NECと住友商事は3月4日、NECの農業ICTプラットフォーム「CropScope」のグローバル拡販に関する戦略的パートナーシップ契約を締結したことを発表した。同パートナーシップにより、まずはタイやブラジルの大手製糖企業向けに、CropScopeのトライアル導入を進めていく方針だ。
同パートナーシップに基づき両社は、住友商事の有するグローバルネットワークを活用して、主に南米やASEAN地域などでの市場開拓を目指す。またこれに向けてNECは、重点を置く対象作物をこれまでのトマトから広げるとともに、栽培から収穫、加工に至る一連のプロセスの最適化と効率化を図る機能を追加するという。
パートナーシップの背景
CropScopeは、AIを活用したデジタル農業でこれまでの農業生産現場を革新するためのプラットフォーム。営農アドバイスや収穫コントロールの予測を行い、食・農におけるバリューチェーン全体を最適化するもの。NECはこれまで、CropScopeを継続的に機能強化するとともに、さまざまなパートナーと連携し、農業生産に携わる顧客の多様なニーズに応えてきている。
今回の農業・食分野でグローバルに幅広いネットワークと豊富な知見を持つ住友商事とのパートナーシップは、CropScopeのグローバル拡販における重要なマイルストーンとして見ているという。
また住友商事は、既存の農業・食分野でのビジネス基盤の拡大に加えて、次世代技術を活用し高効率・低環境負荷でサステナブルな食料生産に貢献しうる新規事業の開発にも注力している。
中でも、農作業のオートメーションやデータ解析技術などを活用して安全で高効率な食料生産の実現に貢献するスマートファーミング分野は重要テーマの一つであり、農業やそれ以外の分野でもAI技術を確立しているNECと協業する今回の取り組みは、重要な取り組みと考えているという。
パートナーシップの概要
パートナーシップの概要は以下の通り。「CropScopeの新興国への拡販」「重点対象作物を拡大し、栽培から加工までを一括管理」という2点を中心に取り組まれる。
CropScopeの新興国への拡販
住友商事は、世界65カ国に地域組織ネットワークを持ち、約40カ国にて農薬・肥料など農業資材の販売・ディストリビューション事業を展開している。同パートナーシップでは、そのグローバルネットワークを活用して、CropScopeの販売地域をまずタイ・ブラジル・インドに拡大し、事業成長を目指す。
重点対象作物を拡大し、栽培から加工までを一括管理
CropScopeの販売戦略で重点を置く作物を、加工トマトに加え、サトウキビ、小麦、大豆、とうもろこしに拡大した。今回、追加した作物に対してAI機能を強化し、過去の営農データや収穫データを学習させ、最適な収穫時期・量を推奨するとともに、収穫の計画と実績を管理する「収穫計画機能」も追加する予定。同機能と従来からの施肥・灌漑の最適化を組み合わせることにより、栽培から収穫、加工までを包括的に管理することが可能となる。
今後も両社では、農業生産・加工現場の課題やニーズを拾い上げながら、CropScopeの対象作物や機能を拡大することで、環境に優しく収益性の高い営農をグローバルに支援し、持続可能な農業と世界の食料安全保障の確保に貢献していきたい考え。