政府は11月、「デフレ完全脱却」に向けた総合経済対策と、裏付けとなる2023年度補正予算案を決定。議論の過程では岸田文雄首相が打ち出した所得税・住民税減税などの「還元策」に注目が集まり、やや影に隠れてしまった形だが、日本経済浮揚とデフレ脱却のカギとなるのは対策に盛り込まれた半導体産業の支援など供給力強化策だ。
内閣府が発表した日本経済の潜在的な供給力と実際の需要の差である「需給ギャップ」は今年4〜6月期にプラスに転じた。コロナ禍を挟んで3年9カ月ぶりの需要超過で、今後の経済政策で重要になるのは、人手不足などを補い、いかに供給力を高めていくかだ。
政府が決定した経済対策の財源となる補正予算案は、一般会計総額で13兆1992億円。住民税非課税世帯への7万円の給付やガソリン補助金の延長などのメニューが目立つが、対策の取りまとめを担った新藤義孝経済再生相が「日本経済を新しいステージに移行させていくきっかけとなる」と胸を張るように、供給力強化策も多く盛り込まれている。
半導体産業支援には経産省の予算として1兆8500億円を計上。熊本県に工場を建設中の台湾積体電路製造(TSMC)や、北海道で工場を建設するラピダスへの支援を念頭に、既存の基金を積み増す。経済対策では、先端半導体や蓄電池などの国内投資減税などの優遇策も盛り込んだ。
また、人手不足が深刻な中堅・中小企業が省人化・省力化を行うためのロボットなどの導入補助事業として1千億円を確保。申請に不慣れな企業もわかりやすいよう、補助金が利用できる製品を「カタログ形式」で示す。工場など大規模な設備投資を行う際の補助金の原資として3千億円も盛り込んだ。