東京商工リサーチ(TSR)は7月21日、「2023年上半期(1~6月) 全上場企業『不適切な会計・経理の開示企業』調査の結果を発表した。これによると、同期間における開示数は35社36件であり、2008年の集計開始以降で2番目に多かったという。

上半期における開示数を比較すると、2022年上半期の38社38件が最多であり、2023年上半期はこれに続く。年間では2019年の70社73件がピークだったが、2023年上半期は既に同年上半期の30社31件を上回っている。

  • 不適切会計開示数の推移 出典: 東京商工リサーチ

2023年上半期に不適切会計を開示した36件の内訳は、経理や会計処理ミスなどの誤りが20件(2022年同期比11.1%増)で最多だった。以下、従業員などによる着服横領が11件(同22.2%増)、子会社での不適切会計処理などの粉飾が5件(同54.5%減)だった。

  • 不適切会計内容の内訳 出典: 東京商工リサーチ

発生当事者別では、最多は会社の15社(構成比42.8%)であり、会計処理手続きなどの誤りが目立つ。従業員の11社(同31.4%)がこれに続き、外注費の水増し発注を行った上で、その一部をキックバックし私的流用するなどの着服横領が多かったという。

子会社・関係会社は9社(同25.7%)であり、売上原価の過少計上や架空取引など、見せかけの売上増や利益捻出のための不正経理が目立っている。

  • 不適切会計の発生当事者推移 出典: 東京商工リサーチ

発生企業を上場市場別に見ると、東証プライムが18社(構成比51.4%)と最も多く、以下、東証スタンダード(12社、同34.2%)、東証グロース(4社、同11.4%)と続く。2013年までは新興市場が目立ったが、2015年以降は国内外に子会社や関連会社を多く展開する旧東証1部が増加しているという。

  • 上場市場別の不適切会計開示企業数 出典: 東京商工リサーチ

産業別では、サービス業の9社(構成比25.7%)が最も多く、職業紹介業や労働者派遣業などで売上原価の計上漏れなど会計上の誤りが増えている。製造業の7社(同20.0%)は、国内外の子会社や関連会社による製造や販売管理の体制不備に起因するものが多かったとのこと。

  • 産業別の不適切会計開示企業数 出典: 東京商工リサーチ

調査結果を受けて同社は、「コロナ禍(新型コロナウィルス(COVID-19)感染症の感染拡大)が落ち着き、企業活動が回復する中で、2023年上半期は35社、36件の不適切会計が判明した。不適切会計を根絶できない背景には、業績優先やステークホルダーへの情報隠蔽など、様々な要因がある。また、不適切会計が判明後の経営陣の対応は不十分なケースもあり、再発防止の仕組みづくりを急ぐ必要がある。上場企業は改めてコンプライアンス(法令遵守)やコーポレート・ガバナンス(企業統治)の意識徹底に取り組むべきだろう」と指摘している。

  • 2023年上半期に不適切会計を開示した企業の一覧 出典: 東京商工リサーチ