味の素、多様な接点で顧客関係を深化 ID連携でネット広告に依存しない集客方法を模索

味の素社は現在、多様な接点を活用して顧客との関係性強化に取り組んでいる。味の素社は2022年、共通ID「AJINOMOTO ID」の提供を開始した。

サプリメントや食品などを販売する「AJINOMOTOダイレクト」、食のオウンドメディアである「AJINOMOTO PARK」、新規D2Cブランド用サイト「AJI MALL」などとの連携を強化して、ユーザーに最適な商品・サービスの提案に努めている。

味の素社は2005年、「AJINOMOTOダイレクト」を開設した。睡眠サプリ「グリナ」を発売した段階で、ECサイトを開設した。

「新聞広告や雑誌広告、新聞への折り込み広告など、いわゆる通販の訴求方法で認知を拡大してきた。それを見た高齢者が電話で注文してくるというのが2010年くらいまでは主流だった」(アミノサイエンス事業本部 ダイレクトマーケティング部 販売マーケティンググループ マネージャー(取材当時) 瀬上義人氏)と振り返る。

▲睡眠サプリ「グリナ」

2012年からはデジタルマーケティングも本格的に開始した。ウェブ広告、テレビCM、新聞への広告出稿など、オンラインとオフラインの訴求を掛け合わせて顧客獲得に注力した。特にコロナ禍では、在宅時間の影響で「クノール贅沢野菜」などの食品の販売数が増加したという。

「特にコロナ禍では、広告のクリエーティブにもこだわった。素材が分かる内容にしたことが良かったと思う。ソーシャルメディアに投稿されている写真を参考にして広告クリエーティブを作ったり、イメージしやすくユーザーに支持されている広告を作成した。地道に常に最善の訴求方法を探した」(同)と話す。

現在では、ネット広告のCPA(顧客獲得単価)が高騰していることから、ネット広告に依存しない集客方法の展開を重視している。主に①「AJINOMOTO ID」の導入 ②「AJINOMOTO ID」導入による各種サービスの連携とそれを基にした商品提案 ③公式LINEへの登録誘導――などを行っている。

「とにかく刹那的な顧客との出会いだけは避けるようにしている。工場見学でより味の素社を理解してくれるファンを増やしたり、それこそ味の素社にはさまざまなサイトがあり、それぞれにファンがいてくれる。ID連携して登録者に最適な情報を発信していく」(同)と話す。

さらに「あとはLINEの活用を強化していく。当社の睡眠サプリ『グリナ』は店舗でも販売しており、その商品の中にはLINEの登録を促すQRコードを同梱している。そこからLINEの登録を目指し、顧客の悩みごとを拾い上げていく」(同)と説明する。