2020年3月、本社を渋谷スクランブルスクエアに移転したMIXIは今、「マーブルワークスタイル」と呼ばれる新しい働き方の推進に取り組んでいる。9月5日から8日に開催された「TECH+ EXPO 2023 Sep. for HYBRID WORK 場所と時間とつながりの最適解」に、MIXI はたらく環境推進本部 せいかつ環境室 マネージャー 嵯峨勇氏とMIXI 人事本部 労務部 労務企画グループ 西花菜氏が登壇。前半では嵯峨氏がコミュニケーションを重視したオフィスリニューアルについて、後半では西氏がコロナ禍を経て制度化した働き方「マーブルワークスタイル」や、拡張した休暇制度などについて説明した。
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分散したオフィスを統合リニューアルし、コミュニケーションを強化
嵯峨氏は講演冒頭、オフィス移転までの流れを説明した。MIXIはビジネスの成長とともに採用を拡大し、従業員数に合わせたオフィス拡大を行ってきたが、その結果、企業としての機能が本社と複数のサテライトオフィスに分散していたという。そこで2020年に本社を移転し、点在していたオフィスを集約。これには「コミュニケーションの在り方を再構築したい」、そして「創業の地である渋谷からコミュニケーションサービスの新しい価値を生み出したい」という狙いがあったと嵯峨氏は語った。
オフィスコンセプトとして「ForCommunication」を掲げ、コミュニケーションのためになるオフィスであることにこだわった。デザインコンセプト「街をつくる」には、渋谷と同じようにいろいろな文化が入り交じりながら成長を続ける企業でありたいという思いが込められている。移転プロジェクトは「はたらく環境推進本部」が中心となり、外部パートナーと連携する体制で進められた。
工夫が凝らされたフロア設計と残された課題
嵯峨氏は渋谷スクランブルスクエアの28階から36階を占有する新オフィスについて、写真を見せながらフロアごとの特徴を解説した。36階はミュージアムをテーマとしたレセプションフロアで、多数の会議室を用意。展示や映像を通して同社の雰囲気を表現したフォーマルな印象のフロアだ。35階はバザールをテーマとし、リアルグリーンやアウトドア系家具を使ったつくりで、本格的な撮影スタジオも設置している。35階とは違った距離感で来訪者とコミュニケーションがとれる工夫がなされているという。
28階から34階はタウンをテーマにした執務エリアだ。人の移動が多い内階段近くに休憩エリアを設けたほか、1400mm幅の昇降式デスクとアーロンチェアを組み合わせた席を2900席揃えている。また、全てのフロアが内階段でつながれているのも特長の1つだ。
一方で、オフィスの設計プランはコロナ禍よりも前に作成されたため、会議室が50室以上あるなど、マーブルワークスタイル (リモートワークとオフィスワークが融合した働き方)が浸透した現在の実情に即していない部分もある。これについては議論が進行しており、「使い方については今後の課題だ」と嵯峨氏は述べた。
オフィス移転成功のポイントと今後の検討事項
2023年2月の従業員向けオフィスアンケートでは、新オフィスについて「とても満足」「やや満足」という回答の合計が90%を超えた。嵯峨氏はこうした結果が得られた要因の一つは、移転プロジェクトの主体がオフィス運用の担当部署だったことにあると語る。過去のサテライトオフィス設定の経験から得たノウハウに基づいて実用性の高い設備を選択・購入したことや、特定用途の設備を極力減らし、選択肢を多数用意した上で利用者自身に使い方を委ねるフレキシブルな運用方針が“効いた”というわけだ。
コロナ禍においては、出社率の低下に伴って固定座席からグループアドレスに変更し、ニーズの高まりに応じてオンラインミーティング時によく使われているフォンブースの増設を行った。元々フレキシビリティを重視して設計されており、汎用性が高かったため、「変更すべき点が少なかった」と嵯峨氏は振り返った。
同氏曰く、プロジェクト成功のポイントとなったのは、現状分析、徹底的な検証、デザインコンセプトへの運用条件の妥協ない落とし込み、拠点クローズへの十分な対応、遠慮のない施主点検、美観維持ルールの徹底、プロジェクト評価の7点だという。今は、固定席とグループアドレス双方のメリットを踏まえた上で、フレキシブルな切り替えを可能にする仕組みの導入や、利用頻度の少ない設備の変更などを検討しているところだ。
「コミュニケーションと(業務への)集中にフォーカスした設備構築を行いたいと考えています」(嵯峨氏)