フォーティネットジャパンは12月1日、米フォーティネット取締役会会長兼CEOを務める創業者のケン・ジー氏と社長執行役員 与沢和紀氏による事業戦略説明会を開催した。
同日に年次カンファレンス「ACCELERATE JAPAN 2023」 が開催されたことに伴い、ジー氏は来日。2人そろっての記者会見は初となる。
アラクサラは国内における重要な開発拠点
初めに、ジー氏がグローバルの事業戦略について説明した。同氏は、サイバーセキュリティの主要なトレンドとして、「コンバージェンス」「統合」「消費型サービス」を挙げ、同社は独自開発のOSによってこれらトレンドをカバーできると述べた。
同社が開発したFortiOSは、ネットワーク・ファイアウォール、SD-WAN、SD-WAN、SASEと4つの機能を提供する。「一つのOSでクラウドで求められる機能とアプライアンスで求められる機能を熟慮した」とジー氏は語った。
また、同社が開発しているマルチコアプロセッサの最新版「FortiSOC5」は、全世代のFortiSOC4よりも多くのアプリケーションを同時にサポートできるという。ジー氏は、マルチコアプロセッサについて、処理性能とエネルギー効率が優れていることをアピールした。
さらに、ジー氏は2021年に買収したアラクサラネットワークスについても言及した。「アラクサラネットワークスの買収は重要な意味を持つ。なぜなら、日本市場は米国に次ぐ2位の市場であるため、国内にR&DやQAのための拠点が必要だと考えた」(ジー氏)
日本に開発拠点を持つことで、「日本の顧客にいち早くサポートを提供、声を聞き取り、製品開発ができる」と、ジー氏は述べた。
フォーティネット・ジャパンが注力する4つのポイント
続いて、与沢氏が国内における事業戦略を説明した。同氏は今年7月にフォーティネットに参画した。同氏は1979年、日本電信電話公社(現NTT)に入社後、1997年にNTT America. 副社長に就任。20009年から2010年にかけ、NTTコミュニケーションズで複数の海外サイバーセキュリティベンダーの買収などを牽引、同社のMSS高度化を実現した。2016年、NTTセキュリティ・ジャパンの代表取締役社長に就任し、現在に至る。ジー氏とスタンフォード大学で知り合ったことがきっかけで、フォーティネットに入社したという。
与沢氏は、グローバルにおいて注目すべき脅威として、「スフィアフィッシング&ディープフェイク」「ゼロデイ脆弱性」「サイバー・フィジカルシステムへの攻撃」「APT攻撃者の進化」「ランサムウェアとワイパー」「クラウド利用上のリスク」「サプライチェーン攻撃」「インサイダーリスク」を挙げた。
これら8つの脅威は、IPAが今年1月に発表した「情報セキュリティ10大脅威 2023」と重複している。与沢氏は、スピアフィッシングにおいて、生成AIを用いた攻撃が見られるが、生成AIを用いて防御しようという動きも出てきていると説明した。
そして、与沢氏はフォーティネットジャパンの戦略について説明した。「以下4点について注力するという。
- セキュリティドリブンネットワーク
- ゼロトラストとクラウドからOT環境の総合対応(SASE/SecOps/OT)
- ネットワークとセキュリティの融合(Fortinet+ALAXALA)
- 顧客との関係強化、パートナーサポート
「セキュリティドリブン・ネットワークについてはシェアを拡大していく。日本は製造業が多いため、ゼロトラストはITにとどまらず、OTについても注力している。今後は、アラクサラとの統合を進めて、高性能かつ高速を追求する。顧客との関係はハイタッチ営業とパートナーの関係を活用しながら深めていく」(与沢氏)
なお、与沢氏はアラクサラネットワークの今後について、「会社組織は存続するが、営業とSEは合同で活動する。川崎の拠点は会社の形態にかかわらず維持する。具体的な話は、これから社員と対話を重ねる」と与沢氏は語っていた。