アクセンチュアは12月5日、「製造業におけるレジリエンス」をテーマとした調査結果を発表した。レジリエンスに優れたエンジニアリング、供給、生産、オペレーション機能を備える企業は、混乱期においても年間3.6%の追加増収を達成したことが明らかになった。
同調査は2023年1月〜3月、エンジニアリング、生産、サプライチェーン、オペレーション部門の経営幹部1,230人を対象に実施したもの。対象国は、日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、メキシコ、スペイン、スウェーデン、英国、米国。業種は、航空宇宙・防衛、自動車(OEM)、自動車(付帯設備・部品)、化学、消費財・サービス、ハイテク、産業機器、金属・鉱業、ライフサイエンス、石油・ガス(上流・下流)、公益事業。
調査によると、企業は地域のサプライヤーとの関係や生産施設を増強し、混乱に強い体制の構築に取り組んでいることが明らかになった。また、2026年までに主要品目のほとんどを地域内のサプライヤーから購入する計画の企業は現在の38%から65%に増加することが判明し、85%の企業が2026年までにほぼすべての自社製品を同じ地域で生産・販売することを計画していることが明らかになった。
同調査では、不安定な社会情勢において地域内で調達や生産を完結させることが重要であるものの、持続的なレジリエンスを得るには不十分であると解説しており、企業はデジタル成熟度を高めてデータやAI、デジタルツインなどのソリューションに投資することが肝要だとしている。これにより企業は、不安定な市場動向においても再構成可能な供給網や自律した生産体制を構築することが可能となり、柔軟で持続可能な製品開発や、製造現場でのリアルタイムな意思決定が可能になるとアクセンチュアは指摘する。
地政学的な変化や異常気象、テクノロジーの飛躍的な進歩、資材や人材の不足などの混乱期の中で、企業がレジリエンスと長期的成長を維持することは極めて困難となり、2021年から2022年にかけて、企業はエンジニアリング、供給、生産、オペレーションに支障をきたし、年間1.6兆ドルの収益を逃したという。一方で、レジリエンスに優れた企業(25%)の年間売上高は、最も脆弱な企業(25%)よりも3.6%高くなったということだ。
アクセンチュア インダストリーX グローバル・エンジニアリング&マニュファクチャリングのリードを務めるSef Tuma氏は、次のように述べている。「レジリエンスは単に生き残り戦略ではなく成長の機会です。この機会を活かすために、企業はエンジニアリング、供給、生産、オペレーションプロセスのデジタル化を推進すべきです。デジタルツインなどのソリューションや生成AIを始めとするテクノロジーを活用することで、企業は急激な変化に素早く適応し、データに基づいたリアルタイムな対応が可能になります」
調査によると、企業は2023年に供給・生産設備のデジタル化、自動化、移転のために平均10億ドルを投資し、2026年にこの額は少なくとも25億ドルに増加すると予想されている。
アクセンチュア グローバル・サプライチェーン&オペレーション・レジリエンシーのリードであるSunita Suryanarayanは、次のように述べている。「これまで企業は、コスト効率とジャスト・イン・タイムの納品体制を目指してグローバル規模の複雑な生産体制や供給網を構築してきました。大きな混乱の際に短期的な解決策を素早く施した企業も多くありますが、今こそサイロ化などのボトルネックを解決し、マルチソーシング実現のために生産体制や供給網を戦略的に再設計する時です。データとAIを活用して透明性と俊敏性を高め、持続的なレジリエンスを獲得するチャンスが到来しています」
同調査の一環として、アクセンチュアはエンジニアリング、供給、生産、オペレーションのレジリエンスを0~100の尺度で測定するモデルを開発。その結果、平均スコアはわずか56であったという。また、企業がレジリエンスを強化するために注力すべき分野として、「可視性の向上」「設計におけるレジリエンス向上」「新しい働き方の推進」という3つを挙げた。