明治は3月14日、尿酸値が高い高尿酸血症の状態で生じる「尿酸塩結晶」が血管に沈着すると、異物に反応する白血球の一種の「好中球」がその沈着部分に集まるように促され、血管の炎症反応を引き起こす可能性が示唆されたことを発表した。

さらに、血管の創傷治癒能力の低下を引き起こし、それが血管組織での炎症を引き起こしたり悪化させたりすることに関与している可能性が示唆されたことも併せて発表された。

同成果は、明治と、鳥取大学 医学部 ゲノム再生医学講座再生医療学分野の經遠智一助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、2月29日から3月1日に開催された「第57回 日本痛風・尿酸核酸学会総会」にて発表された。

  • 今回の研究の概要

    今回の研究の概要(出所:明治Webサイト)

足の親指の付け根辺りの激痛で歩行もままならなくなる「通風」は、血中の尿酸値が高くなることで生じる。その値が7mg/dL(=70μg/mL)を超えた状態は「高尿酸血症」と呼ばれ、この状態が持続すると、血中に溶けきれなかった尿酸が結晶化してしまい、関節組織に沈着すると痛風の原因となる。

また近年になって、尿酸塩結晶が血管にも沈着することが明らかになったため、関節以外での尿酸塩結晶の影響が懸念されている。同社はこれまでヒト血管内皮細胞に対し、尿酸塩結晶を125μg/mLの濃度で添加させると、炎症などに関連したケモカイン遺伝子発現が上昇することを発見してきた。そこで今回の研究では、高尿酸血症によって生じる尿酸塩結晶が血管の細胞に及ぼす影響について詳しく評価することにしたという。

ヒト血管内皮細胞に尿酸塩結晶(125μg/mL)を添加して3日後に生細胞が分取され、遺伝子発現の網羅的な解析が行われた。その結果、非添加群に比べて、細胞が炎症部位などの目的の場所に移動して炎症をさらに増悪させることが示唆されている「細胞遊走」の関連遺伝子群の発現量が増加し、反対に細胞増殖に関わる遺伝子群の発現量が減少していることがわかったとする。

  • 好中球細胞遊走試験結果

    好中球細胞遊走試験結果(出所:明治Webサイト)

それらを踏まえて、まず複数の実験を行うことにしたという。まず実施されたのが、ヒト血管内皮細胞に尿酸塩結晶(125μg/mL)を添加した細胞上清を、ヒト末梢血由来「好中球」に添加する細胞遊走試験だ。好中球は、主に体内に入り込んだ異物を取り込んで排除するという免疫機能において重要な役割を担う白血球の仲間である。すると、遊走する好中球の細胞数が増加したという。

次に、ヒト血管内皮細胞に尿酸塩結晶(125μg/mL)を添加し、1日後の細胞数がカウントされると、細胞増殖が抑制されることが突き止められた。

  • 尿酸塩結晶添加1日後の血管内皮細胞増殖数比

    尿酸塩結晶添加1日後の血管内皮細胞増殖数比(出所:明治Webサイト)

さらに、一層の内皮細胞シートに傷をつけた(創傷)状態で尿酸塩結晶(125μg/mL)を添加し、創傷治癒能力についての評価が行われ、創傷部分(スクラッチ)の回復も抑制されることが明らかにされた。

  • 創傷治癒試験結果

    創傷治癒試験結果(出所:明治Webサイト)

以上のことから、高尿酸血症によって尿酸塩結晶が血管組織に沈着すると、細胞遊走が引き起こされること、および細胞増殖能が低下することで、血管の細胞に直接的な影響をもたらし得ることがわかり、創傷治癒能力が低下している可能性が示唆された。

今回、尿酸塩結晶の血管への影響について、細胞評価においても遺伝子発現量変化と一致する結果が確認された。つまり、ヒトの体内において、高尿酸血症によって生じた尿酸塩結晶が細胞の傷害を介して動脈硬化のリスク因子となり得ることがより強く示唆されたとする。

尿酸値が高い状態で生存していた血管細胞は、好中球などの免疫細胞を呼び寄せることで、傷ついた血管の治癒能力の低下を引き起こし、血管組織の炎症反応や炎症の増悪に関与している可能性が示唆された。

高尿酸血症がもたらすヒトへの影響は痛風だけにとどまらず、今回の研究で着目された動脈硬化や、メタボリックシンドローム、心臓病、腎臓病、尿路結石などのさまざまな疾患にも及ぶと報告されている。つまり、尿酸値を正常な値に保つことは、多くの疾患を予防するためにも重要であることが考えられるとしている。