スペイン発のロケット・ベンチャー企業「PLDスペース」は2023年10月7日、欧州初の民間宇宙ロケット「ミウラ1」の打ち上げを実施した。

宇宙空間には到達できなかったものの、目標としていた技術実証は果たした。

同社はミウラ1をもとに、小型衛星の打ち上げを目的とした「ミウラ5」ロケットの開発も進めており、早ければ2025年にも初打ち上げに臨む。

  • 「ミウラ1」ロケットの打ち上げ

    「ミウラ1」ロケットの打ち上げ (C) PLD Space/Manuel Mazzanti

PLDスペースと「ミウラ1」ロケット

PLDスペース(PLD Space)は2011年に設立された、スペイン発のロケット・ベンチャー企業である。これまでに6500万ユーロ以上の投資を調達しており、150人以上の従業員を抱える。

ミウラ1(Miura 1)は同社が開発したサブオービタル・ロケットで、約100kgのペイロードを載せ、最大高度150kmまで飛行できる能力をもつ。全長は12.7m、直径は0.7m、エンジンの推進剤にはケロシン(Jet A-1)と液体酸素を使う。また、姿勢制御用に窒素ガス・スラスターも装備する。

ペイロードや機体は回収することができる。ただし再使用はできない。

ミウラとは、スペインの有名な闘牛牧場のミウラ牧場から取られている。

  • 打ち上げを待つミウラ1

    打ち上げを待つミウラ1 (C) PLD Space

ロケットは日本時間10月7日9時19分(中央ヨーロッパ時間2時19分)、スペインのアンダルシア州ウエルバにあるスペイン国立航空宇宙技術研究所El Arenosillo実験センター(CEDEA)から離昇した。

エンジンの推力をはじめとするロケットの動作、また地上からの追跡は正常で、離昇から103秒後にエンジンを停止し、慣性飛行を続け、最終的に高度46kmに到達した。

ロケットはその後、降下を始めた。ロケットの先端部分のペイロード搭載部には、ドイツのブレーメン大学応用宇宙技術・微小重力センター(ZARM)が開発した技術実験ペイロードが搭載されており、降下時の微小重力環境を利用して実験が行われた。また、ミウラ1の開発チームの写真も搭載されており、ロケットの中で浮かぶ様子が動画で配信された。

そして、ロケットとペイロードは最終的に、大西洋上のあらかじめ設定された海域内に着水した。

なお、PLDスペースは打ち上げ前、到達高度は80kmになるとしていたが、46kmにとどまった理由について、同社は「ロケットに問題が発生した際の安全性確保のため、大西洋上を長く飛行する飛行プロファイルに切り替えたこと、また空力負荷の増加を避けるためにエンジンの燃焼時間を122秒から103秒に短縮したことが理由」と説明している。したがって、ロケットそのものは宇宙空間に到達できるだけの性能を発揮できたとしている。

また、ロケットからは、降下中の機体からの空力データ、さまざまなマッハ領域での加速度データなどを収集できたとしている。くわえて、降下時に正常にパラシュートが開いたこと、そして着水予定海域に正常に着水したことが確認できたという。

ただ、着水したとみられる海域にはロケットは見当たらず、回収はできなかった。同社によると、着水時の姿勢が悪く、機体が壊れて水が侵入し、沈んだものとみられるという。

打ち上げは当初、今年5月に行われる予定だったが、天候不良を理由に中止され、続く6月の打ち上げも、エンジン点火後にトラブルが確認されたため中止されていた。

今回の打ち上げにより、ミウラ1は、スペインのみならず、欧州にとって初めて民間企業が独自に開発し、そして飛行した宇宙ロケットとなった。

PLDスペースの創業者のひとりでCEOを務めるRaul Torres氏は、「この打ち上げは、12年以上にわたる絶え間ない努力の集大成です。しかし、私たちの旅の始まりに過ぎません。この試験飛行により貴重なデータが得られ、衛星打ち上げ用ロケット『ミウラ5』の開発を支える、重要な設計要素と技術を検証することができました」と語った。

  • ミウラ1の打ち上げ

    ミウラ1の打ち上げ (C) PLD Space

ミウラ5

ミウラ5は同社が開発中の小型衛星打ち上げ用ロケットで、地球低軌道に900kg、太陽同期軌道には540kgの打ち上げ能力をもつ。近年、世界中に開発が活発に行われている、小型・超小型衛星の打ち上げに特化した超小型ロケット(Mirco launcher)のひとつである。

ミウラ5の全長は34m、直径は2mで、エンジンの推進剤にはケロシンと液体酸素を使う。

同機の最大の特徴が、第1段機体を回収し、再使用できるという点である。同社では再使用により、打ち上げコストの低減が図れるとしている。欧州宇宙機関(ESA)も期待を寄せており、再使用技術の開発に補助金を与えている。

同社によると、ミウラ1はミウラ5のテストベッドに位置づけられており、今回の打ち上げで収集したデータにより、ミウラ5の設計や技術のほぼ70%を検証できるようになるとしている。また、現在ではPLDスペースの従業員の90%以上が、ミウラ5の開発に専念しているという。

ミウラ5の初打ち上げは2025年に、南米仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターから行うことが予定されており、2026年からは商業打ち上げも始めたいとしている。

PLDスペースの創業者のひとりで、ビジネス開発マネージャーを務めるRaul Verdu氏は、「私たちは、ミウラ5の技術開発スピードを加速するための足がかりとして、ミウラ1を開発しました。今回のミッションの成功により、私たちのチームは究極の目標であるミウラ5の初飛行に向けて、急速に前進する準備ができています」と語った。

超小型ロケットをめぐっては、米国ロケット・ラボの「エレクトロン」ロケットがすでに商業打ち上げを何回もこなしているほか、ファイアフライ・エアロスペースが「アルファ」ロケットを運用している。中国でも開発や打ち上げが活発になっている。

欧州でも、ドイツのRFAが「RFAワン」ロケットを、また同じくドイツのイーザル・エアロスペースが「スペクトラム」ロケットを開発しており、それぞれ数年以内の初打ち上げを目指している。

  • ミウラ5の想像図

    ミウラ5の想像図 (C) PLD Space

参考文献

PLD Space successfully completes first private space rocket launch in Europe
Spain’s MIURA 1 launch campaign kicks off
MIURA 1
MIURA 5