内田洋行と東京学芸大学は2月13日、両者の長年にわたる学校教育のノウハウを融合し、日本の未来の教育の在り方について多面的な連携を推進するための包括的事業連携協定を締結した。

この連携協定締結に伴い、東京学芸大学附属竹早小学校にて調印式を開催した。調印式には、内田洋行 代表取締役社長の大久保昇氏と東京学芸大学 学長の國分充氏らが登壇し、包括的事業連携協定の内容の説明と両者がこれまで取り組んできた「SUGOI(すごい)部屋」に関しての紹介が行われた。

  • 調印式の一幕

    調印式の一幕

包括的事業連携協定の5つの柱

今回の包括的事業連携協定では、以下の5つのことを柱とした取り組みが行われる。

  • 未来の教育や学校教育の在り方に関すること
  • 学校教育における効果的・効率的な学習環境の在り方に関すること
  • 教員養成・教育研修の在り方に関すること
  • 国内外の教育機関、行政機関等との連携に関すること
  • その他両者が必要と認める事項

この5つの項目の中で東京学芸大学は、教員養成フラッグシップ大学に指定されている大学であるため、「教員養成・教育研修の在り方に関すること」には特に前向きな姿勢を見せていた。

教員養成フラッグシップ大学とは、文部科学省が「令和の日本型学校教育」を担う教師の育成を先導し、教員養成の在り方自体を変革していくための牽引役としての役割を果たす大学として指定した学校のことで、東日本では学芸大学が唯一指定されている。

今回の協定では大学での教員養成だけでなく、社会人から教員を目指す人や教員免許を持っているものの教員としては働いていないという人に向けて「リカレント教育(学校教育を終えた社会人が、その後も生涯にわたって学び続け、就労と学習のサイクルを繰り返していくこと)」を推進していきたい考えだ。

國分氏は「今回の協定締結を通じて、日本の未来の教育の在り方について、多面的な連携をさらに推進していきたい。1人1台端末の導入など教育現場でもICTが日常的に定着化した現在、この協力体制が、日本の教育をさらに前進させる力となることを確信している」と力強く述べた。

  • 協定についての期待感を見せる東京学芸大学 学長の國分充氏

    協定についての期待感を見せる東京学芸大学 学長の國分充氏

両者が取り組む「SUGOI部屋」とは?

今回、包括的事業連携協定を発表した両者だが、連携協定に先駆けて両者はすでに取り組みを開始させている。その中でも特徴的な取り組みが「SUGOI部屋」の導入だ。

SUGOI部屋とは、東京学芸大学が進める「未来の学校みんなで創ろう。プロジェクト」の一環として内田洋行が構築した、普通教室では体験できない学習活動を実現する空間だ。2022年に同大学附属竹早小学校と竹早中学校に導入され、現在ではさまざまな授業で活用されているという。

内田洋行の大久保氏は、このSUGOI部屋の構築の背景として「新しい教育のスタイルを推進するにはタブレットやネットワークも大事だが、学習環境を整えることも忘れてはいけない」という想いを語った。

  • SUGOI部屋の構築の背景を語る内田洋行 代表取締役社長の大久保昇氏

    SUGOI部屋の構築の背景を語る内田洋行 代表取締役社長の大久保昇氏

同教室には、ICTを利活用しやすい空間デザインと可動性を重視した机や椅子が採用されており、場面に応じて即興的にレイアウトを動かすことができ、遠隔授業やグループワークなど、躍動感のある授業を行うことができる。

使用方法としては、海外の学校と接続した異文化交流の授業や360度カメラでライブ配信された公開授業の実施のほか、先進的な指導方法の検討など、最先端の学習環境を用いたさまざまな研究が行われているという。

  • SUGOI部屋の使用イメージ

    SUGOI部屋の使用イメージ

実際に竹早小学校で1年生の担任をしている幸阪創平氏は、「雑草を見に行く」という探究学習の前段階でGoogle Earthを活用した授業を実施し、事前にどんな場所かと生徒に共有してイメージをしてもらったり、「どんな雑草がどのくらい生えているか」という予想をしたり、という形で活用したという。

また事後学習は、事前にSUGOI部屋で見ていた航空写真に調べた雑草について手書きの付箋を貼っていくという形式で行い、デジタルとアナログの融合ができるところが同教室の特徴の1つだと説明していた。

  • 授業について説明している幸阪創平氏

    授業について説明している幸阪創平氏

最後に大久保氏は以下のように今後の展望を述べた。

「OECDの活動では世界の良い事例を日本が吸収していくフェーズとされてきましたが、これからは、日本が整った環境の中で、世界に向けて日本の教育の良さを発信するタイミングではないかと考えています。その目標に向け、東京学芸大学さまとはさまざまな活動を一緒にできればと思っています」(大久保氏)