東京商工リサーチ(TSR)が1月30日に発表した「2023年全上場企業『不適切な会計・経理の開示企業』調査」によると、2023年の不適切会計開示企業数は過去2番目で2年連続増の60社・62件であり、業種別の最多はサービス業だった。企業数・件数は2019年から2021年にかけて減少していたが、2022年から緩やかな増加傾向に転じている。

  • 不適切会計開示企業数の推移 出典: 東京商工リサーチ

「誤り」が全体の54.8%

内容別では、経理や会計処理ミスなどの「誤り」が全体の54.8%となる34件で最も多く、子会社・関係会社の役員、従業員の「着服横領」が同30.6%の19件で続く。

  • 不適切会計の内容別件数 出典: 東京商工リサーチ

発生当事者別では、最多は「会社」の28社(全体の46.6%)であり、会計処理手続きなどの誤りが目立った。「子会社・関係会社」が16社(同26.6%)で続き、売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立つという。

「従業員」は15社(同25.0%)で、外注費の水増し発注を行った上で、その一部をキックバックし私的流用するなどの着服横領が多かったとのこと。

  • 不適切会計企業の発生当事者別推移 出典: 東京商工リサーチ

東証プライムが30社で最多

上場市場別では、東証プライムが30社(全体の50.0%)と最多であり、以下、東証スタンダード(20社、同33.3%)、東証グロース(9社、同15.0%)が続く。

  • 不適切会計企業数の上場市場別推移 出典: 東京商工リサーチ

産業別では、サービス業が15社(全体の25.0%)で最も多く、従業員の不適切取引などによる着服横領や連結子会社での過大請求などの誤りが増えた。製造業が10社(同16.6%)で続き、国内外の子会社、関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多かったという。

  • 不適切会計開示企業数の産業別推移 出典: 東京商工リサーチ

高まる監査法人の監査機能

2023年5月に、監査を請け負う顧客1社への報酬依存度が15%を超える状態が5年続くと、翌年からその企業の監査を担当できなくなるルールが導入される。監査業界の再編が進む中で不適切会計を起こさせないため、監査法人の監査機能がどこまで高まるか注目されると同社は指摘する。

また、コロナ禍(新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大)が落ち着き企業活動が回復する状況において、2023年は60社、62件の不適切会計が判明した。

不適切会計を根絶できない背景には、業績優先の意識やステーク・ホルダーに対する情報隠蔽など多様な要因があるという。また、不適切会計が判明後の経営陣の対応が不十分なケースもあり、再発防止の仕組み作りは容易ではないと同社はいう。

上場企業は、改めてコンプライアンス(法令遵守)やコーポレート・ガバナンス(企業統治)の原点を見つめることが必要だろうと、同社は提言している。