その実証実験の開始に先駆けて、3社は報道関係者向けに実証実験の様子のデモンストレーションを公開した。本稿では、雨の中で行われた実証実験のデモンストレーションの模様をレポートする。
ロボットで郊外住宅地における買い物の利便性向上を目指す
今回の実証実験において、3社は空中配送ロボットの技術およびサービスの効果検証を通じ、配送業界における人手不足や配送コストの上昇といった社会課題の解決や、少子高齢化が進行する郊外住宅地における買い物の利便性向上を目指す。
また、空中配送ロボットにより商品が届けられる受取場所に人が集い、外出や交流の機会が創出されることによるウェルビーイングの向上や、コミュニティの形成による地域活性化へ寄与しながら、生活者一人ひとりの自由で豊かな暮らしの実現、生活者起点でのまちづくりを推進していきたい構えだ。
「今回、実証実験の場として選ばれた虹ヶ丘団地という場所は、住宅需要の高い地域である一方で『町の機能の更新』という面においては、少し課題が見られる地域です。団地を含む、地域全体で高齢化が進んでおり、地域の活力の低下が心配されるという声や、団地内外の敷地の高低差の関係から、高齢者やベビーカーを連れた親御さんなど、日常の買い物や移動への利便性に課題があるという声が挙げられています」(小川氏)
このような課題を解決するためにスタートするのが「空中配送ロボット技術を活用した新たな配送サービスの実証実験」だ。
この実証実験に使用されるのは、パナソニックの研究機関であるESL研究所が開発した空中配送ロボットだ。ドローンや陸を動くロボットとは異なり、絶対に落ちない「安全性」、夜でも配達可能な「静音性」、1充電で8時間稼働できる「省エネ」といった特徴が挙げられている。
「今回は、世界初となる郊外住宅地における空中配送ロボットの実証実験となっておりますが、この実証実験の前に、伊豆の山間部でも実証を行っております。高低差のあるエリアで事前に実証を実施したことで、安全性をより確かなものとし、今回の実証に至りました」(鷲見氏)
具体的には、住民が専用のWebアプリから商品を注文することで、最短30分後に団地内に設置した受け取りボックスまでロボットが商品を届けるという仕様になっている。
雨の中でも無事に稼働 「空中配送ロボット」
ここまで、空中配送ロボット技術を活用した新たな配送サービスの実証実験の概要を紹介してきたが、実際にはどのようなサービスなのだろうか。ここからは実証実験のデモンストレーションの様子をお届けする。
事前の案内で「雨天決行」という案内は貰っていたものの、デモンストレーション当日はあいにくの雨。しかも「道路が冠水するような、激しい雨の降る所もありそうです」と天気予報で言われるほどの大雨だった。
筆者は「こんなに雨が降っていては中止になるかもしれない」という想いを抱きながら虹ヶ丘団地へ向かったが、問題なく稼働できるとのことだった。強風時は、受取ボックスへの配送物を下ろす際に、荷物カゴが昇降時に風で大きく揺れてしまう可能性があることから、安全性への配慮のため稼働を見送る場合があるが、雨であれば問題なく動かすことができるそうだ。
そういうことであれば、と受け取りボックスの置かれた広場へ出てみると、奥の方からワイヤーを伝って空中配送ロボットがやってくるのが見えた。特に風に煽られる様子もなく、静音性を特徴としているだけあって音も雨音以外には聞き取れない。
しばらくしてロボットが受け取りボックスの真上まで来ると、配送物がボックス内に下りてくる。それを確認してから、商品を注文した際に割り振られた受け取りQRコードを宅配ボックスでスキャンすることで、個人を識別し、注文した商品を取り出すことができるようになるという。
実証実験の段階では11時~15時というお昼の時間のみの稼働となるが、将来的には、10分単位で受け取り時間を指定できたり、早朝や夜間でも配達できるようなサービスにアップデートし、高齢者世帯や子育て世代がより暮らしやすい環境を構築していきたい考えだ。