023年のOpenELAが紹介された。OpenELAはオープンソースのEnterprise Linuxディストリビューション開発者の業界団体で、CIQ、Oracle、SUSEによって立ち上げられた。

Leeuwen氏は「CentOSのサポート終了が発表された際、多くのユーザーが心配したと思う。しかし、OpenELAがRed Hat Enterprise Linuxをフォークすることを発表したことで、ユーザーの心配の種を消せたと考えている」と語った。

  • SUSEの歴史

グローバル戦略:Linux、クラウドネイティブ、AIに注力

同社のミッションとして、「Linuxを作り、さまざまなLinuxを管理できるようにする。同様に、Kubernetesを作り、さまざまなKubernetesを管理できるようにする。ゼロトラストセキュリティをデフォルトにする」を掲げている。

Leeuwen氏は「われわれはさまざまなLinux、Kubernetesを管理できるのが強みの一つ。多くの顧客がいろんなLinuxやKubernetesを使っているが、多くのベンダーは自社のプロダクトのみサポートしている」と、同社のアドバンテージを強調した。

次に、2024年にフォーカスする領域として、「Linux」「クラウドネイティブ」「AI」について説明した。

Linux

Leeuwen氏は、「BroadcomによるVMware買収が発表された時、VMware製品を使っている企業は自社のシステムがどうなるか、これまでの投資がどうなるか、大きな危惧を持ったと考えている。これは、IBMがレッドハットを買収した時に似ている。人々はこうした経験の中で、代替のプラットフォームを模索するが、SUSEはユニークなポジションにあると自負している」と述べた。

システムを変えることなく、ベンダーを変更できるのがSUSEのオープンソースのLinuxモデルであり、同社はそのためのプログラムを準備しているという。

Leeuwen氏は「携帯電話番号を変更することなくデバイスを経農できるように、われわれの移行プログラムは他社の製品がEOLになっても、円滑な事業活動を実現する。実際、当社の売り上げは劇的に伸びている」と語った。

クラウドネイティブ

また、同社はKubernetesの管理,、エッジ、セキュリティにおいて、 クラウドネイティブにおける強みを生かすことを目指す。

Leeuwen氏は「われわれはKubernetes管理製品においてクラウドネイティブのパワーを生かせるし、エッジ環境においてもこの能力が高く評価されている。特にハードウェアベンダー、クラウドサービスプロバイダーに評価されている」と話した。

AI

Leeuwen氏は、「エッジが活用されるようになると、データがたくさん生まれ、AIが重要になる」と述べ、同社のAIのポイントを3点紹介した。昨年のSUSEconでAIについてデモをして発表したが、今年の6月に具体的な情報を出すという。

1つ目は、HPCを組み込んでいることだ。「AIワークロードを扱うなら、SUSEのプラットフォームにすべきという評価に変わってきている」という。

2つ目は「管理が容易になること」で、3つ目は「AIの世界で予測型サービスを提供している」ことだ。

国内戦略:パートナーエコシステム構築に注力

続いて、SUSEソフトウエアソリューションズジャパン カントリーマネージャー 村上督氏が、国内における事業戦略について説明した。

  • SUSEソフトウエアソリューションズジャパン カントリーマネージャー 村上督氏

村上氏は、同社が日本においてできることについて、次のように語った。

「日本企業はデジタルトランスフォーメーションを通じて生産性を向上し、再び成長に向かわなければならないという課題を抱えている。そうした中、エンジニアが数十万人不足するといわれており、また、日本企業はデジタル競争力が世界第32位という状況にある。われわれは統合されたソリューションを持っており、日本企業に対し、自動化の支援ができる」

また、国内では顧客にソリューションを販売することと同じくらい、パートナーとの連携が重要だとして、パートナーエコシステムの構築に注力するという。

村上氏は「日本全国カバーするには、パートナーに展開してもらう必要がある。それには、われわれのソリューションの市場がパートナーにとって魅力的である必要があり、その実現に向けて、ブランディングを含めた取り組みを行っていく」と述べた。

フォーカスする業界としては、「製造業」「リテール」「テレコム」「金融」が挙げられた。

「製造業ではITとOTが一体となって提供されているが、ITが入ってくるとリスクも生じる。コンテナの展開も始まっている。リテールはAIをベースとしたエッジの世界が繰り広げられており、いろいろなイノベーションが起こっている。金融は勘定系と市場系を分ける必要があるが、ワークロードをクラウドに展開しており、ここに対しいろいろな提案ができる」(村上氏)