コラボレーションソフトウェア「Notion」を提供するNotion Labsは11月14日、Notion AIの新機能「Q&A(AI Q&A)」のβ版リリースを発表した。日本語版を含め、Notionの対応言語すべてで利用可能で、Notion AIを自身の契約プランに追加している全ユーザーを対象に利用可能となっている。
Notionとは、アメリカのNotion Labsが開発した、多くの機能を統合したドキュメントツールで、ノート作成、タスク管理、プロジェクト管理、データベース作成、ドキュメント共有など、さまざまな作業を1つのプラットフォームで実行できるという特徴を持っている。今回、新機能であるAI Q&Aが追加されたNotion AIは、Notionのワークスペース上で利用できるAIサービスだ。
AI Q&Aは、Notion内に蓄積された情報をAIが検索し、瞬時に回答を提供するQ&A機能だ。入力した質問に対してAIが社内規定や業務マニュアル、議事録やプロジェクト管理情報など、Notion内の情報を読み込み、AIによって生成された回答と、必要な情報に関連するNotion内のページのリンクを提供する。
単純なファイル検索機能やAIチャットボットとは異なり、Notion内に蓄積された情報をもとに質問の文脈に即した回答を提供できるため、さらなる生産性向上、コラボレーションの促進を支援するという。
Notion Labs Japanは、この発表に先駆けて、報道関係者に向けてAI Q&Aの説明会を実施した。説明会には、Notion Labs Japan ゼネラルマネージャー アジア太平洋地域担当の西勝清氏とソリューション エンジニアの早川和輝氏が登壇し、新機能に関する概要や想定される活用方法を紹介した。
進化するNotion AI
初めに登壇した西氏は、急速に拡大した生成AIの市場について「さまざまな生成AIを活用したサービスが登場する中で、生成AIをビジネスで使う際の疑問や課題も増えてきています」と説明した。
実際に、企業の74%のリーダーが生成AIの活用を望んでいる一方で、実際に生成AIをビジネスで活用するのは難しいという調査結果も出ているようで、生成AIに関して慎重な姿勢が見られるという。
そんな中でNotionはいち早く生成AIをサービスに導入し、2022年11月にNotion AIのプライベートα版が登場したのを皮切りに、2023年2月にはNotion AIの正式提供開始、5月にはAI自動入力の正式提供を開始している。
このように進化を続け、多くのユーザーの声を聞く中で、新しい期待値も分かってきたという。
「お客さまの声を聞く中で、『Notion全体の情報を活用したい』『複数のページを横断的にAIに見てもらいたい』『欲しい情報を適切に早く見つけたい』『AIのアシストによって増えた情報を活用したい』『難しい使い方やプロンプトを知らなくても誰もが簡単にAIを活用したい』といった、さまざまな要望があることを知り、これを解決するべく、Notion AIに新機能を加えることを決めました」(西氏)
AI Q&Aのの3つの特徴と3つのメリット
続いて登壇した早川氏は、AI Q&Aの主な特徴として、「Notionにただ質問するだけ」「いつもの業務の流れでそのまま」「自社のNotionだけが知っている」という3点を挙げた。
「Notionを利用するのに複雑なプロンプトや、大変なナレッジの整備は必要ありません。ただ質問をするだけで、Notionに溜まっている膨大なドキュメントやタスクを元にAIが回答します。また、普段の業務の中にAIが組み込まれているため、画面を切り替えたり、チャットツールで同僚に質問したり、不要な打ち合わせをセットする必要もなく利用することができるという特徴も兼ね備えています」(早川氏)
これらの特徴に加えて、AI Q&AはNotionワークスペース内の情報のみを利用し、AIからの回答はユーザーがアクセスできる情報のみを使うため、社内の情報漏洩のリスクもないという。
また、Notion上の顧客データは外部のAIモデルと通信する際に暗号化され、AIモデルの学習には利用されない仕様となっている。データが適切に保護された環境で、専門知識や技術的なスキルがなくても、自社のデータに合わせた質問回答にAIを活用できるそうだ。
さらに、AI Q&Aを通してそれまで存在を知らなかった他部署内の情報や、関わっていないプロジェクトの最新情報などを一瞬で知ることができるため、Notion上の情報を社内横断的に共有・再利用できるようになるという。
これらの特徴を持ったAI Q&Aだが、同サービスを活用することで、3つのメリットが生まれることを想定しているそうだ。それが「仕事で使えるAI」であること、「ユーザー自らすばやく自己解決」できること、「安全にデータを活用できる」こと、というポイントだ。
1つ目の「仕事で使えるAI」であることについては、前述した通り、AI Q&Aを利用するために別のアプリを立ち上げたり、複雑なプロンプトを覚える必要がないということがポイントになってくる。Notionをいつものように使う中で、AIが日々の意思決定や情報探索をアシストしてくれるため、さまざまな部署やレイヤーの社員が業務に活用することができるというメリットがあるという。
2つ目の「ユーザー自らすばやく自己解決」できることについては、AI Q&Aはわずか数秒で何万ページという情報から欲しい情報を見つけてくれるツールとなっているため、必要な情報が見つからない時に、チャットツールにメッセージを投稿したり、知ってそうな人と会議をセットしたりしなくても良くなるという。
「特徴でも挙げたように、Notion上のお客さまのデータは外部のAIモデルと通信する際に暗号化され、AIモデルの学習には利用されない仕様となっています。ユーザーがアクセスできる情報のみを使うため、社内外の情報漏洩のリスクもなく、データが適切に保護された環境で、自社に合わせた回答をAIが行ってくれます」(早川氏)
このような特徴とメリットにより、情報探索時間の削減や会議/メール/チャットの削減、組織横断の情報共有の促進を効果として見込んでいるそうだ。
最後に西氏は「あらゆる人が、普段の仕事で、安心して、Notion AI Q&Aを使うことで、時間削減や組織横断の情報共有が促進されることを期待しています。日本は、Notionのビジネスが2番目に大きな国であり、これはAIの利用状況も一致しています。Q&Aによって、日本でのNotion AI利用者を2倍にすることを目指していきます」と述べ、説明会を締めくくった。