日本電信電話(以下、NTT)、東急不動産、NTTドコモの3社は12月14日、「Shibuya Sakura Stage」(東京都渋谷区)にIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)技術を導入したとして、同技術の特徴である大容量かつ低遅延な通信を体験できる「IOWN WEEK」イベントを開催中だ。3社はイベントに合わせて記者説明会を開いた。

イベント開催期間は12月13日から15日まで。期間中はWeb会議システムを活用し、接続先からのプレゼンテーションや4K映像の受信を体験できる。また、会議相手の声により近い音声出力が可能な音声翻訳技術も披露される。

東急不動産はIOWN技術で渋谷のカルチャーを創出

今回IOWN技術を導入したのは、東急不動産らが参画する渋谷駅桜丘口地区市街地再開発組合が推進している、Shibuya Sakura Stage(渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業)だ。施設は渋谷駅に隣接する桜丘エリアの約2.6ヘクタールの土地を整備して建設されで、11月30日に竣工を迎えたばかりだ。

東急不動産は渋谷駅を中心とする他施設とともに、交通基盤および拠点性の拡充と防災性能の強化を行いながら、国際競争力の向上を支える大規模複合施設だとしている。オフィスフロアだけでなく、環境先進マンション「ブランズ渋谷桜丘」や、ハイアットブランドのホテル「ハイアット ハウス 東京 渋谷」などが入居する。

加えて、インターナショナルスクールを運営するCTISが手掛ける幼稚部サービス「CTISキンダーガーテン渋谷」、クリニックと先端医療技術を活用した健康管理スペースを併設する「SHIBUYAウェルセンター」、シェアオフィス「ビジネスエアポート渋谷サクラステージ」なども入居し、都心での「働・遊・住」各シーンを盛り上げる。

  • Shibuya Sakura Stage外観

    Shibuya Sakura Stage外観

東急不動産の副社長である植村仁氏は「当社のホームグラウンドでもある渋谷エリアで、環境づくりとDX(デジタルトランスフォーメーション)を通じた独自性のある価値創造をしていきたい。IOWNの導入により渋谷に最先端の通信環境が整備され、クリエイターやアーティストが集まり、感性の高い人々がつながることで優れたカルチャーやコンテンツが生まれる街へと進化させていく」と、今後の期待を語った。

  • 東急不動産ホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 植村仁氏

    東急不動産ホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 植村仁氏

NTTのAPN(All-Photonics Network)で200分の1の低遅延を実現

NTTが2019年に公表したIOWNは、光電融合技術によって高速・大容量・低遅延・ゆらぎゼロの通信と、低消費電力の計算リソースの実現を目指す技術構想。NTT東日本とNTT西日本は3月から、初の商用サービスとして「APN(All-Photonics Network) IOWN1.0」の提供を開始している。

現在のネットワーク通信は光信号から電気通信への変換が必要となるが、APNは光ファイバーから伝送装置、端末まで光技術でつなぎ、エンドエンド遅延は従来技術の200分の1を実現する。IOWNを街づくりに活用する取り組みは、今回のShibuya Sakura Stageが初の事例となるそうだ。

NTTの副社長を務める川添雄彦氏は「これまでの歴史を振り返ると、Made in Japanのようにリアル空間での価値が大事にされた"質の論理の時代"、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの頭文字を取ったもの)のようなビッグテックが保有するデータ量がものを言う"数の論理の時代"を経て、今後はリアルとバーチャルにかかわらず多様な価値観を認めて共存していく"価値の論理の時代"になっていくだろう。こうした時代に、IOWNは時間・距離・エネルギーの壁を越えて通信を提供していく」と展望を示した。

  • NTT 代表取締役副社長 副社長執行役員 川添雄彦氏

    NTT 代表取締役副社長 副社長執行役員 川添雄彦氏

  • 握手を交わす両社の副社長

    握手を交わす両社の副社長

ヨネダ2000が離れた距離で"ぺったんこ"

説明会の中ではIOWN WEEKイベントの一環として、お笑い芸人が登場する「IOWN エンタメイベント」が開催された。渋谷駅から徒歩6分程度の距離にあるソラスタとShibuya Sakura StageをIOWNでつなぎ、会場と遠隔地からそれぞれ芸人らが参加した。

リリー氏(見取り図)と斎藤司氏(トレンディエンジェル)の2人は、IOWNの特長である低遅延な通信を体感するために、遠隔地でのじゃんけんに挑戦した。まずは従来構成のネットワーク回線で対戦したところ、遠隔地から参加した斎藤司氏が遅れて手を出すことになり、後出しじゃんけんとなってしまった。

  • 少し遅れて手を出す斎藤司氏

    少し遅れて手を出す斎藤司氏

その後にIOWNへと回線を切り替えると、リアルタイムにじゃんけんの手を出し、あっち向いてホイまでスムーズに進行していた。

  • IOWN回線ではリアルタイムに対戦できていた

    IOWN回線ではリアルタイムに対戦できていた

ヨネダ2000は誠氏が現地会場から、愛氏が遠隔地から参加し、2022年のM-1グランプリ決勝戦で話題となった「餅つき」のネタを披露した。IOWNを用いたリアルタイムな映像通信により、息の合った「ぺったんこ」を披露し会場を大いに盛り上げた。ネタ中には歌のハモリパートがあるなど、まさに2人を現地で見ているかのような雰囲気となった。

  • 遅延なく「ぺったんこ」を披露した

    遅延なく「ぺったんこ」を披露した

ネタを終えた誠氏は「相方がモニターの向こうにいることを忘れてしまうくらい自然なやり取りだった」と感想を述べた。

  • 参加した芸人らはIOWN技術をふんだんに活用して会場を沸かせた

    参加した芸人らはIOWN技術をふんだんに活用して会場を沸かせた