大手総合通販企業のDINOS CORPORATIONがAISaaS事業を手がけるカラクリの「KARAKURI chatbot」を導入した。導入理由について、同社のソリューション部CRMユニットは、「AI(人工知能)の回答精度、管理画面の使いやすさ、チャットボットを起動したときに表示するメッセージを、ページごとに出し分けられる機能などが決め手となった」と話す。導入経緯や活用方法などを聞いた。
――「KARAKURI chatbot」を導入した理由は?
今回、当社が運営している家具、インテリア、リビング、ファッション、美容健康、食品などを販売するECサイト「ディノスオンラインショップ」に導入することにした。以前から、他社のチャットボットを利用していたが、AIを搭載していないシナリオ型だったため、回答精度に限界を感じていた。また、当時、お客さまサポート用の「LINEアカウント」も開設して、チャットボットを連携して自動回答することを検討していた。「LINE」は身近で手軽に質問できる反面、一度でも信頼を損ねる回答を受けたら、二度と使われなくなる懸念がある。そのため、回答精度の高いチャットボットが必要だと考えていた。
運用面においても課題を感じていた。総合通販なので、扱う商品ページごとにチャットボットの起動メッセージを変更する必要があった。複数のチャットボットを作って、設置ページごとに使い分けていたのだが、会話内容を1つ更新すると他のチャットボットも更新しなければならず、運用負荷が高まる上に、管理方法も属人化してしまっていた。
これらの理由から、チャットボットの利用数はそれなりにあったが、実際は問い合わせ対応の自動化やお客さまの利便性向上につながっていなかったため、チャットボットを変更することにした。
<現状の課題を解決>
――チャットボットは数多く存在する。何を基準で選んだか?
チャットボットを導入するにあたり、先ほどの課題をクリアにすることが必要要件であった。
「ディノスオンラインショップ」は総合通販のため、取り扱う商品や提供するサービスの幅は広い。そのためチャットボットを起動したときに表示するメッセージを、1つのアカウントでページごとに出し分けられる機能を求めていた。このほか、チャットボットと「LINE」の連携が可能なこと、トーク上でもチャットボットが対応できること、既存のチャットボットよりも回答精度が高いことを重視した。またリプレイスにあたり有人チャットの導入を見越していたため、オペレーターが抵抗なく使えるような管理画面であることなどが必須事項だった。
――「KARAKURI chatbot」は上記全ての課題を解決できると思ったということか?
マスト要件を全て満たしていた事実は大きかった。事前にデモンストレーションを見せてもらい、管理画面は非常に使いやすく、回答精度は現状よりも確実に向上するという確信を持つことができた。営業担当の方が定期的に情報交換やフォローを続けてくれたことも大変助かった。
比較検討は5社で行い、最終的にカラクリさんともう1社で迷った。今後、当社として取り組んでいきたいことを考えた際に、1つのアカウントでチャットボットの起動メッセージの出し分けができることや、お客さまの困りごとを予測できるウェブ接客機能「KARAKURI hello」を利用することでサイレントカスタマーを救い、売り上げ向上につながること、有人チャット「KARAKURI talk」の機能が多かったことなど、チャットボットを中心としたシームレスな連携が可能なことが決め手になった。
<メッセージを出し分け>
――「KARAKURI chatbot」を導入して間もないと思うが、どのように活用しているのか?
お客さまが見ているページに合わせて、チャットボットの起動メッセージを出し分けている。特にログインエラーのページでは確実にお客さまが困っているため、ウェブ接客機能で「お困りですか?」というメッセージを大きく表示し、解決に導くようにしている。このような積極的なアプローチは、以前のチャットボットと比べて工夫している部分と断言できる。
また、販促用と問い合わせ用の2つの「LINEアカウント」を運用しているのだが、販促用の「LINEアカウント」に問い合わせ用の導線を設置したところ、問い合わせ用の友だちが増えて、ちょっとした内容の質問が寄せられるようになった。「LINE」の利用者数に対するチャットボットの対応数は、ウェブの約2倍となり、新たな対応チャネルとしての効果を実感している。
さらに、ウェブと「LINE」ではそれぞれ問い合わせの傾向が異なることも分かった。例えば、ウェブでは新規会員登録やログインなど購入前の問い合わせが多いが、「LINE」では届け日確認など、購入後の問い合わせが多いという傾向が見られた。
このチャットの会話履歴から得られたVOC(顧客の声)をエビデンスとして、UI/UXなどのサービス改善に取り組んでいる。新規会員登録でつまずいている人が想像以上に多いことがチャットボットの会話履歴から発見できたため、チャットボットの設置場所を見直したり、エラーメッセージを分かりやすい文言に変更したり改善につなげている。
――多くの企業は関連部署との連携が難しく、VOC活用がなかなか進まないといった課題を抱えている。貴社はどうか?
当社はソリューションチームとコールセンターの両者がお客さまの声を大事にしているので、上手くVOC活用ができている。チャットボットに寄せられる問い合わせの件数は対応の優先度を決める一つの要素だが、実際に顧客対応しているオペレーターに意見を求めたり、少数の声であっても多くのお客さまに影響しそうな内容であれば優先度を上げたり、お客さまへの影響を考慮しながら関連部署への改善提案に注力している。
――今後、どうやって「KARAKURI chatbot」を活用していくか。
ここ2〜3年で、お客さまの利便性は向上させつつ、問い合わせ対応の自動化をかなり進めることができたと実感している。今後は問い合わせする前に離脱してしまうサイレントカスタマーへのアプローチをより強化するなど、お客さまに寄り添いながら、販促につながる取り組みを進めたいと考えている。また「KARAKURI chatbot」には生成AIを活用した質問パターン自動生成機能もあるので、これまで手作業で実施していたFAQの自動化を実現し、チャットボットの更新をスピーディーに実施していく。先端技術を活用して生産性をあげることで、顧客体験の更なる向上を目指していく。
【『KARAKURI chatbot』とは?】
「KARAKURI chatbot」とは同社が開発した高精度AIチャットボット。カスタマーサポート領域に特化しており、お客さまの困りごとを予測するウェブ接客機能「KARAKURI hello」と掛け合わせて使用すると高い効果を発揮する。 チャットに蓄積した応対ログと行動ログを統合したデータから、サイト利用時に生じるユーザーの困りごとをリアルタイムで予測し、解決策を提示する。例えば、送料を記載したページでの滞在時間が長いサイト訪問者がいた場合、地域ごとの送料を提示するなど、ユーザーの困りごとを先回りして疑問の解消につなげる。
「KARAKURI hello」はサイレントカスタマー(問い合わせをしない顧客)へのアプローチも可能だ。EC利用者は疑問点があってもサイト運営者やチャットボットに問い合わせをせず、離脱してしまう人が多い。販売事業者にとっては、販売機会の損失につながってしまう。
そこでECサイトやネット証券などのオンラインサービス利用時に、疑問や不満を抱いたユーザーを予測し、最適なメッセージを表示する。EC利用者の利便性を高め、LTV(顧客生涯価値)向上につなげることができる。
■KARAKURI
https://karakuri.ai/