デル・テクノロジーズ(以下、デル)は9月29日、メディア・アナリストを対象にAI(Artificial Intelligence:人工知能)についての勉強会を開催した。本稿ではその中から、生成AIに関する同社の取り組みをお届けしたい。

デルが展開するAIビジネスは、「AI on」「AI in」「AI for」「AI with」の4つのテーマが軸となる(2023年5月31日掲載:2023年5月31日掲載:DellのAI戦略は「AI-In、AI-On、AI-For、AI-With」 - Dell CTO語る)。

  • デルのAIビジネスの4つの柱

    デルのAIビジネスの4つの柱

「AI in」では、端末に搭載する指紋認証や顔認証のようなAIのほか、社外でのPC端末利用時などに覗き見を検知してフィルターを掛けるAIなどを展開する。また、ストレージ製品のPowerMaxシリーズは、稼働しているSAPをAIが認識してトラフィックを最適化する機能を備える。

「AI on」は、同社製品で実現するAIソリューション群である。以前小誌でも報じたように、デルは生成AIの構築を支援するソリューションとして、NVIDIAと共に「Project Helix」を展開している。「Project Helix」はグローバルでは7月から利用可能だが、国内では現在調整中だ。

同ソリューションは、デルのITインフラ製品とNVIDIAのGPUやAIソフトウェアを組み合わせて構築しているものだ。モデル開発から導入までを支援し、スケーラブルなフルスタックソリューションを提供するとしている。さらに、エンタープライズでの利用に必要なデータのセキュリティとプライバシー保護を実現しているという。

  • デルはインフラ製品を提供する

    生成AIの活用に最適化したインフラとソフトウェアを提供する

同社が展開するAIポートフォリオでは、ユースケースが特に重要となるという。顧客にAIビジネスを展開する際は、まずはAIのユースケースの想定から始まる。AIを使う場面を決めないことには、必要な学習データや適切なモデルを決められないからだ。

デルのAIアンバサダーである増月氏は、「当社のAIビジネスではまずユースケースの策定が鍵となる。ユースケースを決めてからボトムアップ型でAIの活用を支援していく」と説明した。

  • デル DCWソリューション本部 シニア・ビジネス開発マネージャ AI Specialist CTO Ambassadors 増月孝信氏

    デル DCWソリューション本部 シニア・ビジネス開発マネージャ AI Specialist CTO Ambassadors 増月孝信氏

  • デルが提供するAIビジネスのポートフォリオ

    デルが提供するAIビジネスのポートフォリオ

「AI for」はデル社内でのAI活用を指す。特に業務の効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を目的にAIを使っているという。同社内で活動しているデータサイエンスチームは約40チームあるそうだ。それぞれのチームにはデータサイエンティストが4~5人所属する。社内のAIプロジェクトはこれまでに約900個ほどが立ち上がっているという。AIを活用している部署も多様で、業務部門や製造部門に限らず、人事や経理の領域でもプロジェクトが進められている。

社内でのAI活用時に重視するキーワードは「デジタルファースト」と「ヒューマンセントリック(人間中心)」だ。これらのキーワードは企業文化の変革を狙ったものだという。同社は、従来のマインドではなく、AIを利用した効果的なDXを進めるためのマインドを醸成するとしている。

デルでは以前、IT環境がサイロ化されてしまっていたそうだ。そのため、多くのデータサイエンティストやエンジニアが、社内のインフラ環境のメンテナンスとデータエンジニアリングにかなりの工数を割いていた。

これを「デベロッパーファースト」へと変革し、DX(Developer Experience:開発者体験)を優先した組織構造・業務プロセスへと統合していったとのことだ。具体的には、デルデジタルクラウド上でCI / CD(Continuous Integration / Continuous Delivery:継続的インティグレーション / 継続的デリバリー)パイプラインを標準化し、開発者が必要に応じて開発環境やデータリソースにアクセスできる体制を作り上げた。

  • 開発者体験の向上を狙った変革を実施したという

    開発者体験の向上を狙った変革を実施した

さらなる開発者向けの取り組みとしては、生成AIの社内活用も挙げられる。社内のポータルサイトに生成AIのAPI(Application Programming Interface)を公開し、コードの生成やそのテスト、ドキュメントの生成などに役立てているそうだ。

  • 社内での生成AI活用も強化している

    社内での生成AI活用も強化している

4つ目の「AI with」は、パートナー企業らとの連携を通じたエコシステムに基づく戦略だ。日本国内での取り組みであるDell de AI "デル邂逅(であい)"では、最新のAIに関する知見の共有やセミナー実施、AIを手掛けるパートナー企業とのマッチングを通じて、顧客のAIビジネスを支援している。

  • Dell de AIの概要

    Dell de AIの概要