AI時代に仕事や業務が変わると言われて久しい。昨年末からの生成AIブームにより、実感が増したという人も多いのではないか。これを受けて、リスキルの重要性が高まっている。組織がリスキルに取り組むにあたっての心得を5つを紹介する。
重要視されるリスキリング
最初に数字から。OECD(経済協力開発機構)が2019年に出した予測では、今後15~20年に世界の仕事の最大14%がなくなり、32%の仕事は業務が大きく変わるとしていた。
人数にして10億人以上が影響を受けるという試算になる。なお、2019年といえば「ChatGPT」が登場する2年前だ。この数字は現在は控えめな予測と言えそうだ。
言うまでもないが、技術の進化で仕事を変えるペースは加速している。スキルの「半減期」は5年、一部の技術分野では2年半という。つまり、5年するとスキルの価値は半分になるということになる。
そこで重要になるのが、リスキリングだ。しかし、Boston Consulting Group(BCG)によると、同社が調査した120の大手グローバル企業のうち従業員のスキル構築に投資しているという企業はわずか15%だったという。
企業の多くがスキル構築のコストを経費と捉えており、スキル構築に充てる財源を報告している企業は36%に過ぎないという。
同社では、予算の0.5%~1.5%しか従業員のスキル関係に注がれていないと見ている。スキルのための予算がコストとみなされる限りは、優先順位は他の投資より低い可能性が高いとのことだ。
仕事がなくなる、業務が変わると言われる時代において、このような姿勢では不十分ではないか、と記事は問いかける。そこでスキルアップ、そしてリスキリングだが、効果的な取り組みができている企業は「ほんの一握り」だという。
リスキリングを浸透させるためには
では、どうすればいいのか? Harvard Business Reviewは、ハーバード大学デジタルリスキルラボのDitigal Data Design InsituteとBCG Henderson Instituteの共同研究ではこの問題について、リスキリングプログラムに投資している世界40の組織の幹部を対象に調査を行った。そこから、以下のような5つのポイントを導き出している。
1. リスキリングは戦略上不可欠
2. リスキリングは全リーダーとマネージャーの責任
3. リスキリングはチェンジ・マネジメントの取り組みになる
4. 理にかなっていれば、従業員はリスキリングを受け入れる
5. リスキリングはエコシステムの中で行う
中でも、5は新しい示唆と言える。記事によると、それまでリスキリングは組織レベルの課題として考えられてきたが、聞き取りを行った企業の多くが、さまざまな人が関与するエコシステムの中で行っていることが判明したという。
政府は政策やプログラムとしてリスキリングへの投資を支援でき、産業界と学術界の連携により、新しいスキル構築に必要な技術やプログラムを開発できる。また、非営利団体はスキルを必要とする人材グループを結びつけることができるかもしれない。
具体的には、複数の企業が集まって共同でトレーニングを行う業界のパートナーシップ(例として、EUの自動車関連企業が集まって展開するAutomotive Skills Allianceなどを挙げている)、地元の大学やトレーニングを提供する機関との連携(例として、英国政府が出資して大学と大手雇用主を結びつけるInstitutes of Technology)などがあるという。
企業はリスキルの重要性を理解しつつあるとしながら、効果を生むためには成功例の特徴を理解し、測定と評価を行う必要があるとしている。以上のことは、Harvard Business Reviewが「Reskilling in the Age of AI」という記事で紹介している。