ソフトバンクとエリクソン・ジャパンは2月22日、ノン・スタンド・アローン(Non Stand Alone)方式による5G(第5世代移動通信システム)ネットワーク(5G NSA)の商用環境において、基地局外部にある制御装置(サーバ)でネットワークのパフォーマンス・データを1分間隔で取得し、その情報を基に基地局外部からトラフィックを制御することより、ネットワークを高速かつ自動で最適化するという高速自動最適化機能の実証に成功したと発表した。
高速自動最適化機能の概要
スタジアムや主要駅など多くのユーザーが集まる場所では、バースト・トラフィックという突発的なトラフィック需要が発生しやすく、こういった環境では従来の無線装置が備えている各種機能を用いた内部制御に加え、外部の制御機能による大きく広いエリアを対象としたトラフィック制御が必要という。
また従来の方式では、トラフィックの変動を検知するまでに時間を掛かるという課題があったとのこと。
こうした課題を解決するために両社は、基地局外部にある制御装置でネットワークのパフォーマンスのデータを1分間隔で取得し、トラフィックの変動を認識できる仕組みを実装すると共に、取得したデータを基に複数の周波数・基地局を含めてパフォーマンス改善のための最適化策を自動的に判断し、該当の基地局に対して無線パラメーターの自動制御を行う新機能を構築したという。
体感速度が下りで約53%、上りで約10%改善
従来の基地局内部制御では、基地局のカバレッジ・エリアとその隣接部を考慮したより高速な最適化の処理が可能な一方で、トラフィック制御の対象範囲は限定的だったとしている。
これに対して同機能では、クラスタ単位でのエリア一帯に対して、外部装置が俯瞰した判断を高速に行うことで、より大きな変動を伴うトラフィック制御が可能という。
そのため、イベント開催時のような短時間での急激なトラフィック変動を伴う制御において大きな効果を発揮するとのことだ。
2023年9月にスポーツの試合が行われたスタジアムの商用ネットワーク環境でPoC(概念検証)を実施し、3時間程度の評価時間において、完全自動化の閉ループで人の介在なく計29回の無線パラメーターの自動制御を実行したという。
また無線リソースの最適化により、5G NSAにおけるユーザー体感速度が下りで約53%、上りで約10%改善したとのこと。
スタジアムでのPoCに加え、2023年11月には音楽イベント開催時のドーム球場や、都内主要駅でも商用ネットワーク環境で評価を行い、異なるトラフィックのパターンにおいても同機能が有効であることを確認したとしている。
実証においてエリクソン・ジャパンは、同機能を開発した。 ソフトバンクは、ユースケースの検討および、商用ネットワーク環境でのトライアル評価を担当した。
今後ソフトバンクは同機能の適用エリアを拡大し、全国のスタジアムやイベント会場などで使用すると共に、スタンド・アローン(Stand Alone)方式の5Gネットワーク(5G SA)のユースケースにも拡張することで、4Gと5Gでパケ止まりの無い、より快適なモバイル・ネットワークの提供を目指す。
将来的には、外部システムとの連携や、AI(人工知能)とML(機械学習)などを利用したRIC(RAN Intelligent Controller)の導入に加え、従来のネットワークとの協調を考慮した次世代ネットワークの構築に繋げていく予定だ。