レッドハットは1月29日、ホスト型コントロールプレーンを備えた「Red Hat OpenShift Service on AWS」(以下、ROSA with Hosted Control Plane)の国内提供を開始すると発表した。Amazon Web Servicesの東京リージョンで提供される。
Red Hat OpenShift Service on AWSの概要
ROSAはAmazon Web Services(AWS)上で提供されるOpenShiftのフルマネージドサービスで、Red HatとAWSが共同でサポートするもの。
テクニカルセールス本部 クラウドソリューションアーキテクト部 ソリューションアーキテクトの北村慎太郎氏は、ROSAを提供している背景について、次のように説明した。
「パブリッククラウドにおいてはさまざまなマネージドサービスが提供されているが、ユーザーはMSSを利用することで運用の負荷を軽減しているケースが多い。レッドハットもそういうニーズに応えるため、OpenShiftをマネージドサービスで提供している。それがROSA」
ROSAの特徴としては、「オンデマンドの従量課金モデル」「クラスタの安定運用」「豊富なAWSとの連携機能」「ユーザーが運用管理の負荷を負わないでよい」などがある。
ROSA ClassicとROSA with Hosted Control Plane (HCP) の違い
同社はこれまでユーザーのAWSのアカウント上に、コントロールプレーンとインフラノードとコンピュートノードから構成されるクラスタを構成する「ROSA Classic」を提供してきた。
対する国内提供が開始された「ROSA HCP」は、レッドハットのAWSアカウント上にマネジメントクラスタを構築し、ユーザーのアカウント上にクラスタを構成する。両社のアーキテクチャ違いは、以下の図を見ていただくとわかりやすい。
なお、両者の選択に際しては、コンプライアンスの認証方法が異なること、ROSA HCPは使えるリージョンに限りがあることなどに考慮する必要がある。
「ROSA HCP」がもたらすメリット
コントロールプレーンがROSA HCPの最大の特徴となるが、どんなメリットをもたらすのだろうか。北村氏は、同サービスを導入することで得られるメリットとして、以下4点を挙げた。
- AWSのインフラストラクチャコストを削減
- ROSAクラスタの起動時間を短縮
- Red Hat Managed 環境への作業ミスの防止
- コントロールプレーンとコンピュートノードのアップグレードを個別にスケジュール可能
コスト削減の効果
最大のメリットは、「AWSのインフラストラクチャコスト削減」といえる。ROSA HCPでは、コントロールプレーンとインフラノードの機能がレッドハットの管理するAWSアカウント上のOpenShiftクラスタに移行するため、Classicで必要だったEC2インスタンスの料金を削減できる。
北村氏は、「Classicと比べて、ROSAの利用料は増えるが、インスタンスの利用料が減るので8000~1万ドルのコスト削減が見込める」と語った。
また、米国Red Hat本社が実施した調査によると、ROSA HCPをデプロイした場合、ユーザーのアカウントでコントロールプレーンをホスティングした場合と比べて、平均で5倍のコスト削減が実現されたという。
最小構成の場合、コスト削減の効果が最も大きいが、大規模構成でもクラスタを複数構築するケースが多いことから、コストメリットが得られるという。実際、国内でベータ版を利用している企業からもこうした意見をもらっているとのことだ。
クラスタの起動時間を短縮
ROSA Classicの場合、クラスタごとにOSレイヤのインストールや設定が発生するため、作成に時間がかかる。対するROSA HCPは、Podのデプロイのみでコントロールプレーンの作成が完了するため、起動時間が短縮される。
具体的には、ROSA Classicは起動に30分から40分程度かかるが、ROSA HCPは15分程度で済むという。
ROSA Hands-on Experienceを提供
北村氏は、Red Hatのデモプラットフォームを利用し、8時間無料でROSA HCPにアクセス可能な「ROSA Hands-on Experience」を紹介した。
北米リリースの際に予想以上の反響があり、現在一時利用停止となっており、2月中に提供再開を予定しているという。
ユーザーは、チュートリアルのモジュールを通して、操作方法、ROSAの上でのアプリケーションのビルドとデプロイ、その他 Day 2 オペレーションのタスクを体験できる。
ユーザーが支援を必要としない限り、同社によるプロセスへの関与はないほか、同プログラムは3回まで利用可能。