業務における生成AI導入の動きが始まっている。いち早く導入したパナソニック コネクトは、ChatGPTをベースにした「ConnectAI」を構築し、従業員への活用を促しているという。2月7日~9日に開催された「TECH+ フォーラム AI Frontline 2024 Feb.」にパナソニック コネクト 執行役員 アソシエイト・ヴァイス・プレジデント CIO兼IT・デジタル推進本部 マネージングダイレクターの河野昭彦氏が登壇。生成AIの取り組みやそこから得られた学びについて詳細を明かした。
新しい技術を導入するポイントは“自分たちで頑張らない”
パナソニック コネクトは、2022年4月にパナソニックがホールディング制になった際に、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテイメントを事業分野に持つ企業として誕生した。
同社は競争力を強化すべく、事業立地改革、製品・サービスの専鋭化とオペレーション改革、カルチャー改革の3つに取り組んでいる。
「我々は日本では他の企業より少しだけ先にAIを社内に展開できました」と話す河野氏は、AIに限らず新しい技術を企業の中に持ち込む際のポイントを次の3つにまとめた。
「自分たちで頑張らない」について同氏は「特に日本の製造業は全部一から自分たちでつくろうとする」としたうえで、「世の中には良いものがある。つくるのではなくて、それを使いこなす。また、それに拘らずに良いものが出たらさっさと乗り換える感覚で、新しいテクノロジーを取り入れては」と続けた。
「失敗OK『早くやる』こそ正義」では、「新しい取り組みなので、可能性や効果はわからない。事例が出るまで待つなどと考えている間に、どんどんとテクノロジーは進化する」と述べ、「使ってみて、取り組みを発信し、フィードバックをもらい、取り組みを加速させるというサイクルを回すと良い」と助言した。
「従業員に安全・簡単に使える環境を提供」は、従業員が必要な時にいつでも使えるようにすること。それと同時に、「どのように使えば安全なのかを常に教育している」と語った。
1万3000人が生成AIを利用 - 「聞く」と「頼む」
ではパナソニック コネクトの取り組みは具体的にはどのようなものか。
同社は2022年10月に生成AIのプロジェクトを開始、内部でPoCを展開した後、2023年2月17日より「ConnectAI」として国内全社員約1万3000人が生成AIを利用できるようにしている。
ビジネスに特化したUIで、利用方法がわかるように15種類のサンプルを用意した。また、英語の方が得意という生成AIの特性を活かし、日本語の質問を英語に、英語の回答を日本語にする翻訳ボタンも用意した。できることは大きく2つ、「聞く」と「頼む」だ。聞くはアドバイス、専門知識、アイデア、ITサポートなど、頼むは判断、文書や資料の作成、プログラムサポートなどである。
「聞く」では、会議進行のアドバイスを聞いた例が紹介された。「あなたは経験ある企業向けのファシリテーターです。私は販売会議のフリーペーパーを担当することになりました。参加者10名、時間は2時間、課題は修復製品の価格についてです。どのような流れで会議を進行したら良いでしょうか」というプロンプトを入力すると、オープニング、課題の説明、情報共有、議論、意思決定という流れを説明する回答を返す。
「当たり前のことが書いてあるが、それが重要です。新入社員や異動してきた人が会議の準備をしなければならないときに、AIと会話しながら叩き台のアジェンダをつくり上げることができます」(河野氏)
「頼む」では、商品紹介文の作成が例に挙げられた。「あなたはパソコン製品のプロダクトオーナーです。以下の情報を基に文章を生成してください」という文言と、スペックを入れたプロンプトを入力すると、「パナソニックコネクトから、ビジネスシーンに最適な新デザインのレッツノートが登場しました」といった紹介文が生成された。そのままでは使えないが、これを叩き台として改善するという使い方をしていると河野氏は説明する。
ConnectAIは現在、マーケティング、法務、経営企画、経理など幅広い部門で活用されており、「汎用的にみんなが使えるツール」(河野氏)になっているそうだ。