クラウド型データ活用プラットフォーム「Domo」を提供するドーモは9月21日、日米合同プロダクトビジョン発表会を開催した。

発表会には、米Domo 創業者兼CEOであるジャシュ・ジェイムズ氏、ドーモのプレジデントジャパンカントリーマネージャーである川崎友和氏、同社のビジネスアナリストである塩谷風氏が登壇し、事業戦略、ビジネスモデル、「Domo」の新機能などを紹介した。

本稿では、その一部始終を紹介する。

日本におけるドーモの3つの事業戦略

最初に登壇した川崎氏は、「人材育成プログラム」「新たな価格帯の導入」「Domo.AI」の3つの柱から成る、Domo Japanの事業戦略について説明した。

「データは、局所的に使うのではなく全社的に使わなくてはいけない、つまり誰もがデータに触れてアクションが取れる環境になくてはいけない、と弊社では考えております。しかし、これを実現するとなると、まだまだやはり日本企業は厳しいというのが現状です。こうした課題を新たな事業戦略の下、解消していきたいと思います」(川崎氏)

  • ,ドーモ プレジデントジャパンカントリーマネージャー 川崎友和氏

    ドーモ プレジデントジャパンカントリーマネージャー 川崎友和氏

日本企業が抱えている課題のうち、特に難しいと指摘されたのが「人材育成」だ。

世界における日本企業の競争力を見てみると、63カ国を対象に行われた「世界デジタル競争ランキング」で、日本は第29位という順位にとどまる結果となった。加えて、「ビッグデータやデータ分析の活用」のランキングは63位、「俊敏な意思決定・実行」は63位、「デジタル技術スキル」は62位、「機会と脅威に即応できる組織体制」は63位と、多くのランキングで最下位に近い順位に甘んじている。

  • ,世界における日本企業の競争力 引用:IMD 世界デジタル競争力ランキング2022

    世界における日本企業の競争力 引用:IMD 世界デジタル競争力ランキング2022

しかし、『IT人材白書2020』と『DX白書2023』を見ると、2020年に「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と答えた日本企業は12%のみだったのに対して、2022年には26.9%まで増加していることが分かる。

これらの調査から、一見するとDXに取り組んでいる日本企業は増えているものの、川崎氏曰く、どれだけ良いITツールがリリースされたとしても、それを使っていく組織や人、オペレーションといった根本的な部分が変わっていかない限り、全社的な活用には至らないそうだ。

  • ,「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と答えた企業 引用:IT人材白書2020/DX白書2023

    「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と答えた企業 引用:IT人材白書2020/DX白書2023

そして、日本企業が全社にわたるデータ活用に失敗する理由の主な要因がこの部分に隠されているという。

「最新テクノロジーの導入をしたところで、企業体質・人材・組織の変革ができていなければ、全社的なデータ活用は失敗に終わってしまいます。日本企業には、経営層のデジタルスキルが低さ、人材育成への投資不足、『DX』の『D』の部分にのみ注力してしまい『X』ができていない、といった大きな課題があります」(川崎氏)

企業のデータ活用を失敗させないための新しい役職「データアンバサダー」

川崎氏は、全社的なデータ活用に必要な要素として、「社内のだれもが利用できるツール」「ビジネス課題を解決するデータ思考人材」「自走する組織作り」という3つを挙げ、企業がこれらを体得することを支援する新しい教育プログラムとして、「データアンバサダー育成プログラム」の提供を開始したことを紹介した。

「日本は文化的に、ボトムアップ(現場の従業員の意見を吸い上げ、経営陣が意思決定していくスタイルのこと)が強いとよく言われますが、ボトムアップでチェンジマネジメントが行われるスタイルではなかなか変わりません。自走する組織を作っていくとなると、どうしてもエグゼクティブの介入が必要になってきます」(川崎氏)

そこで、ドーモはベンダーとしてツールを提供するだけでなく、一緒に全社的にデータを使っていく人を育てるための人材育成支援に乗り出したのだという。

データアンバサダーとは、ドーモが新たに提唱している新しい役職で、企業のデータ活用を失敗させないことを目的とした「会社の事業のこと理解しつつ経営・ITの両面で会話ができるハイブリッド人材」のことを指している。

  • ,データアンバサダーのイメージ

    データアンバサダーのイメージ

データアンバサダー育成プログラムでは、このような人材を育成するための多様なプログラムが用意されており、2022年度時点で約6000名が受講しているという。

多様な部署のデータ分析を推進する「Domo.AI」

最後に川崎氏は、3つの事業戦略の柱の中で最も注力している「Domo.AI」の存在について、詳細を説明した。

このDomo.AIは9月21日にリリースされたもので、Domo上で大規模言語モデル(LLM)を含むAIや機械学習(ML)モデルの管理や活用、最適化を行うことを容易にし、ユーザーがシンプルで利用しやすいデータを扱えるようするためのツールだ。

加えて、マーケティング部門で行う、デジタルテキストをもとに人間の感情を読み取る「感情分析」、マーケティング活動のどの部分がビジネスに貢献したかを統計学的に分析する「メディアミックス・モデリング」、セールス部門におけるよりタイムリーで正確な売上予測などの対応も可能となっており、さまざまな部門でのデータ活用を推進するものだという。

「『Domo.AI』の特徴は、特定のAI技術だけにフォーカスするのではなく、Domoプラットフォームとして、世の中にある主要なAIやテクノロジーとつながることができるという部分です。Domoは、点在化したデータをぐっと集約する力を持っているので、データを集約した上でAIを活用することで、データから得られる価値はより高いものになっていくのではないかと確信しております」(川崎氏)

将来的には、 テキストをDomo上で打って、欲しいデータをそのままAIが回答してくれるといった仕様に進化させていきたい考えだと言い、そこに向けて開発を進めている段階とのことだ。

現時点では、Domo.AI上でテキストからSQL文(データベースを操作する言語のことで、データの検索や追加などの命令を出す文)に自動変換することが可能になっているそうで、今後はDomo.AIの開発に大きく投資していく構えだ。

最後に川崎氏は、以下のように発表を締めくくった。

「弊社としては、『今変わる』ということが重要だと考えております。データはどんどん点在化し、新しい技術が日々開発されていきます。それに合わせて、ビジネスを取り巻く環境もどんどんスピーディーに変化していく状態になっています。データを活用しない企業は、時代の流れに乗り遅れ、ビジネスの衰退は免れません。ドーモとしては、さまざまな最先端技術や人材育成もある中で、トータルソリューションとして、お客様とともに、次世代の新しい組織を作る伴走をしていきたいと思っております」(川崎氏)