昨年10月に、クラウド型マネージドDDI(DNS、DHCP、IPアドレス管理)やDNSセキュリティを提供するInfobloxの日本担当カントリーマネージャーに河村浩明氏が就任した。同氏は「興奮してて仕事を非常に楽しく感じている」と述べており、本稿では就任以降の取り組みや同社における今後の展望に関するインタビューを紹介する。
河村浩明(かわむら ひろあき)
Infoblox株式会社 日本担当カントリーマネージャー
これまでEMCジャパン執行役員、日本オラクル常務執行役員、サン・マイクロシステムズおよびシマンテック代表取締役社長、Dropbox Japanなどのカントリーマネージャーを歴任。エンタープライズ向けIT市場のグローバルトップソリューションをはじめとして、セキュリティソリューションの拡充、ネットワークやシステムの可観測性の向上など、40年以上にわたりテクノロジーエンタープライズ企業の日本国内事業の拡大に貢献。
就任以降の施策には非常に手応えを感じている
--まずは、昨年10月にカントリーマネージャーに就任して以降の所感についていかがでしょうか?
河村氏(以下、敬称略):昨年の4月末に前職を退任してからは、引退しようと考えていました。しかし、InfobloxのAPJトップから話がしたいという連絡が来て、カントリーマネージャーを打診されました。
年齢的にも厳しいかなとは思っていたのですが、実際に話を聞いてみたらDNSセキュリティということで、なかなか面白そうだなと感じていました。
また、誘ってくれたAPJのトップは前職の同僚であったことから、彼となら面白い仕事ができるなと考えました。入社してから、まず感じたことはグローバルやAPJのパワーを使えてないということ、そしてコミュニケーションが取れていないということでした。
そのため、日本法人の従業員とともに海外の同僚とディスカッションするようにし、製品の良さや戦略の落とし込みが不十分だと感じたため、そうした情報を共有することからスタートしました。
--その後はどのような取り組みをしたのでしょうか?
河村氏(以下、敬称略):パートナーさんやお客さまに対する姿勢も積極性が欠けていたため、アグレッシブにやろうというとことで強気に提案していこうと話しました。例えば、できることとできないことをはっきりさせ、方向性についてもニーズをふまえた提案を行うようにすることで、自分の意志を持ってお客さまと接するような文化形成をしました。
当社はパートナーモデルで販売しているため、一次~四次まであります。従来型の日本におけるパートナービジネスは、伝言ゲームに近くハイタッチ営業が難しいですし、避けられる傾向にあります。それをぶち壊そうということで、少なくとも一次代理店とそのリセラーの企業と情報共有をしました。
そこでは、伝言ゲームではなく、3社(Infoblox、一次代理店、リセラー)で情報共有を提起し、パートナーさんにも受け入れられたことから、ガンガン推進しています。そのため、風通しはだいぶ良くなりました。とはいえ、当社が入り込んでくることを敬遠する企業さんもあるため、そこは乗り越えなければなりません。
このように感じている理由として、お客さまは迅速かつ質の良い情報を身近に知りたいということがあるからです。
例えば、リセラーさんの営業担当は誰なのかという情報も入ってこないため、当社としても情報の見える化ができていなかったのです。伝言ゲームだと、時間がかかってしまうことから、日本の悪しき慣習について時間をかけて変えていくことに取り組んでいます。私自身が積極的に発言していますし、ワイワイやることがビジネスの醍醐味です。
こうした取り組みを愚直に行った結果、海外とのつながりが非常に強くなりましたし、素晴らしい人材とも仲良くなっています。現在、Infobloxが持つ強みを日本のお客さんにしっかりと提供できるようになっており、非常に手応えを感じています。
Infobloxの強みはDNSセキュリティ
--昨今のセキュリティ業界のトレンドをふまえ、Infobloxの製品ポートフォリオについて教えてください。また、DNS(Domain Name System)セキュリティを提供するInfobloxで、どのようなことが支援できますか?
河村:2010年前後にランサムウェアが猛威を振るい始めた以降は、セキュリティ投資は増えていますが、セキュリティの被害や犯罪は毎年増加し続けています。当社は従来から堅牢なDNSセキュリティ、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)セキュリティを提供しており、ネットワークの根幹をしっかりと組み立てていくことに注力しています。
当社にとって有利なことは、DNSを監視できる点です。というのも一番トラフィックが多く、犯罪者もDNSを取得するからです。そのため、犯罪者の情報を集めやすいことから、当社の脅威インテリジェンスは高いレベルにあります。他社の脅威インテリジェンスはマルウェアが出現したら検知して防御するわけですが、当社は出現する前に振る舞いを観察し、AIで解析しています。
京王電鉄さんでは6000台のPCを保護するためにDNSセキュリティソリューション「BloxOne Threat Defense」を採用し、インシデント数の低減につながっています。また、もう1つ当社が注目しているのは、セキュリティ対策の際にお客さま側で意外に見落としているものがコスト、人手が要する運用です。
なぜなら、誤検知が非常に多いからです。そのため、いかに誤検知を低減するかということがポイントになります。当社では「Smart Distinguish」と呼ぶ技術で誤検知の発生率を低減する能力を持っています。これにより、運用負荷の軽減が図れるのです。
攻撃者は質・量的にも賢くなり、AIを組み込んだ攻撃が想定されており、これまでの備えでは危ういと感じています。そうしたことから、当社が現在取り組んでいるのは、広範なベンダーと協力してセキュリティ全体の強度を向上するため、エコシステムの構築に注力しています。
8月以降に種まきしたものが大きく成長する
--パートナーエコシステムについてはいかがでしょうか?
河村:マクニカさんや東京エレクトロンデバイスさんなどとは、例えば他社のセキュリティ製品と当社の製品をパッケージ化して、エコシステム的な提案をお客さまにしていく動きがあります。
一次代理店は現状のままですが、リセラーは増やしていきたいと考えています。また、技術力で他製品と合わせてテストしたり、研修したり、新しいアプリケーションを搭載するなど、さまざまな工夫ができることが魅力的なパートナーだと感じています。
--最後に日本市場における展望について教えてください。
河村:体制構築という観点からすると、あと一息といったところです。現在の従業員の半数以上が昨年入したしたため、今年は熟練してくるのではないかと思います。
当社の第4四半期は7月ですが、そこまでは我慢の時期のため数字の飛躍は期待していませんが、8月以降は大きく成長できるのではないかと感じています。
Infobloxの製品を使い込んでいるユーザーさんもいますし、現状でいくつかの大型案件も動いているので来年は大きく飛躍できるのではないでしょうか。
具体的な施策で言えば、従来はハイタッチ営業があまりできていなかったため、エンドユーザーさんに刺さるようなハイタッチ営業を進めるため、営業の人材を獲得して体制を拡充します。
また、先ほども話したようにエコシステムを構築し、アライアンスパートナーと当社製品を組み合わせて、もっと大きなソリューションとして提供できるよう仕組みをしっかり作れればと考えています。
大変ではありますが、こうしたことを地道に根付かせて8月以降に花を開かせていくことが私の構想です。これまで、複数の企業に従事してきましたけど、従来以上に興奮してて仕事を非常に楽しく感じており、それぐらい魅力の会社であり、製品を提供していると自負しています。