2月16日、本日から令和5年分の確定申告の受付が始まる。個人事業主やフリーランスの中には、申告書の作成を前に憂鬱な気分を抱えている人、これから領収書の整理を始める人、もう準備が整っている人、さまざまな状況があるかと思う。

確定申告の提出方法は人によって固定化の傾向

弥生が発表した調査結果によると、昨年(令和4年分)の確定申告を行う際に感じた課題として、「作業時間の確保」を挙げる人が最も多かったという。「申告書の作成」「e-Taxの操作方法」「帳票の作成、整理」などを課題と感じている人も多いようだ。特に今回は「適格請求書等保存方式」(以下、インボイス制度)が始まって初の申告ということもあり、戸惑っている人も多いだろう。

  • 資料:弥生

    資料:弥生

弥生で個人事業主向けの確定申告ソフトのプロモーションを担当する湯山賢志郎氏は、「インボイス制度の開始に伴って、業務負担の増加や売上への影響に対する声が挙げられたことで、経過措置や2割特例といった措置が取られ、当初想定していたよりも免税事業者から課税事業者への移行は緩やかになったと思う」と語る。

  • 弥生 クラウド・サービス セールス&マーケティング部 セールス&グロースマネジメント 湯山賢志郎氏

    弥生 クラウド・サービス セールス&マーケティング部 セールス&グロースマネジメント 湯山賢志郎氏

また、同社の調査から、確定申告の提出方法は個人ごとに固定化している傾向がうかがえる。令和4年分をe-Taxで提出した人のうち今年もe-Taxで提出する予定の人は94.4%、令和4年分を紙で提出した人のうち今年も紙で提出する予定の人は89.9%だ。前年の提出方法で特に問題・課題を感じなかったことから、あえて提出方法の変更に至らない人が多いのだろう。作業の慣れもあると思われる。

しかし、その一方で、紙で提出した人はe-Tax利用者と比べて「申告書の作成」を課題と感じている人の割合が10.1ポイント高いことも明らかになった。また、「作業時間の確保」を課題と感じている人も同様にe-Tax利用者と比べて紙で提出した人は4.4ポイント高い結果に。紙での作業に慣れてはいるものの、紙での提出に必要な作業時間の確保に追われているような矛盾が生じてしまっている。

そうした中で、コロナ禍などを背景に紙での提出からe-Taxでの提出に切り替えた人も一定数存在する。そのような人のうち「e-Taxの利用が時間節約になった」と回答した割合は65.1%となり、中でも「3時間以上の短縮になった」と回答した事業者は16.0%だ。

  • 資料:弥生

    資料:弥生

確定申告に要する時間を節約して本業に集中を

会計ソフトを日常的に使っている人も、Excelなどを活用して独自に帳簿を付けている人も、手作業で管理している人であっても、帳簿付けの作業自体はどの事業者も対応すべき業務だ。

湯山氏は会計ソフトを活用したe-Taxの提出について、「帳簿から確定申告書を作成する際には、転記作業や計算の正確性確認などの作業が生じる。会計ソフトを活用したe-Taxの利用は、これらの作業を効率的に進められるメリットがある」と述べていた。

しかし、同氏は会計ソフトの活用について、確定申告を楽に迅速に進める以上のメリットについて、次のように語った。

「会計ソフトは確定申告のために使われるイメージがあるかもしれないが、当社としては会計ソフトは事業を進めるために必要なものだと捉えている。会計ソフトを使えば、売上や経費などを可視化して、自分の事業の現在地を棚卸できるようになる」

また、「普段から会計ソフトを使っておけば、今のような時期でも普段の業務量とそこまで変わらずに所得税の確定申告や消費税の申告が行えるようになる。今回のインボイス制度に伴って新たに消費税申告書を作成する必要がある事業者も、それほど業務負担になることなく作成できるはず。ぜひ会計ソフトを有効に活用して、自身の本業に集中する時間を増やしてほしい」とも語っていた。

  • 湯山賢志郎氏

毎年この時期は確定申告の煩わしさや苦い思いを感じている人も多いかもしれない。しかしこうした機会に経費にまつわる楽しい思い出を振り返り、そして事業の現在地を可視化し、また次の1年への活力としてほしい。

最後に余談となるが、マイナビニュース TECH+の編集部に所属する筆者はサラリーマンなわけだが、今回は確定申告が必要となる。今週末は重い腰を上げて早速取り組んでみようと思う。