Splunkは1月17日、AIが今後1年でどのようにビジネスレジリエンスの形成に活用できるかを考察した「2024年の予測レポート」を発表し、記者会見を開催した。

同レポートは、「エグゼクティブ」「セキュリティ」「オブザーバビリティ」と3つの観点から、分析が行われている。以下、それぞれに関する予測を紹介する。

エグゼクティブが知っておくべきこと

「エグゼクティブ」については、日本法人社長 執行役員 野村健氏が説明を行った。2024年の予測として、AIの爆発的普及による規制対応への混乱が現れることから、エグゼクティブは「AIと規制が注目を集める」ことに注目する必要があるという。

  • Splunk 日本法人社長 執行役員 野村健氏

まず、AIについては、効率と生産性を短期間で着実に向上させるが、そのレベルに達するまでには時間がかかるとの予測が示されている。AI開発においては、自動化が最優先の課題になるはずとのことだ。

野村氏は「すべてにAIを活用するとリスクがある。例えば、データが外に流れるリスクもあれば、ハルシネーションもある」とAIのリスクを指摘し、AIの利用において、常に人間が介在することの重要性を強調した。

規制に関しては、デジタルシステムの障害が社会経済に大きな影響を及ぼすようになる中、世界中の政府が障害対応に関する規制を強化する動きが出てきている。こうした状況を踏まえ、レジリエンスに関する戦略と能力を効果的に評価する方法を確立する必要があるが、野村氏は「可視化しないとアクションを取れない」と説明した。

オブザーバビリティに関する予測

「オブザーバビリティ」については、オブザーバビリティ・ストラテジスト 松本浩彰氏が説明を行った。2024年の予測として、AIがITのオペレーションに大きな影響を与えるようになることを知っておくべきだという。

  • Splunk オブザーバビリティ・ストラテジスト 松本浩彰氏

松本氏は、AIが活用されるITオペレーションの例として、異常検出とそれに付随する調査と対応を挙げ、「自動修復が実現する日も近いかもしれない」との見方を示した。同氏は、「障害対応の作業工程を連携させれば、想像以上に自動化できるはず」と述べた。

また、システム環境の複雑性が増大するにつれ、管理集約の志向が増大することが見込まれ、複雑性への対策として、企業・組織はツールを統合していく必要があるという。

松本氏は、ツールの統合のカギとして、テレメトリデータを収集してバックエンドプラットフォームに転送するための方法を標準化する点で重要なフレームワーク「OpenTelemetry」を挙げた。

「グローバルで、ツールの統合はなく、OpenTelemetryによりデータの標準化を進める動きが見られる。これは過去の動きと異なるものであり、大きなトピック」と松本氏。同社は今年もOpenTelemetryに沿ったソリューションを提供する計画とのことだ。

セキュリティに関する予測

「セキュリティ」に関しては、セキュリティ・ストラテジスト 矢崎誠二氏が説明を行った。同氏は、AIに関するセキュリティとAI以外のセキュリティを紹介した。

  • Splunk セキュリティ・ストラテジスト 矢崎誠二氏

AIに関しては、「セキュリティ業務を肩代わりするようになる」と「プライバシーとセキュリティのパンドラの箱を開けて問題を悪化させる」という2つの予測が行われている。

ご存じの通り、サイバー空間の変化は恐ろしいほど速く、スピードに人間が追いつけるわけがないことから、AIを活用すればよいという。これによりセキュリティ担当者に余裕が生まれるようになる。

一方、AIを活用したサイバー攻撃も増えている。同社は注目すべき攻撃の一つとして、AIのトレーニングデータを改ざんしてモデルの判断結果を故意にゆがめる「AIポイズニング 汚染データによるAIの乗っ取り 」を挙げている。

そのほか、2024年に予測されるAIを悪用した攻撃としては、洗練されたディープフェイク、見分けの難しいなりすまし、巧みに仕込まれたソーシャルエンジニアリング、自然な言葉によるフィッシング、検出回避能力に優れたマルウェアがあるという。

AI以外のセキュリティに関する予測としては、以下の2点が紹介された。

  • 脅威はさらに分散されて「民主化」される
  • ランサムウェアのポートフォリオが多様化する

矢崎氏は、「5Gのセキュリティに対する理解が深まっていない」として、注意を呼び掛けた。

2024年の事業戦略

野村氏は、同社が2024年にチャレンジするテーマとして以下を挙げ、2024年の事業戦略についても説明した。

  • 日本企業のAI導入を支援
  • 日本市場への継続的な投資、リソース、コンテンツ拡充、パートナーとの協業関係のさらなる強化
  • 工場、プラント、小売店、局舎などのOT環境、 IoT機器の課題解決をEdge Hub をもって取り組 む
  • シスコシステムズとの統合

小誌では既に紹介しているが、同社は今年、新製品として、OT機器やIoT機器のデータを収集するためのデバイス「Splunk Edge Hub」の提供を予定している。

野村氏は、「OT機器やIoT機器のデータの収集に苦労している企業は多い。Splunk Edge Hubでは簡単にデータを収集できるようにする」と述べた。Splunk Edge Hubはデータをクラウドに送信するほか、内でもデータの分析も行える。

  • 「Splunk Edge Hub」の特徴

シスコシステムズとの統合については、野村氏は次のように語っていた。

「現時点で言えることはない。米国の独占禁止法に従い、今年9月までに完了する予定。Splunkはセキュリティ、オブザーバビリティ、AIのプラットフォームだが、セキュリティはシスコシステムズのソリューションと被っていないが、オブザーバビリティは被る。再定義をして、オブザーバビリティ製品を提供することを計画している」