NECはこのほど、11月に製造業界の企業のDXを推進するための「共創パートナープログラム/Manufacturing」を立ち上げ、12月に入ってからNEC本社でキックオフイベントを開催した。NECとパートナーのソリューションを組み合わせることによって製造現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるだけなく、その成果を世界の製造業界に展開していく方針だという。

イベントでは、パートナープログラムの説明に加えて、NECが目指すデジタルツインの背景とソリューションが紹介された。

共創パートナープログラムに19社が参画

今回発表されたプログラムでは、主に準大手の製造業を対象に、研究・開発、製造オペレーション、サプライチェーン、顧客エンゲージメントなどさまざまな領域の高度化を実現するソリューションについて、パートナー企業およびNECの製品・サービスを組み合わせて提供する。

市場におけるパートナーの差別化を図る機会を創出し、パートナーとNECがともに製造業向けビジネスを強化・拡大していくことを目的としたプログラムだ。

パートナーになることで、NEC製品に関するトレーニングやセールスパートナー専用ポータルの提供による販売/技術力向上、各種マーケティングアセットの共同創出によるマーケティングの加速などのメリットが得られるという。

パートナーカテゴリーは、NEC製品の販売やデリバリー、自社製品とNEC製品のクロスセルを推進する「セールスパートナー」と自社製品とNEC製品を連携させたソリューション開発を推進する「ソリューションパートナー」の2種類が用意されている。

NEC Corporate SVP 製造ソリューション事業部門長の清水一寿氏は「どちらのパートナー形態であってもDX提案による商談成約率の向上や市場認知度の向上というメリットはありますが、特にセールスパートナーの企業さまは、取扱製品のラインナップの増加・売上拡大、ソリューションパートナーの企業さまは、システム連携による製品力強化などが見込めます」と述べた。

  • NEC Corporate SVP 製造ソリューション事業部門長の清水一寿氏

    NEC Corporate SVP 製造ソリューション事業部門長の清水一寿氏

今回NECが発表した共創パートナープログラム/Manufacturingのパートナー企業は、以下の19社。12月6日時点でセールスパートナーが7社、ソリューションパートナーが12社となっている。

  • パートナーの一覧

    パートナーの一覧

セールスパートナーとソリューションパートナー

また上記で紹介した2つのパートナー企業は、メリットの部分だけでなく取り扱える製品が異なる。

セールスパートナーには、複数台・複数タイプの自律移動ロボット(AMRなど)を一括して集中制御し、リアルタイムな最適経路生成や上位システムと連動して移動ロボットを管理・制御が可能な「NEC マルチロボットコントローラ」をはじめとする8つの製品の仕入れ販売が可能となっている。

  • セールスパートナーの仕入れ販売ができる製品

    セールスパートナーの仕入れ販売ができる製品

一方、ソリューションパートナーには、NEC独自の音声認識技術活用で現場の人作業のデジタル化を実現する「人作業ナビゲーション」をはじめとする5つの製品が用意されており、ソリューションパートナー企業の製品と接続することが可能だという。

  • ソリューションパートナーの仕入れ販売ができる製品

    ソリューションパートナーの仕入れ販売ができる製品

その中でもソリューションパートナー向けに用意される「NEC ものづくりDX 映像AI分析ソリューション」は、2024年1月にリリース予定の最新のソリューションで、人作業に関わる作業を自動で検知・時間計測を行うものとなっている。

「NECの映像AI技術を用いて『人の所在や動き、作業状況』を把握することにより、工場などの製造現場で人員の配置や作業手順を最適化することが可能なソリューションです。作業効率化(コスト削減)、品質安定化などが期待できます」

デジタルツインで匠の技をソリューション化

続いて登壇したマネージングエグゼクティブチーフアーキテクト デジタルプラットフォームビジネスユニットの山本宏氏は、日本の製造業の現状とNECが目指すデジタルツインについて説明した。

「ドイツが政策として進めているインダストリー 4.0は、製造業においてIT技術を取り入れ、改革することを目指しており、産業構造といった大きな仕組みをデジタルで高度化するアプローチです。一方の日本では、『人』にフォーカスしたアプローチを行っている。これでは日本と世界の製造業のギャップがなかなか埋まりません」(山本氏)

そもそも現在、製造の領域においてDXを進める上では、一般的に「4M」と呼ばれる「Man(人)、Machine(機械)、Material(もの)、Method(レシピ)」に「Measurement(測定)」を加えた5つを対象に、デジタル化あるいはAIを活用したシミュレーションを行うといったDXのアプローチが多いという。

  • 製造業におけるデジタル化の対象

    製造業におけるデジタル化の対象

NECのデジタルツイン戦略は、この中の「「Man(人)」と「Machine(機械)」に着目して進められる。清水氏曰く、今後労働人口は減る一方であるため、いずれ日本のDXに多大な影響を与える可能性が高いという。そのためNECでは、デジタルツインを活用し、「会話」「五感」「動作」といった部分にフォーカスしていく。

「会話に関しては、普段匠がどのような会話をしてコミュニケーションを図っているのかをLLM(大規模言語モデル)でカバーします。五感については、ビジュアルインスペクション(外観検査:機器が正常に動作していることや、製品が規格に適合していることを保証するために、目視により製品の欠陥を検出する技術)などの匠の技をAIでカバーします。そして動作に関しては、匠の動作を分析して最適化することを進めていきたいと考えています」(山本氏)

  • マネージングエグゼクティブチーフアーキテクト デジタルプラットフォームビジネスユニットの山本宏氏

    マネージングエグゼクティブチーフアーキテクト デジタルプラットフォームビジネスユニットの山本宏氏

これら3つを合わせて、人の属性を再利用できる部品ソリューションアセット「NEC Digital Platform (NDP)」としてソリューション化を図る考えだ。

最後に山本氏は「NDPを中核に、すべてのアプローチを継続的に変革し、お客さまと社会のDXを支えてまいります」と今後の展望を述べた。