ヴイエムウェアは11月14日・15日と2日間にわたり、ザ・プリンス パークタワー東京で、年次イベント「VMware Explore 2023 Tokyo」を開催した。

General Sessionの前半は、VMware CEOのラグー・ラグラム氏やブロードコムCEOのホック・タン氏が登壇し、同社の戦略について語った。ブロードコムはVMwareの買収を発表している。

本稿では、General Sessionの後半に、ヴイエムウェア 代表取締役社長の山中直氏がモデレーターを務め、日本総合研究所 取締役副社長執行役員 真壁崇氏とNEC Corporate EVP CIO/CISOの小玉浩氏が自社のマルチクラウドの利用について紹介した講演の模様をお届けする。

AI活用で分散するワークロードを支えるのは一貫したプラットフォームアーキテクチャ

山中氏は、昨今のAIブームを踏まえ、「AIがもたらすインパクトとして、人材不足や言語の壁の解消、デジタルの民主化が考えられる。今後、生成AIがイネーブラーとなって、社会課題を解決していく可能性がある」と述べた。

  • ヴイエムウェア 代表取締役社長 山中直氏

また、遅れていると言われている日本のデジタル化については、「2023年に生成AIが登場したが、来年は生成AIがイネーブラーとなって、デジタル化が本格化するのではないか」との見方を示した。

山中氏は、日本におけるデジタル化の例として、「レガシーシステムへの対応」「OT領域のデジタル化」「生成AIの活用」を挙げた。

「OT領域のデジタル化として、共通の仮想化基盤の実装を進めることで、コストを削減してセキュリティを強化することが可能になる。また、生成AIを活用することで、社内の効率化と新たなサービスの創出を実現できる」(山中氏)

続いて、山中氏はこれまで掲げてきた「攻め」と「守り」のデジタル戦略について、AIの戦略的活用という新たな要素を加えた形で説明を行った。

  • ヴイエムウェアが提唱する「攻め」と「守り」のデジタル戦略

「AIが活用されてAIアプリが増加すると、ワークロードの分散が進む。そこで、一貫したアーキテクチャに基づく分散したプラットフォームが必要になる。このプラットフォームはセキュリティを担保しながら、コストを最適化し、最終的には、ビジネスの加速を後押しする」と山中氏は述べ、同社のマルチクラウドプラットフォーム「VMware Cloud Foundation」とアプリケーションプラットフォーム「VMware Tanzu」による一貫したプラットフォームアーキテクチャのアドバンテージを示した。

  • AIの利用拡大により分散が加速するワークロードを支えるヴイエムウェアの一貫したプラットフォームアーキテクチャ

業務システムの特性に合わせて最適なプラットフォームを提供:日本総合研究所

続いて、日本総合研究所の真壁崇氏が、オンプレミス、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウド、パブリッククラウドを活用する「プラットフォーム戦略」について説明した。

  • 日本総合研究所 取締役副社長執行役員 真壁崇氏

真壁氏は、「金融はレガシーだと思われるかもしれないが、当社は業務システムの特性に合わせて最適なプラットフォームを利用している。パブリッククラウドは攻めのITとスピードと効率を重視して使っている。いざパブリッククラウドを使ってみると、強制アップデートなどの留意点があることを実感した」と語った。

  • 日本総合研究所のプラットフォーム戦略

オンプレミスについては、「バランスを保ち、攻めと守りを併せ持つサービスが必要という認識の下、進化させてきた」と真壁氏。オンプレミスをプライベートクラウドとして進化させ、今後は、クラウドライクな基盤運用、クラウドネイティブな開発環境を実現するため、PaaSを導入する計画だ。 プライベートクラウドの高度化としては、IaaSからPaaSへの進化を計画している。

「オンプレもクラウドも意識させないようなプラットフォームを提供する。そうした環境では、複雑さが増す懸念があるが、プライベートクラウドもパブリッククラウドも同様の運用ができるよう、ヴイエムウェアに期待している。今後、人材が不足することを踏まえると、エンジニアにアプリケーション開発に専念してもらうことが大事。次世代オンプレミスが人材確保や内製化に寄与できると期待している」(真壁氏)

  • 日本総合研究所におけるオンプレミスの進化

VMware Cloud on AWSを基盤に分散クラウドを構築:NEC

NECの小玉浩氏は、同社が推進するCX(コーポレート・トランスフォーメーション)について説明した。同社が掲げるCXとは、デジタル化やシステム化、クラウド化などの「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を用いて企業全体の仕組みを最適化し、業務の高度化を実現することを指す。

  • NEC Corporate EVP CIO/CISO 小玉浩氏

トランスフォーメーションのためのドライバーとして、「エンゲージメント」「カルチャー」「組織・人材」「DXビジョン」「デジタル経営基盤」「会社標準プロセス」「好循環エコシステム」「デジタルインキュベーション」「ブランディング」が据えられている。

小玉氏は、「CXに取り組む中で、ビジネスアウトカムにつながる施策を講じるとともに、プロセスをデジタル化している。クラウドネイティブ化はまだまだだが、自社をクライアントゼロとして、さまざまなDXを提供していく」と述べ、DXの成果の具体的な数値を示した。

例えば、データドリブンの実現に向け、12TBの基幹データを整理し、ベースレジストリを1689個整備したという。また、オンプレミスのシステムのクラウド化は78%に達しており、クラウドネイティブ化は27.3%まで進んでいる。

  • 数字で見るNECのDX

そして、NECは、クラウドの進化として分散クラウドを構築しているという。第1弾の取り組みとして、データセンターの仮想マシンをVMware Cloud on AWSに移行している。「安全安心にアプリを移行することに加え、スピードも重要。70日で424の仮想マシンを移行でき、クラウドのパワーを感じた。トラブルもまったく発生せず、実に素晴らしかった」と小玉氏。

さらに、小玉氏はVMware Cloud on AWSによってさまざまなコスト効果が得られたと明かした。TCO削減率が、移行コストは91%、運用人員コストが19%、サービス提供コストが20%だったという。同氏は「クラウド利用にあたっては、コストも重要。サービス提供コストを20%も下げられて、社員から喜ばれている」と語った。

  • NECが目指す分散クラウドの概要

最終的には、VMware Cloud on AWSでインフラ、IDシステム、AIを稼働するとともに、VMware Cloud on AWSと各種サービスやツールを連携し、これらの運用は「VMware Aria」で行う「One NEC System」を構築する。「オペレーションは統制された環境で行い、プロセスは可視化してマイニングできる状況にする」(小玉氏)

  • VMware Cloud on AWSを基盤として構築される「One NEC System」