さまざまなかたちで、スポーツの普及や発展に取り組む三菱電機は、11月16日、新たにサッカーチーム・FC今治を運営する今治. 夢スポーツ社とエグゼクティブパートナー契約を結んだ。共創活動の第1弾として、アートプロジェクト「パーパスプロジェクト×あいうえおはな」を開催。12月6日~2024年1月31日まで東京銀座にある三菱電機イベントスクエア「METoA Ginza」で特設展示を行うほか、12月16日にはFC今治の本拠地である今治里山スタジアムとMEToA Ginzaでの展示・ライトアップイベントを行った。

三菱電機は、この提携によって何を狙うのか。三菱電機 執行役員 宣伝部長の阿部敬人氏に伺った。

  • 三菱電機 執行役員 宣伝部長の阿部敬人氏

スポーツへの支援を通じて目指すもの

――三菱電機は、トップアスリートを採用していたり、自社チームの運営をしたり、各種大会への協賛をしたりと、さまざまなかたちでスポーツの普及・発展に向けた支援をされていますね。

阿部氏:はい、弊社の企業理念は「私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献する」というものです。その実現に向けた策の一つとして、スポーツを通じた社会貢献をしていきたいという思いを持っています。例えば、トップアスリートを社員として迎え、活動を支援しているのは、その方の持つ能力をさまざまなかたちで社会に提供することで、元気や活力を社会に、そして社員たちに与えられるのではないかという考えからです。

また、スポーツ大会への協賛は三菱電機のグローバルでの認知拡大の効果を期待しています。2022年には東南アジアサッカー選手権(AFF Championship)の冠スポンサーとなり、「AFF三菱電機カップ」として開催しました。大会の予選・本戦だけでなく、元プロ選手を招いての子ども向けサッカー教室なども行い、認知拡大だけでなく、地域での文化醸成に貢献することも意識しています。これら全ては、弊社の企業理念に通じるものです。

――認知拡大であれば、メディアなどを活用する方法もあるかと思います。

阿部氏:そうですね。たしかにデジタルメディアを使って、情報を拡散させることは可能です。しかし市場では、認知の先にある理解、共感のフェーズまでもっていかなければ、社会に必要な企業だとは思ってもらえません。リアルな催し物であれば、SNSなどで参加者が共感した感想を伝えてくださるといったこともあり、弊社の思いをより伝えることができると考えています。

共創活動に寄せる期待 - 第1弾はアートプロジェクト

――では今回、今治.夢スポーツ社とエグゼクティブパートナー契約を結んだ理由を教えてください。

阿部氏:一言で言えば、企業理念の方向性が弊社とぴったり合ったということです。今治.夢スポーツ社さんは「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」という企業理念を掲げています。「心の豊かさを大切にする社会」という部分が、弊社が目指す「活力とゆとりある社会」とマッチしていました。

今治. 夢スポーツ社さんはサッカー以外の地域活動も多数しておられ、まさに共創を地で行く企業だと思います。そこで我々も、「ワクワク未来共創パートナー」として、エグゼクティブパートナー契約を締結させていただきました。

――今後、どのような共創活動を予定されていますか。

阿部氏:まずは12月から始まったアートプロジェクト「パーパスプロジェクト×あいうえおはな」を成功させたいと思います。このプロジェクトは、美術家・高橋匡太氏が手掛けるアートプロジェクト「あいうえおはな」と、我々が進めるパーパスプロジェクトを掛け合わせたものです。12月16日には、今治里山スタジアムとMEToA Ginzaで、一般参加者の方や弊社社員のマイパーパスを基に作成した花のオブジェを飾り、ライトアップするイベントを開催しました。どちらの場所でも当初想定していたよりも多くのオブジェが集まり、素晴らしい景色を描くことができました。

  • 今治里山スタジアムでのライトアップの様子

  • METoA Ginzaでのイベントの様子

  • マイパーパスを平仮名7文字にまとめ、それぞれの文字によって決められた色が、オブジェの花びら1枚1枚になる

――パーパスプロジェクトは今、御社が全社を挙げて取り組んでいる活動の1つですね。

阿部氏:その通りです。弊社は今、品質風土改革、組織風土改革、ガバナンス改革の「3つの改革」に取り組んでおり、組織風土改革の原動力の1つとして始まったのが、このプロジェクトになります。社員がマイパーパスを考え、会社の企業理念との接点が見つかれば、会社の活力がさらに上がるはずだという漆間社長(三菱電機 取締役代表執行役社長CEO 漆間啓氏)の思いがありました。

三菱電機のパーパスプロジェクトについてはこちら: 三菱電機の組織風土改革 – マイパーパス起点のディスカッションは何を生むのか

――その他の施策も検討が進んでいるのでしょうか。

阿部氏:共創活動については地域やスポーツという枠組みに留めず、開催場所を増やす、規模を広げるという両面で、拡大させていくことを考えています。今回の開催は各地の支社で働くメンバーにも多数協力してもらいました。今後、“出張METoA”のようなかたちで全国を回るというのも面白いのではないでしょうか。

また、次のステップについても複数の施策を作成しながら、方向性を検討しています。こうした取り組みで大切なのは、単発で終わらせないことです。

波状的な施策で狙う文化醸成、KPIの設定は?

――今回のエグゼクティブパートナー契約による共創活動を推し進めていく体制やKPIについて教えてください。

阿部氏:宣伝部のグローバルブランディンググループが中心となります。このグループはパーパスプロジェクトを推進しているグループでもあります。

今回の共創活動についてのKPIは、定量と定性の両面でいくつか設定をしています。ただ、なにせ初めての試みなので、評価をするにあたり、どの数値が適切なのかはまだわかりません。そのため、いくつかのポイントをつくって進めています。“こうありたい”という方向性は決めており、今後、皆さまからの反響を見ながら、人や地域にどういう効果が与えられたのか、より良い未来にどう貢献しているかなどを重視し、どの数値をKPIとしていくべきかの判断をしていきたいと思っています。

――最後に、今後の共創活動について、展望をお聞かせください。

阿部氏:はい、今後は今治. 夢スポーツ社さんと共に、地域振興、事業振興につながるような両者の得意分野を活かした共創活動をしていきたいと思います。

また、我々は今、変革の真っただ中にあり、“2025年までに三菱電機の社員をしっかりと元気にする”というロードマップを描いています。その先、2030年までにはグループ会社も含め、全世界15万人の従業員が企業理念/パーパスに沿って自ら行動できるような状態になっていたいと考えています。

宣伝部としては、この目標を達成するために、単発で何かをするのではなく、企業理念が全体に浸透していくよう、波状的にいろいろな施策をやっていくことが必要です。波のように繰り返し行うことで、やがて文化が芽生えます。そうなるところまで、長い道のりだということを覚悟しながら計画して進めていきます。